「天才デザイナー」は「名監督」になれるのか?ニューウェイ氏のホンダ批判に見る、「適材適所」とは?
今年の1月からnoteデビューをしましたが、当初の構想は、
「『趣味ネタ』がメイン。ただし、これまで20年ほど続けてきたブログでは自身の『仕事』についてはほとんど語ってこなかったため、『仕事ネタ』についても書いていく。ただし、あくまでも『趣味ネタ』がメイン」
というイメージでスタートしたんですが、蓋を開けてみたら、これまでの記事は、全て「仕事ネタ」になってましたw
そんなわけで、今回こそ「趣味ネタ」として、まずは「F1」について書こうと筆を執ったのですが、やっぱり趣味のF1を観ていても、つい「この組織(F1チーム)の人事配置やマネジメント体制はどうなっているんだ?」などと職業病が出てしまうんですよねw
結局、私の目を通すと、趣味ネタであっても「人事」や「組織マネジメント」の話に繋がってしまうことが多いようです(苦笑)
そこで今回は、そんな「F1オタク」&「人事オタク」の視点から、今のF1界を騒がせている「ある事件」を語ってみたいと思います。
本記事の”主人公”はF1界の超有名人ですが、普段F1をご覧にならない方にも「組織論」として少しでも面白いと思っていただけたら嬉しい限りです。
リーダーの言動に感じた、人事屋としての「違和感」
ということで、、先週から、待望の今シーズンの「F1」が開幕しました。
私は、中嶋悟さんの時代から、基本的には”日本人ドライバー推し”なのですが、残念ながら、今年からまた日本人のレギュラードライバーが不在となってしまいました。
ですので、昨年までに比べると、かなりモチベーションはダウンしているのですが、とはいえ、今シーズンは、「アストンマーティン」が初めて「ホンダPU」とタッグを組む初年度ということもあり、それなりに期待していました。
が、、、これまた残念ながら、プレシーズンテスト含め、船出としては悪夢のようなカタチでのスタートとなってしまいました。
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そして、その大苦戦の結果に、さらに傷口に塩を塗った、あるいは、火に油を注いでしまったのが、あろうことかアストンマーティンのチーム代表であるエイドリアン・ニューウェイの言動です。
F1を観ている人であれば、既に皆さんご存知のとおり、、、ニューウェイ氏は、コンビを組むホンダを公然と批判しました。
しかも、自らが設計を主導した「シャシー」に関しては「問題ない」、と”自己保身”もセットで話しているようですw
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まぁ、ホンダ側にも間違いなくそれなりの”非”はありそうですが、だからと言って、シーズン初戦となる船出の段階で、自チーム内の不振を、チーム代表ともあろう方が、自身の責任についてはほとんど述べずに、公然と、チーム内のパートナー(ホンダ)だけに責任を擦りつける(ように私には聞こえる)言動をするのは、トップマネジメントとしては失格の烙印を押されても仕方ないのではないかと思いました。
下記記事の内容を信じれば、、早い段階でこの騒動に釘を刺したのは、F1最高経営責任者のステファノ・ドメニカリです。
このドメニカリさん、かなり知的な匂いがする方ですが、まさしくこの方が言っていることは「おっしゃるとおり」だと思います。
(ちなみに、私のこのブログ記事末尾のYouTube動画にもドメニカリさん、登壇されております)
今回のニューウェイ氏のホンダ批判は、先日日本中が沸いたフィギュアスケートの「りくりゅうペア」に例えるなら、、、仮に、あくまでも「例えば」の話ですが、、オリンピックで、りくりゅうの三浦選手(もしくは木原選手)は全く問題無く演技したのに、一方の木原選手(もしくは三浦選手)が大きなミスをし、結果的に大敗を喫した、みたいなことが起こったとして、それを受けたブルーノ・マルコットコーチが記者会見で、
「三浦は全く問題無かった。もちろん、私の二人に対するこれまでの指導育成にも全く問題は無い。ただ、木原が大きなミスをしたことによって我々は負けた。残念だ」
と大々的に発言するようなものですよねぇ。
もちろん、実際に、りくりゅうペアにそんなことがあったとしても、人格者に見えるマルコットコーチがそんなこと言うはずがないと思いますがw
今回のニューウェイ氏のホンダ批判を受け、当然のことながら、直近のネット記事は、以下のような内容で溢れています。
「誇り高き日本企業に責任転嫁する言動は問題だ!」豪州GPアストンマーティン「大惨事」最悪結果にPU供給のホンダと早くも「決裂説」が流れる…代表の批判発言が騒動となる可能性も
まぁ、そりゃそうでしょうね、、という感じですね。
「名デザイナー、名監督にあらず」〜向き不向きという「人事の難しさ」〜
人事目線でいくと、今回の件で、あらためて痛感したのは「適材適所」という言葉の重みです。
私が本格的にF1を観るようになったのは1988年頃ですので、かれこれ40年近く観てきたこともあり、ニューウェイ氏のことは、昔からよく見聞きしてきましたし、凄いデザイナーなんだろうな、と一目置いておりました。
彼の功績は下記のような記事を見ればよく分かると思います。
デザイナーとしてはF1史上、最も成功した人物の一人であることは疑いようがありません。
と同時に、どこからどう見ても、人前に出ることを好むようなタイプではなく、”舞台裏で黙々と働く職人気質(コミュニケーションはあまり得意としない)”的な印象を持っておりました。
(本当にそういう人なのかどうか確証は持てませんが(笑))
ですので、昨年、ニューウェイ氏がアストンマーティンのチーム代表に就任したというニュースを知った時は、私も、ただただ驚きました。
F1界に衝撃与えたニューウェイのアストン代表就任ニュース。でも本当にそうなるの?……さらなる体制変更の“序曲”という可能性も
「名選手、名監督にあらず」という格言どおり、ニューウェイさんにはチーム代表的ポジションは向いてないだろう、と素直に思いました。
そして今回、「早速、やっぱりこうなったか」という感じです。
もし、今回、同様の不振があったとしても、アストンマーティンのチーム代表が、例えば、トト・ヴォルフやクリスチャン・ホーナーだったとしたら、彼らは彼らで、お互い、狐と狸みたいな感じではありますが(笑)、故に、もうちょっと上手にコメントしていたと思います。
最近の流れとして、F1のチームオーナーには、ローラン・メキースやジェームス・ボウルズ、小松礼雄さんといった、”技術者あがり”の方が就任するケースが増えており、少なくとも左記のお三方は、トップマネジメントとしても非常に優秀と言いますか、コミュニケーションが上手いなぁ、と感心して見ております。
特にF1チームのような組織であれば、重要なスタッフの多くは技術屋さんでしょうから、仕える側のチームメンバーとしても、技術がわからない人がトップに立つよりは、技術もわかって、しかもマネジメントも上手くできれば、色々な話が通じやすいため、それに越したことはないでしょう。
このように、”技術者あがり”であっても、「名選手、名監督にあらず」に反するような”成功例”も少なからずあるとは思いますが、翻って、ニューウェイ氏に至っては、典型的な「技術だけで生きていく」という職人気質タイプの方に見えるんですよねぇ。
上記の記事の中に、「ニューウェイは長年、F1チーム全体を指揮するという夢を持っていた」というようなくだりもありますので、それが本当だとしたら、ニューウェイ氏は自ら望んで今回のチーム代表を勝ち取った、ということになりますが。。
やはり人には、生まれ持った「向き・不向き」というものは、私は「ある」と思っています。
もちろん、「不向き」なのにそれを「たゆまぬ努力」で克服した事例も少なからずあるとは思いますし、そういう事例は素晴らしいと思いますが、、それでも「向き・不向き」というものは存在すると思いますね。
こと「管理職」という役職は、人格的な要素が多分に影響するものであると思いますが、人間、性格は、そうそう変わるものではないでしょう(努力してもなかなか変えられない)。
んでもって、最近では、「管理職は罰ゲーム」というフレーズが流行っています。
リクルートワークス研究所記事: 管理職が「罰ゲーム化」した10の要因
これは、一概に、「自分は管理職なんか興味ない。一生、プレーヤーでいきたい(プレーヤーとしての仕事を極めたい)」ということだけではなく、「本当は管理職をやってみたいけど、さほど給料も高くないし、かといって残業代がつかないのにたくさん残業させられるし」みたいな管理職の実態を知ったが故に、管理職になりたくない、と言っている人たちも少なからずいると思われます。
ちょっと話が逸れましたが、「管理職(マネジメント職)」ということにフォーカスすると、やはり、いくら自分が「管理職をやってみたい」と思っていても、
「正直、あなたには管理職は向いていない」というケース(「パターンA」とします)
があると思いますし、逆に、
自身としては「管理職になどなりたくない」と思っていたとしても、周囲の人たちからは「この人は管理職に向いている!」と思われるケース(「パターンB」とします)
もあるでしょう。
パターンA・パターンBとも、このような人たちを無理やり管理職にしてしまうと、いずれ「本人」にとっても、「その部下となる人たち」にとっても、そして「その組織(会社)」にとっても、不幸になってしまいかねません。
ただ、もし「パターンB」、つまり、
「本人は『私は管理職になんか向いてない』とか『私は管理職になんか興味ない』と思っていたとしても、周囲から請われて管理職になる」
というパターンは、本人さえ、考え方をシフトチェンジし、「よっしゃ、いっちょ管理職として頑張ってみるか」という気になれば、少なからず成功するケースがあると思っていますし、実際に身近でも、そういうケースを見てきました。(経験上、特に「女性」にそのケースが多いと思っています)
一方、「パターンA」、つまり、
「本人は管理職をやる気まんまんだが(笑)、性格や考え方が管理職には向いていない人」
を管理職にしてしまうと、特に、その人の「部下」となる人たちにとっては不幸が待っている可能性が高いと思います。
ちなみに、「管理職に向いていない人ってどんな人?」と、AIに「10個挙げてくれ」と聞いてみたところ、下記のような答えが返ってきました。
他責思考と自己正当化:非を認めず、悪いことは全て周りや環境のせいにする
過剰な功名心と特権意識:成功は自分のおかげ、失敗は部下の責任だと考える
共感性の欠如と人間への無関心:人を「駒」として扱い、他人の感情や成長を軽視する
自分の正解を譲らない頑固さ:他人の意見や批判を拒絶し、自分のやり方を押し通す
不機嫌を武器にする情緒の不安定さ:感情をコントロールできず、周囲に過度な気を使わせる
決断から逃げる事なかれ主義:嫌われるのを恐れ、責任の矢面に立つことを避ける
メタ認知(客観視)の欠如:自分の言動が周囲にどんな悪影響を与えているか無頓着
言葉を尽くさない言語化の放棄:指示や意図を説明せず「言わなくても分かるはず」と過信する
恐怖で人を動かそうとする支配欲:対話ではなく、威圧やマウントで人を従わせようとする
チームを守れない交渉力のなさ:上層部や他部署との調整において、部下を盾にしたり主張を引っ込めたりする
この問い(「管理職に向いていない人ってどんな人?」)に「絶対の正解」というものは無いと思いますが、個人的に、上記10個の内容は、どれもほぼ違和感ありません。
ちなみに今回のニューウェイ氏のケースだと、特に1番と2番が過剰に出てしまったのかもしれませんね。
もちろん、完璧な人間はいない、ということと同じで、「完璧な管理職」などいないと思いますんで、色々なタイプの管理職がいていいと思うのですが、上記に挙げた10個のうち、ほとんど該当してしまうような人や、あるいは、例え数個しか該当しなくても、その該当の度合いが極端に強い人などは、管理職には向いていないと言っていい可能性が高い気がします。
問われるべきは「任命責任」〜組織の命運を分ける設計図〜
そして、今回のニューウェイ氏のように、問題発言や問題行動を取った人がいると、どうしてもその「本人(今回で言えばニューウェイ氏)」にばかり眼がいきがちですが、「適材適所」という観点で、最も責任を問われるべきは、私は「任命者」だと思っています。
よくあるのが、「自分にゴマゴマスリスリしてくる部下が可愛くて、その部下の『管理職としての適性』よりも『可愛さ』が優先され、出世させてしまう」みたいな事例ですね。「出世」だけでなく「人事評価」も然りです。
もう数えきれないほど見てきました(苦笑)
まぁ、10名程度の企業であれば、”仲良しこよし”のメンバーでやる、というのは全然ありだと思いますし、むしろ仲良しメンバーでやっておられるケースのほうが多いと思いますが、会社規模が50名とか100名を超えてくると、「仲良し」とか「好き嫌い」で人事を決めていては、おそらく早晩、組織として機能しなくなっていくと思います。
特に、短期的な「人事評価」以上に、「昇格」や「管理職登用」のようないわゆる「出世」については、その会社の多くの社員が”注目”していますから、「なんであんな人が管理職に」みたいなケースが多発すると、やはり組織としてはいずれ崩れていくと思います。
ニューウェイ氏の話に戻すと、おそらく、昔からF1を熱心に観ている人であれば、今回のニューウェイ氏の「チーム代表就任」ということに、驚かれた人が大勢いると思われます。
「え? 彼には荷が重すぎるのでは・・?」と。
そして、そのニューウェイ氏をチーム代表に任命したのは、おそらく、アストンマーティンF1チームのオーナーであるローレンス・ストロールということになるのでしょう。
息子のランス・ストロールのレギュラーシートは「永久契約」とも言われたりしていますし(笑)、ローレンスさんの選球眼やいかに、というところではありますが、、、まぁ、ローレンスさんのように「オーナー」の場合は「全権掌握」でしょうから、結局”何でもあり”になってしまうのが歯がゆいところですね。。
そして、最後に「ホンダ」に目を向けますと、、先日、2026年3月期連結決算で、純損益が4200億~6900億円の赤字(従来予想3000億円の黒字)に陥る見通しであることも発表されました。
巨額の赤字という逆風、いわば、泣きっ面に蜂のような状況で対応にあたる、ホンダのF1チームのスタッフの皆さんは本当に気の毒ではありますが、今シーズンの船出の瞬間に放たれたニューウェイ代表の言葉が、現場の士気や今後の信頼関係にどれほど影を落とすでしょうか。
結局のところ、どんなに莫大な資金を投じ、最高級の「部品(才能)」を揃えたとしても、それを動かす「設計図(人事配置)」が間違っていれば、組織というマシンは本来のパフォーマンスを発揮できません。
稀代の天才デザイナーであるニューウェイ氏を、あえて「管理職(チーム代表)」という、彼の資質とは異なるのでは?と思えるような椅子に座らせたアストンマーティンの選択。
これが「適材適所」の失敗例として語り継がれるのか、あるいはここから奇跡のリカバーを見せるのか。
もちろん、我らが日本を代表する「ホンダ」が関わっている以上、アストンマーティンには成功してほしいのは言うまでもないのですが、、、一人のF1ファン、そして一人の人事パーソンとして、今後も「人事の眼」を光らせながら注視していきたいと思います。
あ、最後になりますが、、本記事の途中に挙げた「管理職に向いていない人 10選」を読んで、私自身、このまま管理職をやり続けていくことの自信を大きく失ったのは言うまでもありません(笑)
ということで、本日は、「趣味ネタ」の皮を被ったガッツリ「仕事ネタ(人事ネタ)」をお届けしました(笑)
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