#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 納豆チャンピオンへの道 第16章|How To Make Natto-Champion|90秒のための大騒動!プロフィール撮影の裏側
誰もいない事務所前で、慌てて担当者に電話したが、コール5回鳴らしても電話に出ず、留守電に切り替わった。
「もしもし…」
と留守電にメッセージを入れようとしたところで、
1台の車が駐車場にやってきた。
「あ!山田さん!お世話になります!」
「あれ?蒲生さん!お待たせしてスミマセン。
てか約束の時間は11時でしたよね?」
「あ…ちょっと早く来すぎちゃいましたね」
(そっか、予定より30分早かっただけか…)
無事、ジャパン建材の担当者山田さんと合流したところで、番組スタッフ達と軽く挨拶を交わし、撮影ストーリーの説明を受けた。
「蒲生さんがTVチャンピオンで優勝したのってホントなの?」
山田さんはまだ半信半疑だった。
「蒲生さんは断トツの優勝でしたよ。
ただ放送日までは内緒でお願いします」
とスタッフは答えた。
プロフィール撮影では住宅用断熱材メーカーの営業担当として、普段の仕事ぶりを再現するため、僕が車で取引先のジャパン建材に到着し、事務所のテーブル席や倉庫内で、住宅用断熱材の商談をする風景を30分撮影した。
撮影後、山田さんが番組スタッフに質問した。
「ちなみに放送日はいつなの?」
「東京では11月中旬放送予定ですが、岩手はテレ東のキー局がないので、
もう少しあとかと…」
当時番組は関東では木曜日、ポケモンの後の19:30から放送されていたが、岩手ではTBS系のIBCでだいたい3週間遅れの土曜日12:00放送だった。
「蒲生さん、放送予定日がわかったら連絡よろしく」
「わかりました。山田さん、撮影にご協力して下さり、ありがとうございました」
正午前に山田さんと別れ、ジャパン建材を後にした。
「僕たちは途中でお昼ごはん食べるので、13時にお邪魔しますね」
と一旦、番組スタッフとも別れて、自宅でスーツから普段着に着替えて待機した。
すると13時過ぎに自宅アパート前にタクシーが止まり、スタッフ達が降りてくると、
「わぁ!テレビ局の人が来た!テレビカメラ大きい!」
と、子供たちがわらわらと外まで出迎えた。
「まず最初に蒲生さんが納豆のラベルを納豆開発委員会のウェブサイトに更新するシーンを撮影します。
その後に納豆料理を家族と一緒に作っているシーンと、みんなで食事するシーンを撮影します」
とスタッフの指示通りに、家族全員で演技をした。
なお納豆開発委員会のウェブサイトは2008年に、無料レンタルサーバーの廃止に伴い閉鎖となっています。
ここでの納豆料理は第2ラウンドで登場した「納豆かに玉丼」を作った。もちろん練習風景のため、本番で使った八戸港で買ってきたタラバガニではなく、使用したのは普通のカニカマで、また比内地鶏の生卵でもなく、普段食べている生卵だった。
そして家族で遅めのランチを済ませると、
「あと、蒲生さん。もう一回、普通の納豆ごはん食べてもらっていいですか?
できれば小さい茶碗を使ってマンガ盛りで…」
「わかりました」
と、スタッフのシナリオ通りに無理矢理、納豆ごはんをおかわりした。
「あと冷蔵庫の中も撮影させてください」
「え?冷蔵庫の中も必要ですか?」
と、妻が怪訝な顔を見せた。
「納豆がいっぱい詰まっている絵が撮りたいんです」
「でも、今は冷蔵庫の半分しか納豆はないですが…」
「あとでスーパーでの納豆の買い物シーンを撮りますので、最後に冷蔵庫の絵を撮りましょう。もちろん買い物の代金は番組で払います」
と半ば強制的に冷蔵庫の中も撮影されることになった。
自宅での撮影が終わると、近所のアネックスカワトク(2025年8月閉店)へ買い物に出かけた。
事前の撮影許可は取っていなかったので、番組スタッフが店長と直談判して、撮影許可を貰った。
テレビカメラが営業中の店内に入った事もあり、買い物客がゾロゾロと納豆売り場に集まって来た。
「これ新商品だよね?
この納豆食べたことあったっけ?」
等と、撮影の為わざとらしい演技していると
「パパ!恥ずかしいから、早く買い物済ませてよ!」
と、妻が子供たちを連れて、本気で怒り始めた。
しかし年中の長男は急に恥ずかしがって、妻にオンブをせがんだ。
「ちょっと待ってて!」
と妻は長男を𠮟りつけるも
「あー、その方が面白いので、そのままオンブして下さい」
と、番組スタッフが言うので、妻は渋々長男をオンブして、買い物を続け、買い物かご一杯に納豆を買って、レジに並んだ。
(いくらなんでもコレはやりすぎかも…)
と思いつつも、買い物を済ませ、自宅に戻り、納豆以外のモノを冷蔵庫から取り出した。
「ちょっと、これじゃ今日の夕飯の材料どこに置くのよ!」
と妻がブツブツ言うので、
「今夜の夕飯は全部、冷凍食品で乗り切ろう!
冷凍庫の空いたスペースに残りの納豆を全部に入れれば大丈夫だよね?」
すると、妻は呆れた顔しつつもなんとか納得してもらった。
最後に冷蔵庫の中身を全て納豆だけにして満足げな僕を撮影したところで、全てのプロフィール撮影は終了した。
「今日は撮影後協力ありがとうございました」
「ちなみに番組ではプロフィールは何分流れるんですか?」
「いつも90秒程度ですね」
「え?半日撮影しても、たったそれだけ?」
「あと、スタジオ撮影の件ですが、10月7日土曜日の17時に
納豆中華まんを持参して天王洲スタジオに来てください」
「夕方から撮影?スタジオで調理できないんですか?」
「スタジオ内では火が使えず、冷蔵庫と電子レンジくらいしかないので…」
「では、納豆中華まんを冷凍にして、クール便で事前に発送します」
(それでは、本番と違った味になってしまうが、
冷凍の納豆中華まんを美味しく食べてもらうには、どうしたらいいだろう)
一抹の不安を抱きながらも、番組スタッフとカメラマンを自宅前で見送った。
スタジオ撮影の前日、撮影後に茨城の実家に泊まることを電話で伝えると、
「スタジオ撮影、見学できないかな?」
と、父が急なお願いをしてきた。
「ちょっとスタッフにお願いしてみるので、待ってて」
と電話を切って、すぐに番組スタッフに電話でスタジオ見学を依頼した。
「えーっ?部外者は立ち入り禁止なんですが…」
と、スタッフは渋った。
「両親二人でもダメですか?」
ここまで応援してくれた両親に、自分の晴れ姿を見せたい。
ここで簡単に引き下がるワケにはいかなかった。
粘る僕に、電話の向こうでスタッフが小さくため息をつくのが聞こえた。
果たして、両親をスタジオに呼ぶことはできるのか?
そして、冷凍発送せざるを得なかった「納豆中華まん」の運命は――。
第1章はこちらからどうぞ
#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 #ドラマ脚本 #TVチャンピオン #テレビ東京
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