248話 新大納言局 どこでボタンを掛け違えたのか ShinDainagon-no Tsubone — Where Did Things Go Wrong【六代御前編】波打際スケッチ Sketches of the Shoreline ~AIと創る青春物語~
平維盛の妻は新大納言局で、藤原成親の次女にあたる
六代御前(平高清)の母である。

維盛の父 重盛の妻の経子は、藤原成親の妹にあたる
このことは、良くも悪くもその後に影響している。
世はすでに平家中心の時代に移り、藤原成親は左近衛大将への昇進が叶わなかった。
その席には平重盛が、右近衛大将に平宗盛が任命された
親戚であったにもかかわらず、このことを恨みに思ってか平家打倒を掲げ、
鹿ケ谷の陰謀の発覚によって失脚するのである。

平家の中心にいるにもかかわらず、
重盛、維盛が平家の中で孤立していく理由の一つが、
実はこのことであることを思うとき、
いったい平家は
どこでボタンの掛け違いをしたのだろうかと思うのである。
もう、ずいぶん前にかけ違いをしていて、
そのずれが大きくなっていったように見えるのである。

都落ちの時、維盛は妻と子(六代御前)を京に残している。
これによって六代御前は生き残れたのだともいえるが、
維盛がすでに平家の中心にはいないことを示しているようにも見える。
壇之浦をはじめ、平家物語のクライマックスは、
宗盛と猛将 知盛らが飾っているといえるだろう。

が、維盛が最期の最期で見せ場を創り出すのは、皮肉な気がするが、
諸行無常の物語の本当の意味でのクライマックスになっていることを思うとき。
やはり、平家の中心にはいたのだと思わせるのである。

熊野参詣ののち、松の木に清盛、重盛、維盛の三代の名籍を書きつけたとされる。
祖父太政大臣平朝臣清盛公、法名浄海、

親父内大臣の左大将重盛公、法名浄蓮、

三位中将維盛、法名浄円、年二十七歳、

そのあとは、補陀落渡海
そう書くと、何か文学的なのだが・・・・要は入水なのである・・・・
寿永三年三月二十八日、那智の沖にて入水す
六代御前のことは、生きている可能性に賭けてきている。
一つだけ、熊野の伝承がある。
維盛は、地元の娘 お万とともに龍神村の小森谷渓谷に隠れ住んだとされる伝承があるという。
が、残念なことにそのあとは同じであった。

「さればこは何事ぞ。なほ妄執の尽きぬにこそ」
と思し召し返し、西に向かひ手を合はせ、
念仏し給ふ心のうちにも、
「すでにただ今を限りとは都にはいかでか知るべきなれば、
風のたよりのことつても、今や今やとこそ待たんずらめ」
と思はれければ、合掌を乱り、念仏をとどめ、
聖にむかつて宣ひけるは、
「あはれひとのみに、妻子といふものは、持つまじかりけるものかな。」

「この世にてものを思はするのみならず、
後世菩提の妨げとなりける口惜しさよ。
ただ今も思ひ出づるぞや。
かやうの事を心中に残せば、罪深かんなる間懺悔するなり」
とぞ宣ひける。
本当は、維盛の最期の場面でもう一話 別に書くつもりでいた。
けれど・・・・
原稿を書く画面が涙でかすむ・・・

中将、しかるべき善知識かなと思し召し、
忽ちに妄念をひるがへして、
高声に念仏百反ばかり唱へつつ、
南無と唱ふる声ともに、
海へぞ入り給ひける。
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