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【地球ガチャ・星野ヒカリの物語】第3話の1~私も彼女も「みゆき」が好きだった。2人は同じ少年を好きになった~音楽×占い×現代ファンタジー



🌞ヒカリ、太陽の少女と出会う

高2の春、ヒカリはまだ最悪のハズレを引いたままの、内気で無口な17歳。

両親を亡くして以来、身を寄せていた叔父叔母夫婦の家も、決して裕福とは言えなかった。
地元の公立高校に進学させてもらえたが、その後は就職活動か——

進路希望調査のアンケート用紙一枚が、ヒカリに重くのしかかった。

「将来の夢」「志望校」—— 瞳をキラキラさせるクラスメイトたち。
異国のことばみたいに、聞き流しておけばいいだけなのに。

胸につかえさせているのは、結局、いつも自分。
こんな自分に、好きで生まれてきたわけじゃない。

休み時間が一瞬のオアシス——ヒカリはイヤホンで耳をふさぎ、ひととき安堵する。
中島みゆきは母の愛した歌。

The Beatlesは、父がよくギターで弾いてくれた曲。
耳に流れてくる歌詞とメロディだけが、彼女の確かなトモダチだった

ある日、クラスの後ろの席の女子が、ヒカリのスマホを興味津々でのぞき込んできた。
「何聴いてるの?……え、中島みゆき? ビートルズ? 古っ!」

その声に釣られてクラスメイトが集まる。
からかうような笑いが広がる中で、ヒカリは、いつもの“笑顔の仮面”を貼り付ける——とその時、明るい声が雑音を切り裂いた。

「私、中島みゆき好きだよ」

春日井日向(かすがい ひなた)だった。
クラスの中心にいる、バスケ部の華、名前の通り太陽みたいな女の子。
加えて、地元の有力企業「春日井建設」のご令嬢だ。

その彼女が、自然にヒカリの隣へ座り、目を細めてほほ笑んだ。

「ヒカリ、誰とも群れないあなたって、カッコイイよね。私スキだよ」

好きで、群れなかったわけじゃないけど——変わり者と笑われるか、透明人間のように無視されるか——都合よく、扱われるのには慣れていた。

そのどちらでもない、それは、友情の告白?

生まれてはじめて、ヒカリは心の余白を知るのだった。

少しずつ、日向との音楽談義にわきながら、周囲のクラスメイトたちとの境界線も、淡いトーンにぼかされていく。
座の中心にいた日向と、誰とも群れることのなかったヒカリの間に、真逆の引力が働き出していた。


🎸亡き父の音楽と心のともし火

ある雨の放課後——
部活が休みになったと日向がヒカリを誘い、誰もいなくなった教室の窓の下、2人は壁を背にして床に座り込んでいた。

イヤホンの左と右をそれぞれ片方ずつ耳に入れ、肩を寄せ合う。
音楽を聴きながら、日向がポツリとこぼした。

「昨日、死にたくなっちゃった

建設会社の跡取りとして、生まれた時からレールの上を歩くことしか許されてこなかった日向。

「パパは、ママに時どき手を上げるの。私、あんな人と離婚してってママに頼んだことあるの」
ヒカリは思わず、日向の手に自分の手を添えた。

「ママは、一生きれいなお人形を演じて、日向を守るわって。それが日向の幸せだって……」
ことばが続かなくなる日向に、ヒカリは自分力を分け与えるかのように指先を強くからめた。

「日向の家も『人形の家』だったんだ……ね、いつかいっしょに、家出しようよ。その時まで、がんばろう?」
雨音の中で、かたく結ばれた2人の手が熱を分け合う。

「話、聞いてくれて、ありがとう」

「そうだ、この曲……」
ヒカリはせめてもの思いを乗せてひとつの楽曲を選択した。
「『Let it be』……日向への、応援ソング」

「ビートルズか……ヒカリのお父さんが、ギターで弾いて、聴かせてくれたって曲でしょ?」

「うん……よく一緒に歌った」

今ここで、亡き父の正体を、日向に伝えてみようと、ヒカリは続けた。
「『ブルー・エッジ』の星野聖夜って、聞いたことあるかな。私の、お父さん」

「え、星野聖夜さんが?」
インディーズバンドの名前を知る者など、そういない。それを日向に期待したわけでもない。

「そう、事故だったのね……」

ただ、伝えたかった。ようやく、一人で守り続けてきた父の記憶に、灯りがともった——友という名の。

同時に、父を失った過去がフラッシュバックするヒカリから、仮面の笑顔が一気にはがれ落ちた。(お父さん——)

「ごめん、暗い話して……」

涙目になりうつむくヒカリの肩を、日向が抱き寄せて言った。
「泣いていいよ、ヒカリの“作ってる笑顔”より、暗くても、泣いてても、本当のあなたを見せてよ」

ヒカリは、胸の奥が熱くなり、思わず確かめていた。
「こんな私がトモダチでいいの……?」

「あたりまえでしょ、もう、怒るよ?」
一瞬、ほほをふくらませてから、ニコッと目を細めた日向の頭が、ヒカリの肩に預けられる。ヒカリもまた頭を寄せ、夢見心地にすらなるのだった。
ガチャから一転して激レアの友情か……)

その時、小さな黒い鳥の羽が、窓からフワリと舞い込み、ヒカリの背筋をかすめて消えた。
でも……本当に? この温もりはこれからも、ずっと?
失う恐怖など知らないことが、実はヒカリの幸いだったのかもしれない。


🫂友情と愛💖

新緑の風が軽やかに素肌をなぜる季節の昼休み。
例によって、ヒカリと日向は教室の窓際でイヤホンを分け合っていた。

「ねえ、このサビのベース、めっちゃ格好よくない?」
日向がリズムに合わせて軽く肩を揺らすと、ヒカリが画面をスワイプして次の曲を選ぶ。
「……ってことは、この歌詞、ハマらない?」

日向は「いいね、ヒカリは相変わらず鋭い!」
ふいに校庭から歓声が上がった。サッカー部のMr.ハイスクールのお出ましのようだ。

キャプテンの宙(ソラ)くん! 女子の声でわかるよ」と日向が言うので、ヒカリはいよいよ緊張する。

宙——その場の空気を変える存在。長身でスポーツマンながら、切なげな目元が中性的なクールビューティ——手の届かない、憧れの存在。
(この想い、日向にならわかってもらえるかもしれない)

一瞬早く、日向のほうが口を開いた。
「ヒカリ、いつも勇気をありがとうね、私、ガンバル!」
そう言って窓枠に乗り出す日向が、次の瞬間、ヒカリの笑顔の仮面にヒビを入れる——

「私……宙先輩が好きです!」
一瞬の静寂のあと、教室にも校庭にもどよめきがわいた。

「ちょ、マジ!? 日向、白昼堂々の公開告白!」
「ヤバい、カッコよすぎ! 日向のビジュアルならワンチャンあるよね」

はやしたてる仲間たちと舞い上がる日向。
彼女たちにてきとうに合わせながら、いつもと変わらぬ自分を演じ、ヒカリはその後のことはよく覚えていなかった。

夜もまた、寝返りをうちながら、自問自答のループがやまなかった。

私が好きな宙先輩を、日向も好きだった。

その日向の後押しを、私がいつの間にかしていた——すごいよ、ヒカリ。よくやったよ、お前は……
だから、がんばれ、ヒカリ。
大好きで、一番のトモダチの日向を応援するんだ……

翌日から、ヒカリがまた席に着いたままイヤホンに没頭することが多くなっていった。

哀しい、失恋ソングの歌姫の詩——重厚感のあるビートと共に、ヒカリの心に深く何度も沈み込んでは、得体のしれない活力と化した。

🎵愛なんてどこにもないと思えば気楽(出典:中島みゆき『孤独の肖像』1985年)

🎵Lonely face   
愛なんて 
どこにもないと思えば気楽 
Lonely face   
はじめから 
ないものはつかまえられないわ

どうせみんな独りぼっち 
海の底にいるみたい


(そうだよ、人間なんてみんな孤独。
恋とか愛なんて、妄想なのに……日向もいつか、気づくといいね)

無意識のうちにサディスティックなトゲを、友に向けてしまうヒカリの自己嫌悪感にも拍車がかかった。

***** 
ここまでヒカリの回想だった。

「もうその時の私は、何ていうか、心身ともにボロボロだった」

「それはきっと……あなたのコードに、うお座の愛があるからだよ。 深い海みたいに、すべてを包み込んで、 でも時々、波に飲まれてつまづいちゃうんだ……」

話を聞いていたRayが、銀の瞳を細めて、白手袋の指先で、柔らかくAmのアルペジオを奏でだした。

「Rayちゃん、はじめて会ったとき、私の月が沈んでいるって、言ってたものね……私の月の星座がうお座だったなんて、ゼンゼン知らかった」

「そう、あなたは**月がうお座のさそり座**さん。**ただのさそり座**なら、そんな風に自己嫌悪におちいらない……うお座はね、自分と他人の境界線が消えてしまう……やさしすぎるところがあるんだ」

Rayは、低いAmからDm7へと、ゆっくりと波のように響かせながら言った。
「海の底にいる、うお座のヒカリちゃんを、もっとうんと抱きしめてあげて、ヒカリちゃんは何もわるくないって」

「Rayはどう思う……愛って本当にあると思う?」

「あると、思うよ……」Rayはアルペジオを弾き続ける。

「ただ、深くて、暗くて、手探りするしかない海の底みたいなところにいると、誰も信じられなくなることもある……でもね、『愛』ってことばがあるってことは、愛があるからだと、僕は思うよ……」

Rayは、Bmの輝く開放弦へとコードチェンジを果たし、ささやきを歌声に変えた。

🎵 「僕は、いつも側にいるよ」

メロディが一オクターブ高く舞い上がり、テレキャスから光の粒子が飛び散ると、あたりが金粉に包まれた。

「ヒカリちゃん、僕は、いつもここで待ってる。 悲しみも痛みも、全部コードにして、 調和のメロディで包み込むために……」

今日のRayは、決してヒカリに触れない位置で、弦を鳴らしていた。

そして、その頃からヒカリは、夜ごと「天使と魔法使い」の夢を見るようになるのだった。

続きは第3話その2へ

🌞次回 :【第3話】その2~救いは聖なる天使か我がままな魔法使いか?~


🌛前回:【第2話】その2📖初期設定からバグりまくりの地球ガチャ~

🌜前々回:【第2回】その1~エラーはあなたのせいじゃない~

初回:地球ガチャ・星野ヒカリの物語~ 生きるか、死ぬか?運命の選択~

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