見出し画像

ラクダとライオンと子供

パノプティコンで「見守りと監視」を考え、
ヘーゲルで「支えているのはどっちだろう」と考えてきました。

二つの記事を書いている間、
病棟に立つ自分の足元を見つめ直すような時間を過ごしました。

あいさん💗の企画に参加して以降、
私は少しずつですが、自分とちゃんと向き合うことにしています。

今回は少しだけ視点を変えて、「ここまで歩いてきた道のり」のほうを振り返ってみたいと思います。

手がかりにするのは、ニーチェです。

ニーチェの『ツァラトゥストラはこう言った』の中に、「精神の三段階の変容」という話があります。

人の心は、ラクダ、ライオン、そして子供へと姿を変えていく、というもの。

この三つを知ったとき、私はなんだか自分のこれまでの歩みを言い当てられたような気がしました。


ラクダの時期 ―「すべき」を背負って歩く

まず最初は、ラクダです。

ラクダは、重い荷物を黙って背負い、砂漠を歩いていく動物。ニーチェは、人の精神もはじめは「〜すべき」という重荷を引き受けるところから始まる、と言います。

新人だったころの私は、まさにラクダでした。

覚えるべき薬がある。
守るべき手順がある。
取るべき資格がある。

褥瘡、腎臓病、栄養サポート――学ぶべきことは次から次へと現れて、「できない」ことばかりが目につく毎日でした。

「薬剤師とはこうあるべき」
「病棟ではこう動くべき」

たくさんの「べき」を背負って、
とにかく砂漠を歩いていた時期。

正直、しんどかった。

でも今になって思うのは、あのラクダの時期に背負った重さが、そのまま自分の土台になっているということ。荷物を背負えるだけの背中を、あの頃の私は作っていたんだと思います。


ライオンの時期 ―「ノー」と言ってみる

ラクダの次は、ライオンです。

ラクダはやがて、自分が背負ってきた「べき」に対して「本当にそうなのか?」と問い始めます。
そして、「ノー」と吠える力を手に入れる。
これがライオンの段階です。

私にとってのライオンは、たぶんこんな問いが芽生え始めたころでした。

  • 「この薬、本当にこの患者さんに必要なんだろうか」

  • 「前からこうしているけれど、それは本当に最善なんだろうか」

  • 「薬剤師はこういうものだ、という枠はもっと広げてもいいんじゃないか」

それまで当たり前に背負っていた「べき」を一度はずして、全体を眺めてみる。言われたとおりにやるのではなく、自分の頭で「これはおかしいかもしれない」と考えてみる。

もちろん、ノーと言うのは少し怖い。
前例を疑うのも、自分の意見を口にするのも、孤独だし勇気がいる。

それでも、あの「本当にそうなの?」という問いがなければ、今こうして文章を書くこともなかった気がします。

ライオンは、新しい何かを生み出すわけではありません。でも、「自分で考えていい」「問い直していい」という自由を、自分に許してあげる段階なんだと思います。


子供の時期 ―遊ぶように創る

そして最後に、ニーチェは意外なことを言います。
いちばん自由な姿は、「子供」だと。

子供は、「べき」にも縛られず、「ノー」とわざわざ言う必要もなく、ただ遊ぶように夢中で何かを創り出します。

誰かに認められるためでも、義務だからでもなく、おもしろいから、やりたいから創る。

最近の自分を振り返ると、少しだけこの「子供」に近づけている瞬間があるのかなって思います。

  • 夜、子どもが寝たあとに文章を書いている時間。

  • 哲学の本を読んで、「これ、身近な話に似てる!」と一人で興奮している時間。

  • 難しい薬の話をどうやったらおもしろく伝えられるかを、あれこれ工夫している時間。

誰かに「書きなさい」と言われたわけではありません。評価されるからでも、義務だからでもない。
ただ、考えるのが楽しくて、書くのが好きでやっている。

それはたぶん、ラクダとして重荷を背負い、ライオンとして問い直してきたからこそ、たどり着けた「遊び」なんだと思います。

何も背負わなかった子供ではなく、いろいろ背負って、下ろして、もう一度自由になった子供。

noteで過ごしている時間は、まさに「子供」としての私の時間なんだと思います。


パノプティコン、ヘーゲル、そしてニーチェ。
三人の哲学者を手がかりに、自分の仕事とこれまでの歩みを考えてきました。

不思議なもので、遠い昔の哲学の言葉が、現代に生きる一人の人間の毎日にちゃんと届いてくるんです。

ラクダのように背負った日々も、
ライオンのように問い直した日々も、
そのどれもが、今この「子供」の時間につながっている。

きっとこれからも、新しい「べき」を背負うラクダの時期はやってくるでしょう。
そのたびにまた、問い直して、下ろして、遊ぶように創っていけたらいい。

そんなふうに、自分の歩みを丸ごと肯定できる気がしました🌸

そしてまた、いつかラクダに戻る日も、今の自分なら楽しみにしていられそうな気がしています✨✨

最近、いろいろな方の影響を受けて、『哲学って難しいけど、案外身近なんだな』っ改めて思うようになりました😊
食わず嫌いの方、一歩足を踏み入れてみると意外と面白い世界が広がっているかもしれませんよ😆💕


いいなと思ったら応援しよう!

ママ薬剤師HONO よろしければ応援お願いします!いただいたチップはオロナミンCの購入費としてモチベーションと活力アップに使わせていただきます✨