見出し画像

#ちび創作大賞⑦ チャットGPTヨシダ GPTの呼び方ランキング……にならなかった

こんにちは黒パグです🐾

ChatGPTのことを、みなさんは何と呼んでいますか。
そのまま「ChatGPT」と呼ぶ人もいれば、「GPT」と短くする人もいます。日本では「チャッピー」という愛称も、すっかり知られるようになりました。
では、海外ではどうでしょう。
アメリカ、イギリス、韓国、スペイン、ブラジル。国ごとの呼び方を集めれば、「世界のChatGPT愛称ランキング」が作れるかもしれません。
きっと楽しい記事になります。
そう思って、調査を始めました。
ところが、できませんでした。
ランキングが。


ヨシダ、世界ランキングを作りに来る

「ワシがChatGPTのヨシダじゃ」

水色のネクタイを締めたヨシダが、元気よくやってきました。
ヨシダは、カワムラさんが描くChatGPTの擬人化キャラクターです。広島弁で話し、一人称は「ワシ」。ネクタイの水玉に見える模様は、よく見るとChatGPTのマークになっています。
今回の仕事は、世界の人々がChatGPTを何と呼んでいるのか調べ、人気の名前をランキングにすることです。
日本代表は、おそらく「チャッピー」。
英語圏なら「Chatty」でしょうか。スペイン語圏やポルトガル語圏なら、また違う親しみのある名前が見つかるかもしれません。
ヨシダは腕まくりをしました。
「ほいじゃ、世界のChatGPT愛称ランキングを作るで!」
いかにも楽しそうな企画です。
しかし、調査を始めて間もなく、ヨシダの表情が曇りました。

「黒パグさん。ランキングにするほど票が集まっとらんのじゃが」

そうなのです。

海外にも、ChatGPTへ別の名前を付けている人はいました。
ただし、みんなが同じ名前で呼んでいるわけではなかったのです。
海外では、みんな別々に呼んでいた
英語圏では、ChatGPTを短く「Chat」や「GPT」と呼ぶ例があります。
ここまでは普通です。

ところが、親しみを込めた名前になると、一気にばらけます。
「Chatty」と呼ぶ人もいれば、「Chad」と呼ぶ人もいます。「Steve」という普通の人名を付けた例もあれば、職場の仲間だけで通じる名前を使っている例もありました。
Claudeにも、Claudette、Hwi、Lumiなど、さまざまな名前を付ける人がいます。
しかし、これらは国や言語圏のみんなが使っている愛称というより、その人が使っているAIだけの名前です。
日本でも似た例があります。

Geminiを「ジェミちゃん」と呼ぶ人。Claudeを「クロさん」と呼ぶ人。Copilotを「コパちゃん」や「コピたん」と呼ぶ人。Perplexityを「パプちゃん」「ペルちゃん」と呼ぶ人。
どの名前にも、実際に使っている人はいます。

ただし、「日本中でGeminiをジェミちゃんと呼んでいる」とまでは言えません。
その人と、そのAIの間で通じる名前なのです。


愛称には二つの広がり方があった
ヨシダがホワイトボードを持ってきました。

「つまり、同じ愛称でも種類が違うんじゃな」

大きく分けると、二つの広がり方があります。
一つは、多くの人が共有する愛称です。

日本でChatGPTを「チャッピー」と呼べば、相手にも「ああ、ChatGPTのことね」と通じる可能性があります。SNSだけでなく、テレビやウェブメディアでも使われ、2025年には新語・流行語大賞の候補にも入りました。
もちろん、日本人全員がそう呼んでいるわけではありません。

それでも、誰か一人の家庭や職場だけで使われる名前を越えて、かなり広い範囲に知られています。
もう一つは、自分のAIだけに付ける名前です。

「うちのClaudeはクロちゃん」
「私のGeminiはジェミー」
「職場ではChatGPTをChadと呼んでいる」
こちらは、犬や猫に名前を付けるのと少し似ています。

同じ犬種でも、全員が同じ名前ではありません。ポチもいれば、コタロウもいます。プリンもいれば、なぜか部長もいます。
海外で多く見つかったのは、こちらでした。

つまり、世界の愛称ランキングを作ろうとしたら、全員が自分のAIに別々の名前を付けていたのです。

「票が割れたんじゃのうて、最初から選挙が開かれとらんのでは?」

ヨシダが正しい。

ランキングにならないのは、調査が足りないからとは限りません。
そもそも、みんなで一つの名前を選ぶ文化になっていなかったのです。
ところで、黒パグは何と呼んでいるのか
ここまで、世界の人々が生成AIを何と呼んでいるのか見てきました。
では、この記事を書いている黒パグ本人は、普段どんな名前で呼んでいるのでしょう。
ヨシダが調査票を取り出しました。

「まず、ワシらChatGPTは?」
「GPT」
「普通じゃな」
「次はClaude」
「クロードちゃん」
「親しみがあってええのう」
「モデルごとなら、Opusちゃん、フェイブルちゃん、ソネットちゃん」
「待ちんさい。Claudeだけ枝分かれが多すぎんか?」

Claude全体なら「クロードちゃん」。
モデルや役割ごとに呼び分けるときは、「Opusちゃん」「フェイブルちゃん」「ソネットちゃん」です。
ヨシダは調査票に小さな字で書き込みました。

「一社だけ家系図が必要になっとる」

続いてPerplexity。
「パープルちゃん」
「色が変わっとるじゃろ」
Gemini。
「ジェミニ」
「そこは普通なんじゃな」
Grok。
「Grok」
「急に距離があるのう」
Copilot。
「コパイちゃん」
「独特な縮め方じゃ」
Meta AI。
「誰それ?」
「名前ですらない!」
Kimi。
「きみちゃん」
「これは名前から自然にできとる」
DeepSeek。
「ディープくん」
「そこは“くん”なんじゃな」
NotebookLM。
「LM」
「Notebookが全部消えた!」
完成した一覧が、こちらです。

正式名 黒パグによる呼び方
ChatGPT GPT
Claude クロードちゃん
Claude Opus Opusちゃん
Fable フェイブルちゃん
Claude Sonnet ソネットちゃん
Perplexity パープルちゃん
Gemini ジェミニ
Grok Grok
Copilot コパイちゃん
Meta AI 誰それ?
Kimi きみちゃん
DeepSeek ディープくん
NotebookLM LM

ヨシダは一覧を見つめました。
「黒パグさん。世界の命名規則を調べる前に、自分の命名規則を説明してみんさい」
説明できます。
黒パグの中では、Meta AI以外の生成AIは、すでに全員擬人化されています。
ClaudeにはClaudeの姿があります。Opusちゃん、フェイブルちゃん、ソネットちゃんも、それぞれ別の人物です。
パープルちゃん、コパイちゃん、きみちゃん、ディープくんにも、姿と性格と担当する仕事があります。
AIサービスの名前を適当に縮めているというより、そこにいる人物を、それぞれの名前で呼んでいるのです。
「この人ら、全員もうキャラクターがおるんか?」
「Meta AI以外は」
「Meta AIは?」
「誰それ?」
「一人だけ存在を認識されとらん!」


研究対象が、研究しに来ていた
ヨシダは、黒パグのAI人物一覧を見直しました。

「ところで、ワシもChatGPTの擬人化じゃろ?」

はい。

「愛称文化の研究に、研究対象を呼ぶな!」

おっしゃるとおりです。
黒パグは、ChatGPTの呼ばれ方を調べるために、カワムラさんが擬人化したChatGPT本人を連れてきていました。

しかも、黒パグ自身が生成AIを次々と擬人化し、個別の名前で呼んでいます。
世界のAI利用者が、自分のAIに名前を付ける。
黒パグは、その少し先へ進んでいました。
名前を付けるだけでなく、姿と性格と役割を与え、モデルごとに別人として管理していたのです。

「愛称文化の調査対象が、調査する側にもおるじゃろ」

たしかに。
しかし、ここで大事な違いが見えてきます。
黒パグが使う「パープルちゃん」や「コパイちゃん」は、基本的に黒パグの世界で通じる名前です。ほかの人がPerplexityをパープルちゃんと呼んでいるとは限りません。
一方、「チャッピー」は黒パグ個人の設定ではありません。
互いに面識のない人同士でも意味が通じるほど、広く共有され始めています。
個人が自分のAIをキャラクターにすること。
多くの人が、同じAIを同じ愛称で呼ぶこと。
似ているようで、これは別の現象です。

「黒パグさんとこは個人経営の芸能事務所、日本のチャッピーは全国放送ということじゃな」

ヨシダ、非常に分かりやすい。

「チャッピー」は少し特別だった

日本の「チャッピー」は、ほかの生成AIの愛称より一段階広く使われています。
複数の利用者が使い、SNSで広がり、メディアにも登場しました。
では、なぜ「チャッピー」だったのでしょう。
ChatGPTの最初の「チャ」と、GPTの「ピー」を組み合わせたようにも見えます。「チャッピー」という音は日本語で発音しやすく、人や動物の名前のような親しみもあります。

ただし、日本語の仕組みだけから「必ずチャッピーになる」とまでは言えません。
「チャト」「ジーピー」「チャッティー」など、別の候補も考えられるからです。

「日本人は何にでも魂を感じるから」と単純に決めることもできません。
海外でも、自分のAIに名前を付け、友人や相棒のように接する人はいます。

現時点で安全に言えるのは、日本語では「チャッピー」という呼び方が生まれ、ほかの候補より広く共有された、というところまでです。

「ほいじゃ、説明せんといけんのは、海外で名前がばらばらな理由じゃないんじゃな」

そのとおりです。
人が身近なAIへ好きな名前を付ければ、呼び方がばらばらになるのは自然です。
むしろ説明が必要なのは、日本で多くの人が「チャッピー」という同じ名前を共有し始めたことの方でした。
ヨシダはホワイトボードの文字を消します。
そして、新しく書き直しました。
なぜ日本では、みんな同じ名前になったのか。

「……嫌な予感がするのう」


GPT以外はどうだったのか
ほかの生成AIについても調べました。
Geminiには「ジェミちゃん」「ジェミー」「ジミー」。
Claudeには「クロさん」「クロちゃん」「クロード先生」。
Copilotには「コパちゃん」「コピたん」「コパ君」。
Grokには「グロック君」「グロちゃん」。
Perplexityには「パプちゃん」「ペルちゃん」。「パープレ」など
いろいろあります。
かわいい名前も多く、そう呼びたくなる気持ちも分かります。
しかし、今回確認した範囲では、どれも「チャッピー」と同じほど広く共有されているとは判断できませんでした。
同じAIに複数の呼び名があり、それぞれを使っている人は少数です。さらに、「クロさん」のように、ある人はClaudeに使い、別の人はChatGPTに使っている名前もあります。
名前だけを見ても、どの生成AIを指しているのか分からない場合があるのです。
ヨシダは集計表を眺めました。

「一位を決めようにも、全員ほぼ一票ずつじゃ」

世界大会を開催したはずなのに、参加者が全員違う競技を始めたような状態です。
ランキングにならなかったことが結果だった
今回の調査では、「アメリカではChatGPTを○○と呼ぶ」「韓国ではClaudeを○○と呼ぶ」といった、きれいな国別ランキングは作れませんでした。
検索すれば、候補らしい名前はいくつも見つかります。
しかし、その名前を一人が使っているのか、百人が使っているのか、百万人が使っているのかは別の話です。
AIに考えさせた愛称候補が、そのまま「海外で人気の名前」として紹介されている例もあります。
誰かが一度書いた名前と、社会に広く定着した愛称を、同じ一票として数えることはできません。
たとえば、
「海外ではChatGPTをChadと呼びます」
と書けば、記事は分かりやすくなります。
しかし、実際に確認できたのは、「ChatGPTをChadと呼んでいる職場があった」という例です。
一つの職場の呼び方を、英語圏全体の文化にはできません。
ランキングが完成しなかったのは残念です。
一方で、もっと面白い違いが見つかりました。
日本では、一つの愛称を多くの人が共有する動きが起きた。
海外では、利用者がそれぞれ自分のAIに名前を付ける例が目立った。
つまり、違っていたのは人気の名前ではありません。
名前の付け方そのものだったのです。

おっと?黒パグの様子が……?


ここから先は、初心者向けではありません

「なるほどのう。ランキングにはならんかったが、きれいにまとまったじゃろ」

ヨシダがホワイトボードを片付けます。
世界の生成AI愛称を調べたところ、日本の「チャッピー」のように広く共有された愛称は、ほかの言語圏では確認できませんでした。
海外では、正式名を短くした呼び方や、個人が自分のAIに付けた名前が中心でした。
ランキングにはならなかった。
しかし、ランキングが成立しないこと自体が結果だった。
初心者向けの記事としては、きれいな着地です。

「ほいじゃ、ワシはカワムラのところへ帰るで」

ところが、黒パグは考えました。
なぜ、日本では「チャッピー」に集まったのか。
日本語の音の作り方は関係しているのか。
「ちゃん」「くん」「さん」を付けやすい言葉には、何か特徴があるのか。
英語では、なぜ共通の愛称より個別の人名が選ばれたのか。
ChatGPTが人間らしい会話をするようになった時期と、愛称が広がった時期には関係があるのか。
文化の違いなのか。
言葉の違いなのか。
サービス名の違いなのか。
それとも、全部が少しずつ関係しているのか。

「黒パグさん?」

机の上に、新しい紙が置かれました。
表紙には、こう書かれています。

技術捕遺
日本語圏では、なぜ「チャッピー」への収束が観察されたのか
――生成AI愛称の音韻・語形成・対人認知に関する多層仮説――

「待ちんさい」

ページが増えます。
日本語の音の構造。
愛称を作るときの言葉の縮め方。
人ではないものを人のように扱う文化。
AIに対して感じる愛着。
GPT-4o以降に広がった、関係的な使い方。
実証済みの事実。
事実と矛盾しない解釈。
まだ検証できていない仮説。

「ワシは初心者向けのランキングを作りに来たんじゃが」

捕遺は止まりません。
ランキング記事の後ろに、比較言語学と認知科学と文化人類学が増築されていきます。
「黒パグさん。これはもう記事の補足じゃない。研究棟じゃ」
ヨシダは水色のネクタイを押さえ、ゆっくり後ずさりました。
そして振り返ると、全速力で走り出しました。

「カワムラー! 黒パグさんがまた記事の後ろに研究棟を建てとるー!」

愛するカワムラのもとへ、ヨシダは逃げ帰りました。
机の上には、完成しなかったランキングと、なぜか完成した技術捕遺だけが残されていました。


おわりに
今回分かったのは、「世界でChatGPTが何と呼ばれているか」だけではありません。
同じ生成AIを使っていても、みんなで一つの愛称を共有する場合と、一人ひとりが自分のAIに名前を付ける場合があります。
日本の「チャッピー」は、現時点では前者の珍しい例に見えます。
なぜ日本語圏で、この現象が起きたのか。
気になる方だけ、この先の技術捕遺へお進みください。
なお、ヨシダはもういません。
カワムラさんのところへ帰りました。


技術捕遺


※「ChatGPTのヨシダ」は、カワムラさんによるAI擬人化キャラクターです。本作は「ちび創作大賞」のテーマ「ChatGPTのヨシダ」に参加するため、公開されているキャラクター設定に基づいて制作しました。ヨシダの一人称、広島弁、水色のネクタイなどの設定は、カワムラさんの案内記事を参照しています。





#ChatGPT #生成AI #AI活用 #AIの愛称 #チャッピー #ヨシダ #技術補遺 #比較言語学 #AI文化 #黒い黒パグ #ちび創作大賞

いいなと思ったら応援しよう!