#創作大賞2026 #エンタメ原作部門 納豆チャンピオンへの道 第6章|How To Make Natto-Champion|激闘の第1R! 孤独な戦いへの幕開け
第4問目はクロッシュを開ける前から、鼻をつまみたくなるほどの強烈な納豆臭がしていた。
(こんなに発酵が進んだ納豆を食べて、正解が分かるのか?)
一抹の不安を抱えながら、第4問目がスタートした。
合図と共にクロッシュを開けると、目がツンと来るほどの刺激があった。
しかし片目で容器を見た瞬間、再び脳内データーベースがスパークした。
よし!キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
容器には「ひきわり」と刻印があった。
秋田のヤマダフーズのひきわり納豆だとすぐにわかった。
大豆の皮がないひきわり納豆だから余計に発酵が進みやすく、強烈な刺激臭をもたらしていたのだ。
ヤマダフーズのひきわり納豆のラインナップ商品を脳内で五十順にソートした。
容器のフタを開けた。
普通のひきわり納豆かと思いきや、大豆が半分に割れていたので、さらに確信した。
(コレしかない!)
納豆の表面は既に砂糖が掛かったようなチロシンが発生していたが、構わず一口で完食し、脇腹の痛みも忘れて疾走した。
パネルに到着しても、誰も付いてこない。
余裕でパネル中央の下段からラベルを見つけて、回答席へ。
「蒲生さん、この納豆はどこのナニ?」
ジモンさんが興奮しながらマイクを向けた。
「ヤマダフーズおはよう納豆の、つぶわり」
ピンポン、ピンポーーーン!
「…正解!!蒲生さん第1ラウンド突破!」
「よっしゃーーー!!」
「どうしてわかったんですか?」
「普通のひきわり納豆の大豆は4~6等分に割れているんですが、
皮を剥いただけで、大豆を半分に割る❝つぶわり製法❞は
秋田のヤマダフーズだけなんですよ」
大事な場面で東北の納豆が出題されるとは、まさに天は僕に味方した。
応援団の元に駆け寄ると
「がんも!やったね!」
「委員長!おめでとうございます!」
「キャーー!すごーーい!」
「みんな応援ありがとう!」
と一人一人と握手して、喜びを分かち合った。
その輪の中に、三井田さんが駆け寄った。
「がんもさん、おめでとう!
第2ラウンドも一緒に盛り上げていきましょう」
「三井田さんもおめでとう!
一位勝ち抜けは納豆学会の貫禄ですね」
と、お互いの勝ち抜けを称え合った。
5人が談笑しながら、戦場の脇の四阿で、残り2枠の戦いを観戦した。
続く5問目を北海道の古本さんが正解したが、6問目は正解者なしだった。
正解は熊本の納豆で、当時「くめ納豆」は九州に進出していなかったので、営業マンの高野さんでも、さすがに分からなかった。
しかしそんな高野さんが7問目、8問目を連取して、3位勝ち抜けした。
四阿で高野さんを祝福するため、拍手で出迎えたが、高野さんはお腹を抱えながら、そのままトイレに駆け込んだ。
「高野さん相当苦しそうだけど、大丈夫かな?」
「やっぱり戦いが長引くとリバースするよね」
トイレから出てきた高野さんは椅子に座って項垂れ、応援に駆け付けた同僚たちに介抱されていた。
二人で高野さんの体調を案じている間にも、戦いは続き、9問目を紅一点の野口さんがようやく正解していた。
これで古本さんと野口さんは並んだ。
そして最後の10問目は?
しかし納豆を完食しても、二人にはもう走る体力は残っていなかった。
鉛のような足を必死に前へ出す古本さん。だが、執念で一歩先へ滑り込んだのは野口さんだった。
回答席のボタンが重々しく鳴り響く――。
「野口さん。正解!最後の椅子をゲットーーーッ!
おめでとうございます!」
と、ジモンさんが野口さんの見事な逆転勝利を称えた。
はるばる北海道から来た大学生の古本さんが、ここで敗退となった。
「古本さん、残念でした」
ジモンさんが労いの言葉を掛けると
「ん~、まだまだ勉強不足でした。
皆さんの情熱に負けました。
これからも精進します」
と、古本さんは敗因を述べた。
第2ラウンドに進出する4人が決定したところで、スタッフがこの後のスケジュールを説明した。
「すぐにロケバスに乗って頂き、第2ラウンドの会場の東京マスダ学院調理師専門学校に行きます」
亀戸中央公園から10分ほど離れ、亀戸駅から一駅千葉寄りの平井駅前にある専門学校が次の戦場だった。
「応援団は第2ラウンドも観戦できますか?」
スタッフに質問すると、すまなそうな顔で首を振られた。
「すみません。ここから先は、応援の方は校内には入れません」
「仕方がない。ここで解散か」
下田さんが、ポンと僕の肩を叩いた。
「がんも!第2ラウンドも暴れてこい!朗報を待ってるぞ」
「どんな料理か食べてみたかったな…」
「委員長、次も絶対に勝って下さいね!」
下田さんと女性委員たちに見送られて、激闘を終えロケバスに乗り込み、敗退したばかりの古本さんもバスに同乗して、次の決戦の場へ移動した。
窓の外では、応援団のみんなが小さくなるまで手を振り続けてくれていた。 賑やかだった応援の声が遠ざかるにつれ、車内に独特の張り詰めた緊張感が満ちていく。
――ここからは、本当の孤独な戦いだ。
バスは亀戸中央公園を出発した。
揺られること10分で到着すると、僕たちの目の前には次の戦場である『東京マスダ学院調理師専門学校』が聳え立っていた。
第2ラウンドのテーマは、納豆を使った「ヘルシー納豆料理勝負」。 知識と五感で勝ち抜いた第1ラウンドとは、全く異なるスキルが試される。
待ち受けるのは、未知なる創作納豆料理の激突か、それとも――。 息を呑む僕たちを乗せて、ロケバスのドアがプシューと重々しく開いた。
第1章はこちらからどうぞ
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