箇条書きさえあれば、AIが草稿を書いてくれる——AIで始める事例制作・第2回
というわけで、事例記事制作の連載第2回です。前回は、事例記事がBtoBのキラーコンテンツでありながら「作りやすさ」を備えていること、その土台になる6つの要素についてお話ししました。今回は、サクッと草稿を作ってみます。
その前に、予告していた「アンジーで起きた事件」の話をさせてください。これが、今回ずっと教材にしていくセルフ事例になります。
チャットベースの、地味だけど無視できない壁
アンジーは以前、AWS上にプライベートなAI環境(Bedrock Claude Chat)を構築して、記事制作を一度は大きく効率化していました。機密を守りながら生成AI(Claude)を使える環境が整い、これでずいぶん楽になった——はずでした。
ところが、AIエージェントを使うと、もっと楽になるらしい……チャットベースの限界が見えてきたのです。その原因のひとつが「文字起こしAIと、執筆を担うAIの分断」でした。
取材の音源は、まず文字起こしAIにかけてテキストデータにします。その結果を人が受け取って、誤認識を直します。それをあらためて執筆用の生成AIに貼り付けて、あらかじめ設定した執筆ルールに則った草稿をお願いする——。文字起こしと執筆が別々の場所にあるので、その間を人が手で運ぶ必要があります。「AI文字起こし→人による修正→執筆依頼→レビュー→編集・推敲」と、工程が直列に長く伸びて、手数がかさむ運用でした。
そこで今回は、この「困りごと」を課題とし、それを解消した事例の記事にしていきます。自分の会社の話なので、取材は楽。作り方も楽ですよ。
まず、6要素を「シート」に埋める
前回お伝えした6要素。これを、いきなり文章にしようとしなくて大丈夫です。まずは箇条書きで、シートの空欄を埋めていくだけ。 文章にする作業は、ある程度生成AIがやってくれます。
大事なのは、うまく書こうとしないこと。事実を、素材のまま並べる。それだけです。
アンジーのこの課題解決を、このシートに埋めてみると、こうなりました。
1. 企業・事業の紹介
株式会社アンジー(2005年創業)
編集制作部門とWeb開発部門を併せ持つ制作プロダクション
BtoB記事制作を数多く手がけ、事例記事は主力の一つ
2. 顧客の状況と課題
以前AWS上にプライベートAI環境(Bedrock Claude Chat)を構築し、制作は一度効率化していた
しかしチャットベースゆえの壁があった=「文字起こしAIと執筆AIの分断」
文字起こし処理と草稿執筆の処理が別々で、間を人が手で橋渡ししていた
工程が直列に長くなり、手数がかさんでいた。これをAIエージェントが連携するパイプラインを作りたい
3. ソリューションとして、Claude Codeを選んだ理由
機密保持と透明性(Bedrock東京リージョンの安全な土台を延長できる)
参照ファイルの容量制限がなく、ローカルとの通信もできる
過去記事のスタイルなど、自社の蓄積を手軽に参照できる
4. 導入の過程
音源を入れると、文字起こし→執筆→レビューまで一気通貫で処理し、レビュー済みの二稿まで出すパイプラインをClaude Codeで構築
工夫の要は音声のクレンジング。企業名・製品名・専門用語をまとめた“カンペ”(簡単なテキストや既存PDFでよい)をAIに渡し、文字起こし精度を向上(簡易RAG)
これで「人による誤認識修正」の工程が不要に
5. 成果
草稿前に文字起こしテキストをクレンジングする作業が消えた
人の作業とAIの処理を並列化できるようになった
二稿(レビュー済み)までの時間が半分に短縮
6. 今後の展望
事例作り自体が手軽にできる世界を目指す
そこで生じる摩擦や痛みを解消するパートナーでありたい(インタビューだけ担当、仕上げのアドバイスなど)
制作費をかけなくても作れる。困ったときは相談に乗る。フル受託も可能
どうでしょう。難しいことは何も書いていません。頭の中にある事実を、6つの項目に振り分けただけです。
箇条書きを、AIに渡す
シートが埋まったら、あとはAIに渡すだけです。このとき、どんな記事にしたいかを一言添えます。今回は「三人称のナラティブ、敬体、読者に寄り添うフレンドリーなトーン」でお願いしました。
使ったプロンプトは、こんなシンプルなものです。
以下は事例記事の素材を6要素で整理した箇条書きです。これをもとに、事例記事の草稿を書いてください。
・形式:三人称のナラティブ、敬体(です・ます調)、読者に寄り添うフレンドリーなトーン
・構成:課題→解決策→成果の流れがわかるように
・箇条書きに書かれた事実だけを使い、推測で数字や固有名詞を足さないこと
(ここに6要素の箇条書きを貼る)
最後の一行、「推測で数字や固有名詞を足さない」は必ず入れてください。AIは空欄を埋めようとして、ありもしない数字を親切に“創作”してしまうことがあります。事例記事で、これは絶対にやってはいけないこと。事実だけで書かせる歯止めを、最初からかけておきます。
このプロンプトで出てきた草稿が、こちらです。
# チャットの壁を越えて──株式会社アンジーが挑んだ、AIエージェント連携による事例制作の再設計
## 一度は効率化した。それでも残った「分断」
2005年の創業以来、株式会社アンジーは編集制作部門とWeb開発部門を併せ持つ制作プロダクションとして、数多くのBtoB記事制作を手がけてきました。なかでも事例記事は、同社の主力サービスの一つです。
同社では記事制作のためにAIを活用しています。AWS上にプライベートAI環境(Bedrock Claude Chat)を構築し、制作工程を一度は効率化していました。しかし、チャットベースならではの壁が残っていたと言います。それが「文字起こしAIと執筆AIの分断」でした。
文字起こしの処理と草稿執筆の処理はそれぞれ別々に動いており、その間を人が手作業で橋渡ししていたのです。工程は直列に長くのび、どうしても手数がかさんでしまう。「AIエージェント同士が連携するパイプラインをつくりたい」──そんな思いが、次の一歩の出発点になりました。
## Claude Codeという選択
同社が解決策として選んだのが、Claude Codeでした。決め手はいくつかあります。
一つは、機密保持と透明性です。すでに整えていたBedrock東京リージョンという安全な環境を利用できる点が魅力でした。加えて、参照ファイルの容量制限がなく、ローカル環境との通信もできること。そして過去記事のスタイルなど、自社に蓄積してきた資産を手軽に参照できることも、大きな理由になりました。
## 音源を入れれば、レビュー済みの二稿まで
こうして同社は、Claude Codeを使って一気通貫のパイプラインを構築しました。音源を入れると、文字起こし→執筆→レビューまでをまとめて処理し、レビュー済みの二稿までを出力する仕組みです。
工夫の要となったのが、音声の「クレンジング」でした。企業名・製品名・専門用語をまとめた“カンペ”──簡単なテキストやPDFの資料──をAIに渡すことで、文字起こしの精度を高めたのです。いわば簡易的なRAGの発想です。
これによって、これまで欠かせなかった「人による誤認識の修正」という工程そのものが、不要になりました。
## 成果──消えた作業、半分になった時間
導入の効果は、はっきりとした形で表れました。
まず、草稿前のクレンジング作業が消えました。さらに、人の作業とAIの処理を並列化できるようになったことも見逃せません。直列だった工程が組み替わったことで、レビュー済みの二稿までにかかる時間は、半分にまで短縮されたのです。
## これからの展望──事例作りが、もっと手軽な世界へ
同社が見据えるのは、事例作りそのものが手軽にできる世界です。
そのうえで、制作の過程で生じる摩擦や痛みを解消するパートナーでありたいと考えています。インタビューだけを担当することも、仕上げのアドバイスをすることもできる。制作費をかけずに作ることもできますし、困ったときには相談に乗る。もちろん、フル受託にも対応します。
一度効率化した先で見えた新たな壁を、また一歩越えていく。株式会社アンジーの挑戦は、これからも続いていきます。
どうですかね〜。箇条書きを渡しただけで、ここまでの草稿が出てきました。少し手直しが必要かもしれませんが、ある程度形になっています。ゼロから書く必要はなく、修正していくだけなので気が楽になりませんか? 自分たちだけで事例が作れることが分かると思います。
あなたも、試してみてください
この記事の下に、6要素を埋めるためのシートを置いておきます(記入例つき)。あなたの手元の事例で、ぜひ埋めてみてください。埋め終わったら、上のプロンプトと一緒にAIに渡すだけ。きっと、草稿ができあがります。
ただしこの草稿、よく見ると、まだ物足りないところがあります。
成果の「半分に短縮」という数字が、目立ちません。また、導入を担当した人の生の声、いわゆる「人気(ひとけ)」がまだ入っていません。事実は並んでいるけれど、読者の心を動かす共感の要素が足りないのです。
次回は、この草稿に味付けをしていきます。数字を目立たせ、人の声を加え、事例をぐっときわだたせる——そのテクニックを一緒に見ていきましょう。
この記事を書いているのは……
付録:【付録】6要素シート(記入例つき)
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6要素シート(記入例つき)
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うまく書こうとしなくて大丈夫。事実を、箇条書きで並べるだけです。
各項目の【記入例】は、この記事で教材にしたアンジーのセルフ事例。
同じ粒度で、あなたの事例を【記入欄】に書いてみてください。
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1. 企業・事業の紹介
顧客企業の規模や立ち位置を示し、記事の信頼性を担保する。
【記入例】
・株式会社アンジー(2005年創業)
・編集制作部門とWeb開発部門を併せ持つ制作プロダクション
・BtoB記事制作を数多く手がけ、事例記事は主力の一つ
【あなたの記入欄】
・
・
・
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2. 顧客の状況と課題
導入前の状態を描き、そこにあった課題を、読者が共感できる形で整理する。
【記入例】
・以前AWS上にプライベートAI環境を構築し、制作は一度効率化していた
・しかしチャットベースゆえの壁が=「文字起こしAIと執筆AIの分断」
・文字起こしと執筆が別々で、間を人が手で橋渡しするしかなかった
・工程が直列に長くなり、手数がかさんでいた
【あなたの記入欄】
・
・
・
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3. ソリューションを選んだ理由
複数の選択肢から、なぜこれを選んだか。選択の必然性を伝える。
【記入例】
・機密保持と透明性(Bedrock東京リージョンの安全な土台を延長できる)
・参照ファイルの容量制限がなく、ローカルとの通信もできる
・過去記事のスタイルなど、自社の蓄積を手軽に参照できる
【あなたの記入欄】
・
・
・
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4. 導入の過程
どう導入し、どんな工夫をしたか。読者が活用イメージを描けるように。
【記入例】
・音源を入れると、文字起こし→執筆→レビューまで一気通貫で処理し、レビュー済みの二稿まで出すパイプラインをClaude Codeで構築
・工夫の要は音声のクレンジング。企業名・製品名・専門用語をまとめた“カンペ”(簡単なテキストや既存PDFでよい)をAIに渡し、文字起こし精度を向上
・これで「人による誤認識修正」の工程が不要に
【あなたの記入欄】
・
・
・
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5. 成果
導入後の変化。定量(数字)と定性(現場の声)を組み合わせて。
【記入例】
・草稿前のクレンジング作業が消えた
・人の作業とAIの処理を並列化できるようになった
・二稿(レビュー済み)までの時間が半分に短縮
【あなたの記入欄】
・
・
・
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6. 今後の展望
次に目指す方向と、提供者との関係。読者に安心感を与える。
【記入例】
・事例作り自体が手軽にできる世界を目指す
・そこで生じる摩擦や痛みを解消するパートナーでありたい(インタビューだけ担当、仕上げのアドバイスなど)
・制作費をかけなくても作れる。困ったときは相談に乗る。フル受託も可能
【あなたの記入欄】
・
・
・
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埋め終わったら、これと一緒にAIへ
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以下は事例記事の素材を6要素で整理した箇条書きです。これをもとに、事例記事の草稿を書いてください。
・形式:三人称のナラティブ、敬体(です・ます調)、読者に寄り添うフレンドリーなトーン
・構成:課題→解決策→成果の流れがわかるように
・箇条書きに書かれた事実だけを使い、推測で数字や固有名詞を足さないこと
(ここに6要素の箇条書きを貼る)
※最後の一行「推測で数字や固有名詞を足さない」は必ず入れてください。ありもしない数字の“創作”を止める歯止めです。
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