未知試料に含まれる物質を推定する実験で学生たちの技能の向上を確認していく
はじめに
このところ大学1年生を対象に面倒をみる。専門領域の内容や研究室の雰囲気を感じてもらおうと講義の合間をぬって、さまざまな研究内容の説明を聞いてもらい、基本のさまざまな技術や実験で手を使い、体を動かして、これまでの知識に偏りがちだった部分の是正を行う。この場にまだ慣れていない学生たちはどんなふうに感じるのか。
きょうはそんな話。
梅雨のさなかに
雨つづきのなか交通機関に遅れが目立ち、朝の1時限の始まる間際は学生たちからの「遅れます」の連絡がちらほら。この2時間ほど前に職場にたどりつき、実験の機材や試料の準備にとりかかり、必要に応じてあらかじめひと通り実験してみて、想定通りに進むかどうか確かめておく。1~1.5時間でやれることは限られるが、今日は先週までの内容が身に付いたか確認できる内容。各自に中身の違う未知試料を渡して、何かを推定してもらう実験。ひとりひとり前月でやったことが身についたか如実にわかる。
前の時間に白衣、防護メガネ、上履き持参を何度か伝えている。こちらもわが身を振り返りつつ、きっとひとり暮らしの学生さん達は、雨続きで白衣の洗濯がたいへんかもしれないとふと思った。しかし安全上の譲れないところは妥協せずに、いつもにも増して必ず触れた上で取り掛かる。
化学実験は、緊張感を保ちつつ滞りなく完結させることが肝心。扱いようによってはさまざま起こるので油断は禁物。それなりの出で立ちや心構えは何をやるにも大切。
折りに触れて
実験を進める途中でも、さまざま安全上の対策やうまく進めるコツなどひとつひとつ印象に残るようにまずはやって見せる。最初はまねるように指示していく。聞くだけと実際にやってみるのとは大違い。勘の今ひとつの学生を見つけると、よりわかりやすくこちらがやりながら説明し、そのあとやってもらいできるかどうかを確認する。
ひとりひとり滞りなく期待するレベルに到達させつつ、次回ほぼ同じ操作を復習できるテーマを組んでいる。こうしてやってきたおかげで、ひとつひとつの技術の習得にどのくらい時間がかかるのかある程度把握できる。多少のことがあってもたいてい時計を見ずともほぼその想定時間内で終わるもの。
スキルアップ
サポートする立場で何度も経験してきた内容でもやはり新たな発見があるし、より再現よくうまくやれる方法を会得できる。そこまでは、学生ひとりひとりが身につけるスキルや感覚の違いは明らか。会得できるまでの時間も違う。それは何も化学や生物の実験に限らない。
普段の生活のなかでさまざま身につけること、たとえば道具の扱いもそう。いろいろやって手先の感覚が備わっているか、安定しているかどうかはわりとわかりやすい。じつに千差万別で人それぞれちがう。
普段から
ひもを結ぶとか鉛筆を削るなど、人によっては「やったことがない」レベルは違う。実験器具の扱いや洗う際の手元を見ていると、今はまだ恐る恐るやっているに過ぎない。ところが、熟練してくる2年ほど後にはひとりひとりがガラス器具を組み立てて蒸留したり、何桁もの精度で微量の物質の量を計測したり、高度な機器で分析をしたりできるようになる。
それまでの間に、たとえばガラス器具を安全に扱うコツやどうやると割らずに済み、元通りにきれいにできるか、やりながら(なかには割るなどの失敗を経ながら)身につけていく。その過程で「消耗品」として人数分ほどのガラス器具を準備しておかないと追いつかないわけだが。
おわりに
どの学生も身についたか知りたいのは確か。その機会をなるべく多く提供するのはこちらの役目。4年間でどこの大学院に進んでも、あるいは社会に出ても通用する「お墨つき」が学士の資格。この分野の基礎基本を身につけたという証拠。そうなれるまで面倒をみていく。
意欲をもち入学したのだから、熱いうちに鍛えたい。若いからこそスポンジが水を吸収するように上達するし、わたしなどをあっという間に凌駕していく。ここを訪れるだれもがそうなってほしいし、独り立ちしてほしいと願う。
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