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遊郭悲哀、女たちの悲しき人生~江戸の古川柳

 江戸の遊郭ゆうかくは、男たちの社交場であったが、そこで働く女性たちは生活の苦しさから身を売った者たちだ。その女性やその周りをうたった男たちの川柳がある。
 柄井からい川柳せんりゅうが選んだ投稿とうこう作品の優秀作を集めた「誹風はいふう柳多留やなぎたる」の作品を紹介する。
 これらの作品は、名もなき庶民が投稿したもので、現代の川柳と区別して古川柳こせんりゅうといわれる。
 各句につけた番号は、何巻の何番目の作品かを示している。

 


良い娘 年貢ねんぐすまして旅へ立ち

1-307いむすめ年貢ねんぐすまして旅へたち  色々いろいろあり色々が有

 江戸の川柳、古川柳こせんりゅうは、七七のおだいがあり(前句まえくという)、それにあわせて五七五の作品をつくる。そして五七五七七の完成品となる。俳句や川柳の基本は「短歌」だった。
 ここでは「色々が有色々が有」が題で、「いろいろあるものな~に?」と聞いている。漠然ばくぜんとした題なので、それこそいろいろな内容が考えられるだろう。
 そこで作者は遊女にめをつけた。遊女は、生活苦から遊女となる。えっちが好きだからなっているのではない。
 親思いで美人の娘は、親のために身売みうりをする。親は、年貢ねんぐはらえないとろうに入れられたりする。だから娘が身売りをする。だれも好き好んで売られるわけではない。身売りの金で年貢分を払い、家族が無事に暮らせることを確認して、娘は遊郭ゆうかくへと旅に出る。
 人身売買じんしんばいばいにあたる、こんな話が、一昔前の日本では、当たり前にあった。

 


四郎兵衛しろべえをおそろしがるがおそろしい

1-299四郎兵衛しろべえをおそろしがるがおそろしい  ねらいこそすれねらいこそすれ

 四郎兵衛しろべえは、吉原遊郭ゆうかくで遊女の逃亡などを監視かんしする番所ばんしょで、その番人のことも四郎兵衛しろべえといった。
 遊郭から逃亡しようと「ねらいこそすれ」と、ねらっている遊女は、四郎兵衛しろべえの目を気にして恐ろしがっている。逃亡が見つかったらそれは大変なことになるので、逃亡を考えている女郎の方が恐ろしいと作者はいっている。
 好きな男ができて逃げようというのか、それとも売春生活に苦しみ逃げようというのか、どちらにしても、よっぽどの思いがあったのだろう。

 


しかられた禿かむろたんすへ寄りかかり

1-705しかられた禿かむろたんすへよりかかり  せわしない事せわしない事

 「禿かむろ」は遊女に使える幼女で、まだ十歳にもならぬ子もいた。幼くして売られた子や、遊女が生んだ子もいた。そんな子が、大人の世界に入り仕事をする。それはうまくいかずにしかられることも多いだろう。たんすに寄りかかってすねてしまうこともあっただろう。
 「せわしないこと」という前句まえくは、いそがしいというだけでなく、落ちつきなくそわそわすることもいう。
 遊女の周りには、幼女の禿かむろと、まだ若い女郎の新造しんぞうがついていた。みなみな、苦しい思いをしながら、年季ねんきが明けるのを待っていた。

 


今まで多くの古川柳を紹介してきたが、それらは全て、次のリンク先の後半部分に紹介している、

遊女の生活をもとに描いた黄表紙きびょうし九界十年くがいじゅうねん色地獄いろじごく」はこちら、

遊女の生活をマンガチックに描いた黄表紙「十四傾城じゅうしけいせい腹之内はらのうち」はこちら、

タイトル画像は、黄表紙「亀山人家妖」の一場面、

 

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