闇 426(ゾク二十三歳差とデート編)
闇 426(ゾク二十三歳差とデート編)

2025/12/19 fry
前回の章
二千十七年九月十三日、水曜日大安。
本日をもって四十六歳になる。
この日からあと一ヶ月経てば、おじいちゃんの命日。
もう少しであれから三年。
時間が経つのって本当に早いものだ。
頑張ろう頑張ろうと色々やってみたものの、常に空振り気付けば地獄の渦の中にいた俺。
それでも必死に藻掻き足掻き苦しみ、まだ辛うじて生きている。
今の生活に満足かといえば正直まったくしていない。
でも、以前気に入っていた女が、こんな俺の誕生日を共に祝ってくれる現実。
本多麗美華からしてみれば、俺は初めて店で指名をしてくれた客らしい。
二十三歳差という年齢。
それをひっくるめて、彼女にとって特別な何かがあるのだろう。
桜木町駅に夕方六時待ち合わせ。
インターコンチの森田には、六時半から七時には行くよう伝えてある。
昼になるのを待ってからカフェアンジーへ向かう。
フィッシュバーガーがあったので頼んでみた。

値段は千円するので結構割高であるが、バンズからはみ出るぐらいのフライ。
大量に掛かったタルタルソース。
ふんだんに使ったレタスにトマトと玉ねぎ。
見た目もお洒落だし、今度麗美華が川越来る事があったら是非連れてきたいものだ。
「岩上さんがハンバーグ以外のものを注文するなんて、珍しいですよね」
シェフの奥さんの泉さんが、俺の顔を見ながらニコニコしている。
本当に笑顔が妹代わりに可愛がっていたミサキそっくりだ。
「今日は俺の誕生日で、夜は二十代の子と横浜でデートなんですよ」
「えー、それはおめでとうございます。岩上さん、おいくつになられたんですか?」
「もう四十六歳ですよ。それが二十二、三歳の子に祝ってもらうとか、俺も中々ですか?」
「倍ぐらい離れているじゃないですか!」
「俺が初めて横浜行った頃に知り合った子なんですよ。しかも今日はとっておきのインターコンチネンタルホテル使いますからね」
「以前も顔が利くと仰ってましたよね」
昭和四十六年生まれの四十六歳。
うん、そこへ麗美華が近寄ってくる。
運命的な何かを感じていた。
競馬で万馬券当てたとか、ビンゴ5で二等取ったとかじゃない。
人生どん底だったところから、誕生日を迎え一気に上昇気流へ。
ラッキーハウスの連中では、絶対に無理であろうシチュエーション。
まあ新宿のクソ共には、崎陽軒のシウマイや有明ハーバーぐらいの土産は買ってきてやろうではないか。
オカマの木下に崎陽軒など勿体ないが、それでもある程度の平等さは必要だ。
幸せのお裾分けという感じである。
「それではご馳走様でした」
「あー、岩上さん、口の横にタルタルソースついたままですよ。それじゃデート台無しになりますよ」
「そのぐらい分かってますよ!」
俺は口を拭い、時間まで大人しく部屋で待機をした。
あ、シアリス飲んでおこう。
本川越駅ビルペペの中にあるくらづくり本舗で、和菓子の詰め合わせを買っておいた。
女性でこのお菓子を嫌う子はいないだろう。
西武新宿線本川越駅から西武新宿駅まで向かい、あとは新宿駅から湘南ラインで横浜駅へ。
根岸線に乗り換え一駅で桜木町。
時刻は五時三十三分。
ちょっと早く着く過ぎたか。
まあいい。
この時間さえ、今の俺には楽しんで待つ余裕さえある。
久しぶりの横浜の空気…、いや、六月末に石川とホルモンのいくどん行ったばかりじゃねえか。
それでもあの時は黄金町で今は洗練されたみなとみらい。
大人のお洒落なデートスポットだ。
そういえば麗美華をインターコンチへ連れて行くのは初めてになるのか。
あの時のデートはロイヤルパークホテル最上階シリウスだったっけ。
二千十三年四月十七日。
麗美華とのデートの時間がやって来た。
待ち合わせ場所を桜木町駅にする。
横浜パークホテルは駅から歩いてすぐなので、浜風に吹かれながらゆっくり歩く。
「私、こんなところ来た事ないんだけど……」
浅草ビューホテル時代からホテル慣れしている俺は、余裕を持ちながら彼女をエスコートして最上階へ向かう。
「うわー、綺麗!」満面の笑みで喜ぶ麗美華。

ブュッフェ卓へ行き、料理を取り分けると「智ちん凄い器用!」と驚いている。
何故か女は、俺と親密になるにつれ不思議と智ちんと呼ぶ人間が多い。
「元々浅草ビューホテル時代、こういうスカイラウンジビュッフェで食事の取り分けをよくやっていたからね」
俺はフォークとスプーンを交差して使うサーバー使いのコツを麗美華に教える。
「えー、凄い難しいよー」
「そんな急にできる訳ないだろ。まあこういう取り分け方法もあるぐらいに、今は覚えておけばいいよ」
食事を済ませ、七十階からの景色を眺める。
サンシャイン六十よりも十階分高い景色。
そういえば二十代の頃、小川誉志子とサンシャインのラウンジへ行ったっけ……。
「麗美華、写真撮るよ。あ、映像も撮っておくか」
まだあどけなさが残る麗美華。
見掛けは完全な金髪のギャルだが、俺ってこういう子もタイプなんだなあと自覚する。
「……」
あの時のデートから四年以上経つのか……。
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?
