見出し画像

ミニピン16歳、がんサバイバー。アトピーの乱〜柏原芳恵のタオル〜

これは、コロナ後遺症で歩けなくなった48歳男が、
人生ハードモードの中でなんとか笑いを見つけた話のシリーズです。
今回は、愛犬ぴんこの話。
しんどい状況でも、少しだけ笑って息をしたい人に読んでもらえたらうれしいです。



いま、ぴんこは柏原芳恵のタオルを首に巻いてスヤスヤ寝ている。
……話はそこに至るまでが長い。


愛犬ぴんことは、我が家のヒールなアイドル、ミニチュア・ピンシャー16歳のおばぁちゃん犬だ。
去年、余命10ヶ月との宣告を受けて、まもなく11ヶ月目に突入するがんサバイバー。

薬のおかげか、尿道にできた腫瘍の大きさはあまり変わらず、獣医師も驚いている。
5月くらいまでは16歳ともがんサバイバーとも思えないほどの元気っぷりだったが、突然両目に潰瘍ができ、視力がほぼない状態になってから年齢相応のおばぁちゃん犬になった。


生まれつき肌が弱い、アトピー体質だ。
しょっちゅう身体を掻いている。そして舐めている。

足先をよく舐める。
ぴんこの場合、いったん舐め始めると止まらない。無限ループ状態に入る。
舐めすぎて毛が抜け、肌が荒れてしまう。そこから細菌感染して、腫れ上がったこともある。
薬でかゆみを抑えていたのだが、たまにナメナメスイッチが入ると、まぁ止まらない。

そのナメナメが、がん治療を始めてからまた復活してしまったのだ。
腫瘍のための薬が、そのかゆみの薬と相性が悪く、やめた方がよいとの判断で別の注射に変えた。


だが、舐める。

べろべろべろべろべろべろべろ……ハァハァ(息継ぎ)…べろべろべろべろべろべろ……

無論、足は荒れた。
血は出るし、腫れるし。カーペットも布団も血みどろだ。

エリザベスカラーという手もあるのだが、ぴんこは鼻先が長い。
大きいものじゃないと長さが足りず、届いてしまう。
大きいものを買った。長さは足りるがこれじゃ重くて歩けない。
プラスチックではないソフトタイプの普通サイズを買って、カスタムすることにした。
妻は裁縫が得意だ。
芯の強くした布を、鼻先が出ないように7cmほど延長して縫い合わせた。
完璧なサイズ。これなら大丈夫。

装着。


…べろべろべろべろべろ。

ぴんこは器用にカスタム部分を折り曲げて舐めている。
ぴんこが上手だった。

無理だ。
カラーは諦めた。

なにかほかに手立てはないか…。

ワンちゃん用靴下を見つけた。なるほど。早速ポチり。
ぴんこのことになると、財布より「しょうがないか」が勝つ。

靴下を履かせる。おお、良い感じ。
これでもう直接舐めることはなくなった。
よかった、一件落着。


…べろべろべろべろべろ。

靴下がベッチャベチャ。

そうきたか。
脱がすと、足がふやふやになっている。

なぜそこまで舐めたい?!

新しい靴下に履き替える。

そうだ、苦いやつを吹きかけよう。
しつけ用のスプレーで、家具など齧ってしまわないようにするためのものだ。
これで、大丈夫。


…べろべろべろべろべろべろべろべろべろべろ…べ…………げろぉおおおぉおおおおおぉ〜。

吐いたー!
苦いのを舐めて、気持ち悪くなったようだ。

ぴんこよ、何がお前をそうさせる!?

くそぉ、諦めるもんか。

靴下自体の効果はゼロではない。追加でポチった。
夜中は眠気の方が勝ってか、執拗に舐めることは少なかった。


ぴんこ、おはよう……


……あ〜あ。

噛みちぎって、靴下が無惨な姿に。

頼む!ぴんこ、治させてくれ!
これは、救いたい気持ちとお世話を楽にしたい気持ちの両方だ。

だが、人間の熱量とは裏腹に本人(本犬)は全く協力する気がない。

むしろ怒っている。
たまに「ヴゥ〜〜〜〜〜(怒)」って言うし。


よし!人海戦術(二人)だ。
幸いボクは在宅勤務で、妻は在宅妻。
交代で見守ろう。

舐め始めたら、遮る。
また舐め始めたら、遮る。

なにかのゲームみたいだ。

いやいや、この反復がしんどい。
在宅とはいえ、仕事もしなければならない。

忘れつつあるが、ボクも一応病人だ。障害年金をもらうほどの。
老老介護ならぬ、病病介護状態ww

wwじゃない。笑えない。


舐め始める前に防ぐ、という作戦が閃いた。
ぴんこが座る瞬間、毛布で胴体をぐるぐるっと覆う。
ぱっと見、生首。
カラーをしていれば、それはまるで野に咲く花のよう。

ボクが食器洗いをするときにはそうして凌ぐ。

ボクが洗っている。
ぴんこは生首状態で、顔を上げてこっちを見ている(見えてないのだが)。
目が合う(見えてないはずなのだが)。
一応笑顔で返す(見えてないけど)。
ぴんこはゆっくりとボクから目を逸らし、毛布をかき分け……舐めた。

おい!

ぴんこもバカじゃない。
すぐに慣れて、毛布の境目や端から足にたどり着けるようになった。

そんな攻防戦が、毎日続く。


なかなか足の荒れは引かない。
あまり舐めない足まで毎日血みどろだ。
そこでようやく気づいた。
靴下が擦れて悪化しているのかもしれない。

……もう訳がわからん。

獣医師にこの状況を伝えると、エリザベスカラーを勧められた。

また戻った。
ただ、病院で販売しているものなので、サイズ調整ができた。
さらにコツも教えてもらった。
首にタオルを巻いて、カラーをするとずれにくくなるとのことだった。

なるほど!それはいいことを聞いた。

帰ってさっそくやってみる。

フェイスタオルでは大きい。
ハンドタオルくらいがいい。

思い出した。
ボクが大学生の頃、100均で買った柏原芳恵のハンドタオルがあるじゃないか。

ここで誤解しないでいただきたい。
ボクは80年代のアイドル柏原芳恵さんのファンではない。
大学生だった頃にはアイドルとしてのピークはすでに過ぎていた。

たまたま100均で見つけた、シティポップ風デザインのタオル。当時は絶妙にダサく見えて、ウケ狙いで購入した。今なら一周まわってオシャレなのかもしれない。
そのまま使わずに眠り続けていたのだ。
そう、デッドストックというやつだ。当人には失礼極まりない話ではあるが。

ということで、柏原芳恵の顔と名前のローマ字が斜めに入ったタオルが時代を超えて、いまぴんこの首に。
30年前の伏線回収というわけだ。違うか。

結果、成功。

舐めなくなった。よかった。
めでたしめでたし。

…じゃなかった。

ぴんこは夜、布団にくるまって寝る。ところがカラーをつけてると自分でくるまれない。なので夜中は妻が見守り、起きるたびに逐一布団をかけることに(コロナ後遺症は睡眠が肝なので、妻がボクに睡眠を優先させてくれた)。
あと、プラスチックのエリザベスカラーなので、耳が当たって毛がなくなり、耳の裏から出血した。
熱がこもり顔まわりが蒸れて、耳の中には菌が。
そして、夜中に起こされ続ける妻まで体調不良に。
なのでカラーは外し、再び見守り戦術へ。


………あぁ、また舐めてる。


以上、アトピーの乱。
ほかにも、目薬の乱、投薬の乱がある。
……まだまだ続く。

だって、生きているんだもの。



━━━━━━━━━━━━━━━━
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
よかったら、こんな記事もどうぞ。

▼この話が面白かった方はこちら
👇ぴんことボクの特別な時間の話

▼ボクのコロナ後遺症の治療迷走記
👇ぴんこのトイレシートを、ボクのオムツ代わりにした話

▼全体象を掴みたい方へ
👇絶望って笑えるんだなぁって話


▼コロナ後遺症シリーズはこちらのマガジンで
最初から読みたい方は、「古い順」からどうぞ。


▼一覧から記事を選びたい方はこちら
サイトマップ作成中…🙇
━━━━━━━━━━━━━━━━

いいなと思ったら応援しよう!