見出し画像

波打際外伝51話 平家物語の女性たち Women of the Tale of the Heike


久しぶりの古本屋シリーズになる。
物語を描く場合、ネタがあるということは大切なことになる。


源氏と平家、鎌倉幕府、平家物語、六代御前のその後・・・
そうなると、この本はちょうど良いところにあって、
むしろまだ読んでいなかったことのほうが不自然になっている。

平家物語の女性たち 永井路子著
ISBN 9784167200497
2011年6月10日新装版(1979年刊行の新装版)




鎌倉期前後等を描いた永井路子さんの作品には名作が多く
有名なのは「炎環」(直木賞受賞)
鎌倉幕府成立期連作で、読みやすいし面白いので好きである。



源頼朝を中心として、この四人の物語になっている。

阿野全成(今若:頼朝の異母弟)、
梶原景時(洞穴にいた頼朝を見逃したとされている)、
阿波局(保子:北条政子の妹)、
北条義時(2代目執権:北条政子の弟)





エッセイではあるが、「はじめは駄馬のごとく ナンバー2の人間学」も
面白いし勉強になる内容である。
鎌倉幕府2代目の執権 北条義時の話などは、大好きである。
ほかに登場するのが源義経、徳川秀忠、平時忠、明智光秀と
いずれも大物ナンバー2である。



鎌倉期ではないものの、「王朝序曲」も大好きである。
藤原冬嗣とその兄 藤原真夏を中心に描かれるのだが、内面の心理描写や
政治的駆け引きが素晴らしく面白い。



流星(お市の方)

美貌で知られた織田信長の妹の生涯の話である。
なんとなく、挟み撃ちを知らせる有名な小豆の話が書いてあったような気がしていたが、流星には書かれていないようだ。



乱紋
お市の娘 浅井三姉妹 お茶々=淀殿・お初=常高院・おごう=崇源院を
描き、いずれも歴史的に重要な役割を果たしていくというこの三姉妹の人生を見事に描いている。



その流れで、平安物語の女性を描いているのがこの作品だ。

登場するのは、恋人たちとして祇王、祇女、仏御前から始まり、
妃たちとして祇園女御、ほか。

最後に二人のヒロインとして、建礼門院、二位の尼 時子



その前に人妻たちとして、小宰相、巴らと並んで維盛の妻が登場している。







維盛の妻については、以下の本編にて書いている。


新大納言局 どこでボタンを掛け違えたのか 
ShinDainagon-noTsubone — Where Did Things Go Wrong【六代御前編】






ちゃんと永井路子さんは、六代御前のことも書いている。








永井路子さんの本をかなり読んでいたにもかかわらず、
筆者は「平家物語の女性たち」は読んでいなかった。







これを読んでいたならば、六代御前編の迷走は、それほどにはならなかったのではないかと思うとき、読書の大切さに思い至るのである。





少し余計なことだが、この本を読んで気が付いた。

維盛の妻は長谷観音を信仰していたことを書かれている。


平家物語には、六代御前が16歳で出家し、
「高野、熊野と父のゆかりの地を廻る。」


12歳から30あまりになるまで命を保ったのは、
「ひとえに長谷観音のおかげだ、というところで物語は終わっている。」



実は、ユウカがテツオと長谷寺に行った回に、維盛の話をその中に書いている。



今にしてみれば・・・偶然とはいえ・・・なぜ、あの時維盛の話をしたのだろうかと、思ったりはする。



もちろん、京にいた維盛の妻が信仰したのは、奈良の長谷観音であろう。




観音は、法華経で
「衆生の求めに応じて三十三の姿に変化する」とされている。



一本の霊木から二体の観音ができている・・・



ひとつがふたつ、ふたつはひとつ、



ふたつであってもおなじもの・・・



流された観音は、なぜ三浦半島に流れ着いたのか・・・・



「観音が自ら救うべき地を選んだのだ」という。



「観音様は、何を知っていたのだろう・・・」




183話 長谷寺 Two as One at Hasedera 【青春編】





永井路子さんは、平家物語に対して面白いことを言われている。


「この重盛という人物は、『平家』の中で極端に美化されて描かれている。」







「維盛の後半にも、そうした不自然さがないわけではない。」







さらに永井路子さんは、

「私はまだ維盛の入水には疑問があり、八島を抜け出して入水といつわり、

どこかで生きながらえたのではないかという気がしている。」

とされている。







そして、最後をこう締められた。



「むしろこの平凡な女性(維盛の妻のこと:筆者註)の方に、

いっそうのリアリティが感じられるのは面白いことだ。」






248話 新大納言局 どこでボタンを掛け違えたのか 
ShinDainagon-noTsubone — Where Did Things Go Wrong【六代御前編】



246話 富士川 Fujikawa — On the Eve of Battle【六代御前編】
・祖父 Grandfather — In the Shadow of Kiyomori’s Anger【六代御前編】







次の話

前の話

YouTube_yukariyajp 波打際スケッチ Sketches of the Shoreline
高評価、チャンネル登録をお願いいたします。


いいなと思ったら応援しよう!

Misakiyajp / Hiroki Kon 応援いただけると嬉しいです。