参院選総括(2):参政党を出現させた日本政治の構造変化:自民党は「世界最強の包括政党」の座を降り、「KACOさま(いつもびびってやめる神谷宗幣様)」はどうなる?
参議院議員選挙は、7月2日(日)に投開票されて、改選される125議席が争われた。
自民党・公明党の連立与党は、自民党(以下、自民)が39、公明党(以下、公明)が8の計47議席にとどまった。非改選の75議席を合わせて122議席で、過半数の125議席に3届かなかった。
野党は、立憲民主党(以下、立民)が22議席と横ばいにとどまり、日本維新の会(以下、維新)は1議席積み増しの7議席、共産党は3議席と改選7議席の半数を下回った。
れいわ新選組は3議席、日本保守党は2議席、社民党は1議席をそれぞれ比例で獲得し、安野貴博氏率いる「チームみらい」は1議席を得た。
躍進したのは、国民民主党(以下、国民民)と参政党。国民民主党は改選4議席から4倍超の17議席を獲得した。非改選の5議席と合わせて、予算を伴う法案を単独提出できるようになった。
そして、参政党だ。参政党は14議席に伸長した。非改選1議席と合わせて15議席で、単独で参院に法案を提出可能になった。
まずは、参政党だが、基本的にはまだ論評に値しない段階だろうね。1回だけの選挙なら、今回のような結果は起こりえる。まだ、何もしていない。街頭演説というのは、一方的にしゃべれるわけで、なんかよさそうだで票が入ることがある。
「石丸伸二現象」
が、そうでしょ。石丸氏も、東京都知事選はよかったが、その後、議論をしなければならなくなったら、途端にその発言のおかしさが国民の前に晒された。
参政党が本物かどうかは、あと2、3回選挙をしないとわからない。これは、別に参政党に限らず、すべての政治家に当てはまる。本物であれば、生き残る。偽物は、必ず消えていく。
神谷宗幣参政党代表は、「KACO」さまになっていくと思うよ。ドナルド・トランプ米大統領の「TACO(Trump Always Chickens Out)」と同じようなものだ。
「KAKO(KAMIYA Always Chickens Out=神谷はいつもびびってやめる)」
ということだ。それについては、すでに書いてあるので、こちらをどうぞ。
「KACOさま」は、これから自由民主主義の厳しい洗礼を嫌というほど受けることになる。それは、すでに始まっているではないか。
参政党は、「KACOさま」の 「日本人ファースト」の訴えが支持されて、大躍進を果たしたはずだ。
ところが、選挙後の記者会見で、
「日本人ファースト」を訴える根拠となる「外国人の特権」が日本に存在するかどうか問われると、「KACOさま」は
「特にないのではないか」「日本人が『平等じゃないな』と感じるような事例はいくつかあるかもしれない」
と発言した。つまり、特権が実際にあるのではなく、国民側の印象論とか感情論だと言っている。
「KACOさま」は、「日本人ファースト」について、次々とファクトを突き付けられて、うまく逃げようとしているのだね(笑)。
また、選挙中に同じく物議を醸した天皇を「元首」と位置づけ、国が「主権」を有するとした党の憲法草案についてだけどね。
これも「KACOさま」は選挙後の記者会見で、草案自体が「あくまで議論のたたき台」だと強調した上で、
「(草案は)国民主権の前提で書いていたが、書いていないと心配だという声があるのであれば、書けばいいと思う」
とあっさり回答した。おいおい(笑)。
今後も、「KACOさま」のこういうの続きますよ。おもしろいのは、この「KACOさま」のありえないほどのすごすぎる変節に対して、怒っているのはアンチ・参政党の方々だけということだ。
参政党支持者は、一斉に沈黙(苦笑)。
参政党を批判する人の人格攻撃、誹謗中傷は続けておられるようだ。ただ、その批判の中身は、何も言わない。
いや、彼らにとって、政治って「推し活」なんだろうね。「中居ヅラ」とそうレベルが変わらないのがよくわかります。
私はこの際、「KACOさま」には連立政権入りしてもらったらいいと思う(笑)。なぜなら、その方が早いから。早いというのは、間違いに気づいていただけるのが早いから。いつも言ってます。
「極端なことを言う政治家には、1回政権をやらせたほうがいい」。
政権を担い、責任ある仕事をやれば、世の中そう単純でないことがわかる。自分が言っていたことが、間違っていたことがわかる。やらせないと、いつまでも空想を言い続けるんですよ。
「TACO」がまさに今、そうだ。かつての「リフレ派」と呼ばれた経済学者たちもそう。アベノミクスの前、延々と主張していたが、アベノミクスが失敗したら、どこへ行ったんでしょうか(笑)。
アベノミクスの失敗を、他人事のように語ってる人もいますな(笑)。
まあ、神谷代表、せいぜい「KACOさま」となって、お勉強してくださいませ。
ただ、「KACOさま」にとっては、たぶん、発言の正しさとか、そんなことどうでもいいんですよ。「KACOさま」は、参政党が普通の保守政党にいつの間にかなることが狙いなんだろうね。言い換えれば、旧安倍派のポジションに座ることが目標だな。
それは結局、「参政党現象」とはなんなのかを考えればわかる。
私はこの現象、昨年秋から何度も繰り返し言ってきたことなんだよね。
BSフジ「プライムニュース」でも、このことに触れた部分があるね。
要は、2024年の総選挙後に生じた日本の新しい政治状況とは、一言で言えば、これまでポピュリズムを抑えるのに有効に機能してきた「包括政党・自民党」が不安定な状況に陥ったということだ。
「裏金問題」などで、自民の党内の保守派の牙城であった旧安倍派が崩壊した。旧安倍派が多かった「裏金議員」の多くが衆院選で落選した。
保守派の崩壊で、自民が保守からリベラルまで「包括的」にカバーすることはなくなった。石破茂氏が首相になることで、「中道路線」となった。
衆院選で、自民・公明は少数与党となった。野田佳彦氏が率いる立民も「中道保守」を打ち出した。「包括政党・自民一強」から「中道」の与野党による議論による「コンセンサス政治」が始まった。
新しいコンセンサス政治とは、 自民・公明の与党に 、立民 、国民民 、維新という野党が、議論によって進める政治である。それは、かつての「理想の野党→現実的な与党」の復活である。
通常国会では、国民民が主張した「 手取りを増やす政策」、維新の会の「教育無償化」がとりあえず実現した。選択的別姓は、法案が国会に提出された。審議は先送りとなったが、法案が国会に出たこと自体が、画期的だ。
その他は、自民以外の政党が一斉に「減税」を主張するなど、与野党の協力というよりも、野党側が自民を相手にした
「バラマキ獲得合戦」
の様相を呈していた。まあ、昨年の11月から7月まで、9か月くらいですか?まだ、「コンセンサス政治」といっても、始まったばかりのヨチヨチ歩き。これから成熟していくものだと思っていた。
だけど、危惧はしてたんですよ。私は書いてました。
『ラディカルなSNS政治になれた人々が、穏健な 「コンセンサス政治」を理解できないんだろうな』
『退屈になれば、内閣支持率・既存政党への支持が低下する。国民が既存政党外に強い指導者を求めることになり、左右のポピュリスト政党の台頭を許すことになるかもしれない』
この通りになりましたわな。今回、左は低調だったが、右に参政党が出現したわけだ。
そして、もう1つは、やはり旧安倍派を中心とする自民党の保守派の壊滅だろう。前回の衆院選での保守派の大量落選、今回の佐藤正久氏、杉田水脈氏らの落選などだが、保守派のコアな支持層は、旧安倍派なき自民党を見限った。その票の行き先が参政党に行った。まあ、それは誰でもわかる話。
参院選の比例代表の結果をみれば、わかりますね。
私は、無党派という数が変わる概念よりも、それを包み込むサイレントマジョリティ(無党派+緩い政党支持者)という概念を好んでいて、それは大体日本の有権者の7割だと思っている。
逆にいえば、ガチガチの保守、リベラルはそれそれ1割程度でこれが「ノイジーマイノリティ」ということになる。
この記事によれば、比例に投票した有権者が約6000万人かな。参政党700万票のうち、かつて安倍自民党に投票していたのが流れたのが、感覚的に約400万票とすれば、コアな票は300万票。これに保守党の300万票を合わせれば、600万票で1割。これが日本のコアな保守ということかな。
かつての安倍自民党は、保守をがっちり抑えながら、サイレントマジョリティの中道右派から左派まで抑えていたから、この中道右派左派の一部を取ったのが、国民民というイメージだね。
もっと詳しい分析をする専門家がでるだろうが、今回の参院選は、安倍自民党が押さえていた保守から中道左派までの票の取り合いだったということだろうね。
保守票が、顕著に自民党から離れたということ。安倍票だったサイレントマジョリティが右派が参政党、左派が国民民ということだ。
安倍元首相の影響力がまだ残っていた2022年の参院選(選挙中に元首相は暗殺された)と比べると、自民が6減、維新が3限、国民民が4増、参政党が6増。なるほど。まあ、大体この見立てはおおむね間違ってはいないかなという感じだ。
立民は、本来とれたはずの安倍票をこの2党に完全に奪われて、左派から中道左派の固定票にとどまったということ。7→7の横ばいだからね。
となると、注目すべきはコアは保守票になにが起きたのかということになる。神谷代表や参政党の面々の「KACOさま」の発言の数々は、一言でいえば、
「タガが外れた」
ということだろうね。これまで何度も述べてきたように、保守派は自民党によって抑え込まれてきたんだよね。
以前から書いてきたけれども、自民の議員は、保守系の支持者の集会にいけば、リップサービスをしてきた。
例えば、「日本は神の国」とかね、軽口をたたいてきたんですよ(笑)。今回、問題となっている「KAKOさま」の発言の数々も、はっきり言えば、こういう集団の中では、普通に飛び交っている言葉だったわけだ。
こういう人たちは、急に湧いてきたわけではなく、敗戦で懲りることなく、戦後もずっといたんだと思う。
ただし、自民はリップサービスはするが、そういう集団を抑え込んできたのも事実だった。現実として、保守系の集団が求める政策が、国会で通ったことありますか?
ない。自民の基本戦略は、コアな支持者の主張を実現するというより、野党の政策を盗んで、予算をつけて実現することで、野党の支持を奪い、壊滅させることだった。
「世界最強の包括政党・自民党」の最大の強みだが、それが最も顕著に表れたのが、安倍政権が実現した「リベラル政策」の数々だ。
野党の支持を得るために、自民の政治家は、一部の例外を除き、保守系の集まりの外では「一定の節度・品格を持った言動」をしてきた。
いわば、保守系の支持者は、集会ではリップサービスされながら、実際は無視されていたわけだが、どんな状況でも保守系が、左派野党に投票するはずもなく、いつか自分たちの理想を実現してくれると信じて、自民党に投票し続けていたわけだ。
ところが、安倍元首相が暗殺された。その政治力が消えたせいか、「旧統一教会」「裏金問題」と問題が噴出し、昨年の衆院選で元首相を取り巻いていた保守系の議員が落選した。旧安倍派は消滅した。
そうすると、保守系支持者の集団で飛び交っていた「下品な発言」を抑えるものがなくなった。「タガが外れ」「むき出しになった」下品さに応えるように出てきたのが、「KAKOさま」だったということだ。
あるいは、この保守系の票を総取りすることを狙って、確信犯的に「KAKOさま」はああいう発言を連発したのかもしれないね。
それが、今回の選挙結果ということだ。とすれば、1つ言えることは、「日本に排外主義が急に増えた」ということではないのではないかということだ。
元々、保守系の中には「排外主義」「男尊女卑」「天皇主権」のような考え方があった。それは自民党保守派によってある程度抑えられていたが、そのの消滅で「タガが外れて」一挙に表面化しただけだ。それが参政党に流れた。
加えて、そういう「下品な不規則発言」には寛容で、それより安倍内閣の「アベノミクス」を支持していたような中道右派の一部が参政党に流れた、ということだろう。
多くの国民は、冷静さを保っている。これから、参政党の選挙中のさまざまな発言が、自由民主主義の洗礼を受ける。KAKOさまは、発言の修正を繰り返し、いつのまにか、参政党は何の特徴もない普通の保守政党になっていく。
ただ、それはそれで意味があるし、KAKOさまの真の狙いもそこにあるかもしれない。
参政党はなくならないと思いますよ。参政党は全国に287支部・地方議員が150人いる。
結党時に、篠原常一郎氏が共産党流の組織論・運動論を叩きこんだ。KACOさまなどの不規則発言の一方で、地道な活動が実を結んでいる。地方組織が脆弱な国民民、いまだ全国政党化が実現できない維新と比べても、その地方組織の広がりは刮目すべきものだ。
KACOさまは、したたかですよ。
それは裏返すと、自民は保守派の支持者を再び掌握することが難しいということを示している。
自民は、もはや「世界最強の包括政党」ではない。普通の「中道右派政党」になったということだろう。
