#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 納豆チャンピオンへの道 第7章|How To Make Natto-Champion|残り5分の賭け、一か八かの『烏龍茶』
番組スタッフに続いて、バスを降りて、専門学校の3Fにある調理実習室に案内された。
調理実習室の窓は全て暗幕で閉じられ、大勢の撮影スタッフが放つ独特の熱気とカメラのレンズが僕たちを囲んでいた。
ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン……。
窓の向こうを走る総武線の音が、まるで自分の心臓の音のように重く響く。
この部屋だけが、いつも通りの日常と完全に切り離された戦場だ。
そして僕が戦う調理台には、僕が盛岡から発送した食材が入った段ボール箱がドーンと置かれていた。
スタッフから第2ラウンドの説明を受けた。
予算2000円以内で、納豆を使った創作料理
制限時間2時間以内に審査員5名分を提供
審査員の合計ポイントで、上位3名が決勝ラウンドに進出し、1人が敗退
今回、僕がこだわったのは東北の食材を中心とした中華料理だった。
まず使う納豆は、宮城の大永商店の小粒納豆と川口納豆のフリーズドライ納豆、秋田のヤマダフーズのひきわり納豆を選定した。
中華まんには岩手の小岩井農場の牛ひき肉、かに玉には秋田の比内地鶏の生卵と青森の八戸港で購入したタラバガニ。
そして使用するコメと水は岩手県産の「あきたこまち」と「龍泉洞の水」など地産地消をアピールした。
僕は調理台に立つ前にバンダナを頭に巻き、エプロンをかけて準備万端整え、スタートの合図を静かに待った。
「第2ラウンドは『ヘルシー納豆料理勝負』!
果たしてどんな料理ができるのか?!
よーい、スタート!」
ジモンさんの合図と同時に、僕は最初にコメを研いで、ご飯を炊いた。
次に冷凍のタラバガニの脚をハサミで切って、水を張った大鍋に投入し火を点けた。
そして自宅で苦戦した中華まんに取り掛かった。
まずはボウルに薄力小麦粉、ベーキングパダー、と調味料を入れて良くかき混ぜ、水を少しずつ 加えた。軽くまとまったら油を加え、手でこねて表面が滑らかな団子状態になってところで、ラップを巻いて常温で寝かせた。
そして玉ねぎをみじん切りにして片栗粉をまぶした。
牛ひき肉とひきわり納豆に生姜おろし、ごま油、酒、醤油その他調味料をボウルにドバドバ投入し、先ほどの玉ねぎと合体させた。
時間は既に1時間が経過した。
(よし、ここまで順調だ)
と思っていたら、向かいの調理台から声が響いた。
「できました!」
一番最初に手を上げたのは高野さんだった。
(高野さんが終わった!?
まだ1時間残っているのに、 いったい何を作ったんだ?)
隣の調理台を見ると、三井田さんはバン!バン!と音を立てながら、麺棒を操っていた。
(そっちは手打ちそば?!しかも炊飯器から鯛めしの香りが…
まさか本職は料理人なのか?)
スピードレースじゃないとはいえ、急に他人の料理が気になり、手のひらに汗が滲み始めた。
それでも心を落ち着かせながら、寝かせた生地を10等分にして、円形に伸ばしたところにタネを乗せて、襞を作りながら包み、さらにラップで包み、電子レンジに投入。
その間、溶き卵に調味料を投入し、茹で上がったタラバガニを剥いて、合体させた。フライパンで半熟状態に焼き上げた。そして片栗粉で作ったあんと小粒納豆を合体させたモノを小鍋で1分だけ加熱した。
炊きあがったご飯を器に盛り、その上にかに玉、納豆あんをかけて完成。
電子レンジを駆使して時短で発酵させた中華まんを、せいろでさらに蒸しあげた。
この時点で三井田さんも調理を完成させた。
残り時間はあと15分。
まだ完成していないのは女性の野口さんと僕だった。
中華風サラダはちぎったレタスと千切りピーマンとトマトのスライスの上に、甜面醤と胡麻ドレッシングを合体させたオリジナルドレッシングをかけ、最後に松の実とすり下ろしたフリーズドライ納豆をかけて3品目が完成した。
できた!と思ったが、挙手するのを一瞬躊躇った。
番組に事前に知らせていたメニューは3品だったが、完成品を見て違和感を覚えた。
(何かが足りない)
その瞬間、一瞬閃いた。
___そうだ!
ネバネバになった口の中をさっぱりさせる『汁物』が必要だ……!
調理台の上の残りの食材を眺めた。
(生卵と玉ねぎ、ひきわり納豆を使ったスープならできそうだ)
すぐに鍋に水を入れて火をつけた。
(待てよ…残り時間で玉ねぎに火は通るのか?
タイムオーバーになればこれまでの努力は全て水の泡だ)
一瞬手を止めて、段ボール箱に目をやった。
(そうだ、お前がいた!)
控え選手で出番がなかった烏龍茶の茶葉を段ボールの中から掴み出し、急須に放り込んだ。そこに中華風サラダで使った、フリーズドライ納豆を投入し、熱湯を注いだ。
(頼む、美味くなってくれ……!)
一か八かの賭けに出た。
制限時間残り5分、即興で煎じたオリジナル茶を湯飲み茶碗に注いだところで、
「できました!!」
と言って手を上げると、ジモンさんがマイクを持ってやってきた。
「蒲生さんが今、完成しました!
この料理のタイトルは?」
目標の時間内に料理を完成させることに必死だった。
無事完成してホッとしたが、料理に名前を付けることをすっかり忘れていた。
「えーーーっと…」
と、言葉に詰まっていると、
「名前、忘れたんですか?」
と、ジモンさんに気付かれてしまったので、
「ズバリ、中華納豆定食!」
と、なんの捻りもないダサいタイトルを口走ってしまった。
「中華納豆定食!お疲れ様でした!」
その瞬間、スッと肩の力が抜けた。
もう他の人の料理や審査結果なんてどうでもいい。
あとは審査員のコメントを楽しむだけだ。
第1章はこちらからどうぞ
#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 #ドラマ脚本 #TVチャンピオン #テレビ東京
いいなと思ったら応援しよう!
少しでも「いいな」と感じていただけたり、共感していただけたら、とても嬉しいです😊
よろしければ応援していただけると励みになります!
いただいたチップは、今後の創作活動をより良くするために大切に使わせていただきます。心から感謝いたします✨