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コラム35確認待ち組織が生まれる理由

「それ、社長に確認してから進めます」

一見すると、丁寧な言葉です。
慎重に見えます。
組織として安全に動いているようにも見えます。

けれど、承継後の会社や第二創業フェーズの会社では、
この言葉が増えた瞬間に、組織は少しずつ止まり始めます。

・社長に確認しないと進まない
・幹部が判断しない
・現場が自分で決めない
・小さなことまで社長に上がってくる
・結果として、社長だけが疲弊していく

もし今、こうした状態が起きているなら、
問題は社員の能力不足ではないかもしれません。

多くの場合、原因は、
「どこまで自分で決めていいのか」が見えていないことにあります。

確認待ちは、責任感のなさではない

経営者から見ると、確認待ちの社員はこう見えます。

「もっと自分で考えてほしい」
「なぜ毎回聞いてくるのか」
「幹部なら判断してほしい」

その気持ちはよく分かります。

しかし現場側から見ると、別の景色があります。

・勝手に決めて怒られたくない
・前は良かったのに、今回はダメと言われた
・判断基準が分からない
・どこまで任されているのか曖昧
・結局、社長の好みに合わせるしかない

つまり、確認待ちは怠慢ではなく、
「判断基準が見えない組織」で起きる防衛反応なのです。

確認待ち組織が生まれる3つの理由

1. 判断基準が言語化されていない

社長の頭の中には、判断基準があります。

利益が残るか。
既存顧客との関係に悪影響がないか。
キャッシュが先に出すぎないか。
今やるべきか、後回しでよいか。

しかし、それが言葉になっていない。

すると現場は、
「社長ならどう考えるか」を推測するしかありません。

この状態が続くと、
現場は判断するより、確認する方が安全だと学習します。

2. 権限の範囲が曖昧

例えば、こんな会社があります。

・5万円の備品購入も社長確認
・値引き判断も社長確認
・顧客への回答も社長確認
・採用面接の日程調整も社長確認

これでは、社長が詰まります。

問題は、社長が忙しいことではありません。
小さな判断まで社長を通る構造になっていることです。

本来は、

・金額で決める
・顧客影響度で決める
・粗利率で決める
・例外条件で決める

といった基準を置けば、現場で判断できることは増えます。

3. 失敗した時の扱いが決まっていない

確認待ち組織では、失敗が重く扱われがちです。

一度ミスをすると、
「だから確認しろと言っただろう」
となる。

すると現場は、二度と自分で判断しなくなります。

大事なのは、失敗を責めることではなく、
「次から何を基準に判断するか」を残すことです。

失敗を判断基準に変えられる会社は強くなります。
失敗を責任追及で終わらせる会社は、確認待ちが増えます。

社長が抱え込むほど、組織は考えなくなる

皮肉なことに、社長が責任感を持って頑張るほど、
確認待ち組織は強化されます。

社長が全部見る。
社長が全部決める。
社長が全部修正する。

すると現場は、こう学びます。

「最後は社長が決める」
「自分で考えても、どうせ修正される」
「だったら最初から確認した方が早い」

これは人の問題ではありません。
学習された組織行動です。

だからこそ、必要なのは、
「もっと主体的に動け」
と叱ることではありません。

必要なのは、
判断できる構造を作ることです。

確認待ちを減らすために必要なこと

まずやるべきことは、難しい改革ではありません。

1. 判断基準を3つに絞る

例えば、営業判断なら、

・粗利は残るか
・既存顧客との関係を壊さないか
・入金条件に無理がないか

この3つだけでも、現場の判断はかなり変わります。

2. 金額基準を決める

例えば、

・3万円未満は担当者判断
・10万円未満は部門長判断
・10万円以上は社長判断

このように線を引くだけで、確認の量は減ります。

重要なのは、完璧なルールを作ることではありません。
まず仮で線を引き、運用しながら直すことです。

3. 判断後の振り返りをする

任せるだけでは危険です。
任せた後に、振り返る場が必要です。

・その判断は何を基準にしたのか
・結果はどうだったのか
・次回も同じ判断でよいのか
・例外条件はあるか

この振り返りによって、現場の判断精度が上がります。

任せるとは、放置することではありません。
判断の練習機会を設計することです。

確認待ちが減ると、社長の仕事が変わる

確認待ちが減ると、社長は楽になるだけではありません。

社長の仕事が、
「処理」から「設計」に変わります。

・個別判断をする
から
・判断基準を作る

・細かく確認する
から
・例外だけを見る

・現場を動かす
から
・現場が動く仕組みを作る

この変化が起きると、会社は強くなります。

なぜなら、社長がいなくても小さな判断が回り始めるからです。

まとめ

確認待ち組織は、社員のやる気不足で生まれるわけではありません。

多くの場合、

・判断基準がない
・権限範囲が曖昧
・失敗時の扱いが決まっていない
・社長が全部抱えている

この構造によって生まれます。

だから、解決策は精神論ではありません。

必要なのは、
「誰が、何を、どこまで決めてよいか」
を整理することです。

もし今、

「全部自分に確認が来る」
「幹部が判断しない」
「現場が動かない」
「会議では決まるのに、実行で止まる」

そう感じているなら、
一度、会社の判断構造を整理するタイミングかもしれません。

60分の壁打ちでも、
確認待ちが起きている原因はかなり見えてきます。

・どこで判断が止まっているのか
・誰に権限が集中しているのか
・何を現場に任せられるのか
・どんな判断基準を作るべきか

“社長が頑張る会社”から、
“現場が判断できる会社”へ。

その第一歩は、
確認を減らすことではなく、
判断できる状態を作ることです。

※事例は一部加工しています。実在の企業・人物とは関係ありません。

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熊谷 篤(くまがい あつし)
実戦経営アドバイザー/中小企業診断士

年間400件以上の経営相談に対応。
承継後3年以内の後継者・創業者・第二創業の経営者を中心に、
現場で「考え、決め、動ける状態」をつくる伴走支援を行っています。

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