事例記事は「キラー」なのに「作りやすい」——AIと始める事例制作・第1回
BtoBのコンテンツで、いちばん効くものは何ですか。そう聞かれたら、私は迷わず「事例記事です」と答えます。
実在する企業の課題と成果をもとにしているので、製品カタログよりずっと説得力があります。Web に載せれば検索から人が流れてきますし、営業資料にもセミナー配布にも使える。一度公開すれば、継続的にリードを連れてきてくれる。営業と広報に直結する、息の長い資産です。
筆者が運営している編集プロダクション・アンジーでは、グローバルなハイパースケーラーから、そのSaaSベンダー、SI企業まで、数々の事例記事を作ってきました。ほぼ毎週、なんらかの事例記事の話題が交わされています。
ところが、です。これだけ効くと分かっているのに、事例記事はなぜか後回しにされがちです。理由はたいてい「作るのが大変そうだから」。取材の段取りが要る、顧客が協力してくれない、時間がかかる——そういうイメージが、事例制作を止めてしまう。
でも、ここで声を大にして言いたいことがあります。事例記事は、キラーでありながら、作りやすさを備えているのです。効くのに、実は作りやすい。 この連載は、その「作りやすさ」を最後まで具体的にお見せするものです。
なぜ作りやすいと言い切れるのか——3つの理由
再現性のある「型」があること。 事例記事は毎回ゼロから悩んで書くものではありません。決まった構造があります。
AIで草稿化できること。 型に沿って手持ちの情報を整理すれば、文章にする作業はAIが引き受けてくれます。
グレードを選べること。 これがいちばんお伝えしたいところで、事例記事は「一番軽い版」なら、顧客に取材しなくても、掲載の許諾さえもらえれば公開できます。取材のハードルを、回避する道があるのです。
この3つがあるから、事例は「作りやすい」。順番にほどいていきます。
事例記事は、3人の主人公の物語
作り方に入る前に、事例記事とは何かを共有させてください。事例記事は、単なる「お客様の声」ではありません。そこには3人の登場人物がいて、それぞれの期待が重なっています。
顧客(課題を抱えていた企業)——導入で課題を乗り越え、成果を出した、物語の主人公です。
サービス提供者(とそのパートナー)——顧客の成功に貢献したことを示し、信頼を得る立役者です。
読者(同じ悩みを持つ見込み客)——自社の状況を重ねて、「うちも同じように成功できるかも」と未来を描く——次の主人公です。
事例記事は、顧客の成功を物語として共有し、提供者の価値を証明し、読者に可能性を見せる。この3つを同時に果たすために、しっかりした構造が要ります。
事例記事の基本構造(6要素)
その構造が、次の6つです。軸は「課題・解決策・効果」ですが、より具体的にはこう分かれます。
企業・事業の紹介——顧客企業の規模や立ち位置を示し、記事の信頼性を担保する。
顧客の状況と課題——導入前の状態を描き、そこにあった課題を整理する。読者が共感できる形で。
ソリューションを選んだ理由——複数の選択肢から、なぜこれを選んだか。選択の必然性を伝える。
導入の過程——どう導入し、どんな工夫をしたか。読者が活用イメージを描けるように。
成果——導入後の変化。定量(数字)と定性(現場の声)を組み合わせて。
今後の展望——次に目指す方向と、提供者との関係。読者に安心感と発展の道筋を与える。
この6要素が、事例記事の背骨です。 逆に言えば、この6つを埋められれば、事例はもう半分できています。
この連載の歩き方
さきほど「グレードを選べる」と言いました。この連載は、いちばん軽いグレードから始めて、少しずつ本格的なものへ登っていきます。
グレード1——提供側の視点と、自社担当者のコメントで作る版。顧客には掲載の許諾だけもらえれば出せます。顧客の負担がほぼありません。AIと手軽に作る方法をお知らせします。
グレード2——そこに顧客のコメントを一言足す版。説得力が一段上がります。
グレード3——顧客にインタビューして、顧客が主役になる版。いちばん説得力がありますが、取材の段取りが要ります。質問票の作り方、インタビュー時での配慮なども、ここで扱います。
そして、この連載を通して育てる「教材」を1本用意していきます。アンジーが、自社で開発したAI編集の仕組み(オープンソースで公開しています)を、自社の記事制作に使ってみた——というセルフ事例です。自分の会社の話なので、包み隠さず全部お見せできます。次回から、このケースが、回を追うごとに草稿から完成版へと育っていく様子を、一緒に見ていきましょう。
この記事を書いているのは、編集プロダクション・アンジーの森です
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