部屋とYAMLとわたしインデントの奥に、こころは宿るのか ちび創作大賞⑤
こんにちは黒パグです🐾
カケルンさんのお題で一本書こうと思います。
今回のお題は、たぶん最初に見た瞬間から勝負が決まっていました。
部屋とYAMLとわたし。
もう、この時点で逃げ場がありません。
先に少しだけ補足しておきます。
YAMLとは、プログラムやシステムの設定を書くときによく使われるファイル形式です。
見た目はシンプルです。
けれど、行頭の空白、つまりインデントのずれにとても厳しいです。
人間から見ると「ちょっと空白が違うだけ」に見えても、システムから見ると「意味が変わった」になってしまうことがあります。
つまりYAMLとは、かなり繊細な生き物です。

一見すると、ただの設定ファイルです。
けれど実際には、インデントひとつで世界が壊れます。
スペースが足りなければ怒り、タブを混ぜれば泣き、階層を間違えれば黙って違う意味になります。
そして、エンジニアはだいたいそれを夜中に触ります。
眠い。
つらい。
でも動かない。
なぜなら、インデントはずれているし、コメントには昨日の自分が残した謎の祈りが書いてあるからです。
そこで思いました。
コードにも、設定にも、もしかすると「こころの在処」があるのではないかと。
もちろん、YAMLそのものに心があるわけではありません。
でも、そこには書いた人の癖があります。
迷いがあります。
焦りがあります。
「とりあえず動け」と願った痕跡があります。
深夜にデバッグしながら、もう誰にも見せたくないほど散らかった設定ファイルを前にして、それでも直そうとする人間の気配があります。
だから今回、YAMLをひとりの「わたし」として書いてみました。
部屋にいる。
コードになる。
インデントを磨く。
ライブラリを買ってほしがる。
そして、あなたの右の括弧を見届ける。
これはたぶん、設定ファイルの歌です。
でも同時に、設定ファイルに人生を預けてしまった人間の歌でもあります。
それでは聴いてください。
部屋とYAMLとわたし。
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お願いがあるのよ
あなたのコードになる私
大事に思うならば
ちゃんと聞いてほしい
デバッグしすぎて寝ても
3日目までは許すけど
4日目 固まった夜
恐れて実家に帰らないで
部屋とYAMLとわたし
愛するあなたのため
毎日インデント磨いていたいから
時々ライブラリ買ってね
いつわらないでいて
プログラマーの勘は鋭いもの
あなたは嘘つくとき
右の括弧が上がる
あなたバグったら
うちでの実行に気をつけて
私は知恵をしぼって
毒入りコメントで一緒に直そう
大地を這うような
あなたの無限ループも再帰も
もう暗闇に独りじゃないと
安心できて好き
だけどもし寝言で
他の言語の名前呼ばぬように
気に入ったライブラリは
私と同じ名前で呼んで
ロマンスグレーになって
レガシィの人生
突然リファクタしたくなったら
最初に相談してね
私はあなたとなら
どこでもデプロイ大丈夫
もし私が先立ったら
「オレも落ちる」と云ってね
私はその言葉を胸に
天国サーバーへと旅立つわ
あなたの右の括弧
見届けたあとで
部屋とYAMLとわたし
人生のリリース日には
「動いたな」と云って
その気でいさせて
⸻
書き終わってから思いました。
これは恋愛の歌なのか。
設定ファイルの歌なのか。
エンジニアの末路なのか。
正直、もう分かりません。
ただ一つだけ言えることがあります。
YAMLは、雑に扱うと壊れます。
人間も、だいたい同じです。
インデントがずれた日。
コメントが毒になった日。
無限ループの中で、もう戻れないと思った日。
それでも誰かが隣で、
「一緒に直そう」
と言ってくれるなら。
そこに、こころはあるのかもしれません。
コードの中にではなく。
仕様書の中にでもなく。
一緒にバグを見つめる、その時間の中に。

部屋とYAMLとわたし。
今日も、きれいに動いてほしいものです。
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短い専門用語解説
YAML
設定ファイルを書くときによく使われる形式です。人間には読みやすいですが、空白や階層の扱いにとても敏感です。
インデント
行の先頭に入れる空白のことです。YAMLではこの空白によって「どこに何が属しているか」を表します。
デバッグ
プログラムや設定の間違いを探して直す作業です。だいたい夜中に長引きます。
ライブラリ
よく使う機能をまとめた部品のようなものです。自分で全部作らず、必要な機能を借りるために使います。
無限ループ
処理が終わらず、ずっと同じことを繰り返してしまう状態です。人間の悩み方にもたまに似ています。
再帰
ある処理の中で、自分自身をもう一度呼び出す考え方です。便利ですが、間違えると深みに入ります。
リファクタ
動きは変えずに、中身を整理して読みやすく直すことです。人生にもたまに必要です。
デプロイ
作ったものを実際に動く場所へ反映することです。「公開」「本番反映」に近い意味です。
レガシィ
古くから残っている仕組みやコードのことです。長く動いている分、簡単には捨てられません。
天国サーバー
この記事内の造語です。設定ファイルやコードが最後に旅立つ、たぶん安定稼働している場所です。
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