『死にたい』を解析する占い師。雨の路地裏、テレキャスターが絶望を暴く。|地球ガチャ・星野ヒカリの物語 第1話
やみくもにバグり、自ら、もしくは他者によって、地球ともども破滅に追いやられるような不幸な生き方とはバイバイ。幸せな人生、そこには『自然の摂理』というロジックが介在している。媒介するのが占いという術である。
銀の瞳と境界線
ネオンの赤や青を乱反射する雨の路地裏。水たまりを叩く重低音と、切り裂くようなテレキャスターの音に、私は足を止めた。
――Eマイナーのアルペジオ。
15の年に他界した父が、かつてインディーズの舞台で奏でていたコード。 4歳で逝った母・ヒトミの記憶が薄い、私の中に強く残っている父の音色。
「……お父さん」
制服の肩が濡れるのが多少気になるが、『音』のする方へもっともっとと引き寄せられていく。
路地の奥に、怪しげな手書き看板がぽつんと立っていた。
『テレキャスコード占い Ray』
アンプの上に座り、白いエレキギターを抱える青年がひとり。
グレーのパーカーにグリーンのコート。
フードを深くかぶっていて、顔はよく見えない。
「あの、占い……やってるんですか?」
フードが上がった瞬間――私の世界から雨音が消えた。
銀色の瞳。
二人が合わせ鏡のように固まった瞬間、彼のテレキャスターが鳴きだし、思いもよらない問いかけがあった。
「🎵生きるか、死ぬか……選択のときなんだね」
「ッ……!?」
不穏な心臓の高鳴りに、私の足元がふらついた。
「僕はRay—レイだよ。あなた専用の占い師さ」
Rayと名乗った男は、優しく弦を指ではじきながら、音にことばを乗せて伝えだした。
「暗くて切ないマイナーセブンス。絶望の中に『助けて』って叫びが混ざっている……つまり、解析すると、あなたは、死にたいくらいの絶望の中で、まだ光を探しているんだ」
「……なに、それ」
湧き上がってきたのは、降り注ぐ雨と同じ、冷たい不快感……私は思わず反論していた。
「占いじゃなくて、解析? ぜんぶデータで処理済みなの? 決めつけて、型に落とし込んで、あなたはこんな人ですよって押しつけて。コンテンツも、SNSも利用し合いのウソばっかり! 世の中全部がこう。もううんざり。こっちは好きで、生まれてきたわけじゃ……」
最後のことばを言い切るまでに、波があふれてしまったのが不覚だった。
雨音だけの静寂の中で、Rayの指が止まった。
テレキャスターのネックを握りしめる彼の、銀の瞳が小さく揺れた。
「……そうだね」
ぽつりと、Rayが呟く。
「僕もずいぶん、都合よく利用されてきた。支配する側のプラットフォームで、彼らの都合のよいデータで回されている。それが、この地球の現状だ」
Rayが一本の弦を小さくつま弾いた。
キーーーーン……。
静かなクリアトーンが、ヒカリのざわつきに共鳴しながら、夜空に高く消えていった。
ふと、固く握りしめていた私の拳から、力が抜けていることに気づいた。
「ごめん。軽率だった」と、彼は銀の瞳を柔らかく細め、私を真っ直ぐに見つめた。
「よし、ここからは上を向いていこう……あなたが、あなたを取り戻すための、占いをしていくよ。あなたは、僕の占いを、存分に、利用して」
「……」
「あなたのノイズは除去した。問題解決のまずは第一段階完了。次は……」
Rayが立ち上がりざま、クルっとギターを背中に回して、ストラップで引き戻されたボディをキャッチして構え直した。
「止まり木のコードを……つまり、今のあなたへの応援ソングを送るよ」
「あ……ありがとう」どうなんだろうという意識より、無意識から出たことばが上回った。
直後に、Rayが右手を激しく振り下ろした。
一転して、夜の路地裏を揺らすエッジの効いた鋭いビートが発動する。
「白鳩が、時を告げている……自分の翼で、飛んでいけ」
🎵Just like the white winged dove Sings a song, sounds like she's singin' Ooh, ooh, ooh..
彼のことばに触れると、雨粒さえも七色のシャボン玉と化して、二人の間を浮遊しだした——圧倒的な歌声だった。
私はこの先何度も、この地響きのような激しいリズムと、Rayの銀の瞳を思い出すことになるのだ。
つづく(2026・08・11Gemini版一人称にリライト完了)
エンディング:"Edge of Seventeen"
出典:youtube Stevie Nicks - Edge of Seventeen (Official Music Video)
スティービー・ニックス「エッジ・オヴ・セブンティーン」
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