犬用トイレシートを股に挟んで、ボクは「宇宙の気」に会いに行った〜治療迷走記〜
これは、コロナ後遺症で歩けなくなった48歳男が、人生ハードモードの中で
なんとか笑いを見つけた話です。
しんどい状況でも、少しだけ笑って息をしたい人に読んでもらえたらうれしいです。
僕は犬用トイレシートを股に挟んで、高速道路を走っていた。
目的地は東京の気功院。
「宇宙の気」でコロナ後遺症を治すらしい。
もちろん半信半疑だ。
だが、僕はコロナに罹りほぼ歩けない身体になっていた。
人は、追い詰められると、宇宙にすら頼る。
2026年1月でコロナ感染し後遺症になって4年が経った。
が、まだ歩けない。正確には1日1000歩くらいがリミット。それを超えてしまうとスペシャルな倦・怠・感♡や、脱・力・感♡に襲われ、絶望と後悔で闇堕ちしてしまう。
2022年の感染以降、倦怠感があるのがデフォルトだ。
夜、布団に入る時はディズニーシーに早朝から行って1日めいっぱい遊んで、電車で2時間かけて帰って来たくらいの疲れを感じながら寝る毎日。
症状は倦怠感だけではなく、めまい、しびれ、吐き気、頭痛………めんどくさいから割愛するがたくさんあるのだ。200種類くらいあるらしい。
まぁ、とにかく大変だからこの苦しみから逃れたい、そのことばかりを考える毎日。病院には3カ所受診している。いままで全部で10カ所以上お世話になった。でも検査してもこれといった異常がみつからないのだ。
定期的にしている血液検査で数値に変化があると、むしろ喜ぶ。なにか問題がみつかったかもしれない、てことは治せる、やったぜ!と。でも結局のところ根本の原因には辿り着けない。
世の中にはボクと同じような人がいて、同じように悩んでいる。
SNSでは日々あらゆる情報が飛び交っていて、あのサプリが効いたとか、未承認薬で良くなったとか、こんなセルフケアグッズが効果的とか。
でも、未知の病は人それぞれ、千差万別。その人に効いたものがボクに効くとは限らない。……でも、もしかしたら効くかもしれない。試さないとわからない。
万に一つ効いたかもしれないのに、試さなかったとしたらもったいない的な思考に陥り、新情報→試す→効かない→新情報→試す→効かない……を繰り返す散財ボディ。
後遺症1年目の頃、西洋医学に見捨てられかけた(と勝手に思っていた=拗ねていた)ボクは、東洋医学にたどり着く。鍼灸、整体、指圧、カイロなど調べるといろいろある。ただ、ボクの身体は未知なのだ。
とりあえず検索検索。
意外とたくさん出てくる。近所にもある。しかし、ただ腰痛を治すのが得意なところに行ったってしょうがない。すると口コミにコロナ後遺症に効いたなんて書いてあるところがあった。なるほどね、検索にヒットしなくてもそんなところにいい情報が。それからボクは毎日口コミ探しの旅に出た。
そのいくつか受けた中で、今回は気功の体験を紹介してみる。
いい口コミ発見!
ボクに似た症状の人が良くなったと書いてある。
しかもその投稿者は四国から東京までわざわざ施術を受けにきているそうだ。なんだか説得力あるぞ。その人を大変だなぁ…なんて同情している余裕はない。自分もその施術を受けたい。家から車で2時間だ。まぁなんとか行ける距離(運転は妻、留守番が苦手すぎるハイパーセンシティブ愛犬ぴんこのお相手は義母に)。予約を取ろう。
正直こんな身体にならなければ、気功術にお世話になることはなかっただろう。なぜなら響きがあやしいし、偽物に騙されそうだ。だがその辺のガードはいま緩くなっている。背に腹は変えられないと言い聞かす。予約を取った、いざ行かん。
2時間の移動には、ちょっと気になることがある。
医者から水を毎日2リットル飲むように言われていて、実践している。
そう、トイレが近いのだ。
1時間に1回は確実。2回の時もある。
途中でコンビニに寄ればいいじゃないかと思うが、ほぼ高速道路での移動になるのだ。サービスエリアがあるじゃないか…それも加味した上で困っている。サービスエリアの数はコンビニほどはない。下の道で行くなんてのは時間がかかりすぎる。
……オムツを考えた。
オムツかぁ…。40年以上履いてない。しかも自分で履くのは初めてだ。…いや、もう少し考えよう。ほかになにか方法はないのか。オムツってモコモコするじゃない。上からズボンを履くわけで。あのなんとも言えない異形なシルエット。
この後に及んでプライドが…。プライドよりも優先すべきことがある身体なのに。プライドって奴はボクが何よりも望んでいる健康への邪魔すらするのか。
気功術もオムツのまま受けるの?その前に着替えるの?
やはりプライド側のボクには抵抗があるようで、言い訳をいろいろ考える。そこで、ふと思いつく。
そうだ、トイレシートがあるじゃないか。犬用の。
わんちゃんが屋内でオシッコするときの吸水シート。愛犬ぴんこのを拝借しよう。それをパンツの中に忍ばせて、施術前にパッと取り出せばいい。最適解。今度こそ、いざ行かん。
施術は1コマ1時間。電話で予約した時、症状と状況を伝えると2コマ押さえてくれた。しかも開店前だ。その院は予約が取りづらくて2コマは難しい。ただ遠くから時間をかけて来ることと症状の具合から、先生がそう気遣ってくれたのだ。なんともお優しい。
実際には移動に3時間半かかった。
都内の渋滞だ。余裕を持って出たが遅刻確定。道中のサービスエリアは2カ所しかない。もちろん2カ所とも寄って、用も十二分に足した。ただ3時間半で2回は足りなかった。トイレシートは装着済み。でもなるべく使いたくないのが本音。だって、トイレシートだよ。オムツじゃないからヨコ漏れしたりするかもしれない。いやその点は大丈夫、トイレシートの長方形を活かして、うまいことポークビッツとお稲荷さんを丁寧に包んである。それに念の為、替えのパンツも用意していたから。
渋滞を抜けてあと20分。
あとちょっとだ。でも、あとちょっととわかるとしたい気持ちが湧いて来る。我慢していた。そもそも遅刻ってのも…せっかく時間を確保してくれたのに。「お気をつけて、ゆっくりいらしてください」遅刻する旨の電話をしたらやっぱり優しかった。気功最高!ただ時間はもったいない。施術時間がどんどん減っていく。
高速を降りてあと10分。
急にボクのアンモニアーズの波がスッと引いた。行けるぞ。もうコンビニなんかに用はない。このままノンストップで気功へGOだ。あと5分。そこで突然アンモニアーズが外へ出たいと騒ぎ始めた。やっばい。ゾワゾワが顔まで満たされる。これはモームリだ。身体に悪い。意を決した。トイレシート型オムツに出してしまおう。膀胱炎とか病気を増やしては元も子もない。
よし出すぞ、出すぞ……出した。
出た?
いや、出そうとした………出ない。
前頭葉がOKの指示を出したのに排尿してくれない。なにが起きている?自律神経がOKを受け入れない。完全にバグってる。我慢しすぎたんだ。おい、出ていいんだぞ!規制線解除せよ!ポークビッツがスンとした顔をしているのが目に浮かぶ。結局出ないまま到着。全力でトイレに駆け込み(とはいっても初期型ASIMOスタイルの全力)フィニッシュ。
やっと院に着いた。
そして気功術師の大先生に会うことができた。普通のおじさんだ。お顔もお優しい。残りの時間は1時間だった。
先生は、ボクに手をかざすだけで具体的な症状や苦しみを見抜いた。機序も明確に説明してくれた。過去には「気にしすぎだ」といって突っぱねられた病院もあったが、こんなにも理解されたのは初めてだ。後光が差している。神々しい。尊い。
「もっと早くウチに来れば良かったのに。今まで大変でしたね。大丈夫、良くなりますから。」
と言われて涙が出そうになった。気功超超超最高!
施術は未知だった。
ボクが横になり、先生は目を瞑り、両手を広げて空中に大きな輪っかを何度か作る。
気になって薄目で観察するボク。
なにか呟いている?いや呟いてはない。口が少し動いているだけだ。
すると突然「へぁーっ!」と咆哮してからボクの身体にソフトタッチ。温かいような。そして何度も繰り返す。「へぁ〜〜っ(語尾上がり)」などその時々で微妙なバリエーションがある。
そして先生は合間にブルルルルッと震える。お茶を摂取する。まるで別の生き物が一瞬だけ先生の身体を借りているみたいだった。それは自分を制御しきれないケダモノのようだ。その様子に一抹の不安はよぎるが、これで治った人がいるんだから信じてじっとしていた。
次に先生はボクの頭側に座り、両手をボクの両肩に添える。じっとして動かない。なにか気を流しているのか。先生がボクの顔を逆さまに覗き込むようなポーズになっている。動かない。ボクもさすがに薄目は開けずにじっとする。ぜんぜん動かない。何分たったかわからない頃、驚くべき音が聞こえてくる。
くすぅ〜………く…すぅ〜〜……
…寝息だ。
先生寝てる!
いやわからん、そういった手技かもしれない。
スーパー薄目(1mmくらい)で様子を伺ってみると、先生の顔が寝息と共に、接近したり少し離れたり。絶対寝てる!どうしたらいい?時間がもったいないじゃないか。3時間半かけて来て、1時間遅刻して損してる上でだ。スーパーベタだけど、小さな咳払いをしてみた。スッと頭を上げる先生。あぶないあぶないバレるところだった的な表情に見えた。
終わりに、一応質問してみた。
さっきの輪っかを作る動きは?
「宇宙の気を溜めてます、この部屋も宇宙の一部なのです」……なるほど。
掛け声は?
「出した方が伝わりやすく、出さない時もあります」……なるほど。
身体ブルブルは?
「癖です」……なるほど。
12回通ったが、症状は変わらなかった。残念。
先生を批判するつもりは毛頭ない。自分に合わなかっただけなので。合う人には素晴らしい施術だろう。未知の病に真剣に向き合ってくれ、熱心で優しい対応にも感謝している。
先生、もしこれを読んでいたら、そうですあの時のボクです。あれから行けないままになっておりますが、その節はありがとうございました。
とりあえず、この件については妻が笑っていたから良しとする。
新しい施術を受けて、効果がなければ他を探す検索の旅がまた始まる…の繰り返し。
ちなみにこの時はまだ、大殺界は始まっていない。来年からだ。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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