『白虎の路』 甲州街道とうりゃんせ 15
その15 「エピソード零:編集後記」
エピソード零:編集後記
1.シンクロニシティ:不思議な偶然
この物語の舞台は関東圏に設定しているが、この話は元々、大和郡山(奈良県)に住んでいた彼女を堺(大阪府)から中央道ならぬ西名阪自動車道を往き来した、実際のエピソードが元になっている。
ずっと引き摺っていた想いを清算し、忘れ得ぬ彼女を忘れたくて、15年ほど前に書いた小説だった。
物語として面白くするために、西名阪を往き来した舞台を中央道に替えて、甲州街道に因んで、守り神として四神の白虎を登場させることにして、不気味な童謡「とおりゃんせ」の唄を絡めてみた。
白虎を登場させたのには、理由があった。
入院先の病院から突然連絡があったかと思えば、随分、逢ってなかったにも関わらず、病気になったのは僕の所為だと言う。
実際、何度もあった不意打ちの連絡に辟易して、いっそ消えてくれればと云う思いが幾度かよぎったことがあった。
そして、嗚呼、自分の生き霊の所為だったのかも知れないと思ったからだ。
生き霊は長きにわたり、想いという言葉だけで片付けられてきた。
これは、互いの生き霊が実際に互いを苦しめあった物語でもある。
推敲し直すにあたり、表紙に使えそうな白虎の写真を撮ろうと、四神の像を京都に探したが、これと云ったものが見つからず、彼方此方探し回った挙げ句、辿り着いた所は、奈良にある信貴山朝護孫子寺の白虎像だった。
何枚か写真を撮り、せっかくだからと参道を辿ることにする。
石灯籠の参道が山の上まで続いている。何だか妙な既視感を覚えたのだが、本堂が近づくにつれ不思議な違和感を感じだした。
昼なので気付かなかったが、そこは確かに、彼女と訪れた寺だった。
探してた寺だったが、あの時は、友人に連れられて来たので、名前も場所も解らなかった。まさか、あの寺だったとは驚いた。
あの夜は、参道沿いに無数に並んだすべての石灯籠に明かりが灯されていた。
本文では、「翻弄されて:奈津子との再会」では江ノ島の防波堤での出来事になっているが、実際には当時、頂上付近にあった空き地に座り込んで、ランタンの灯で珈琲を湧かして呑んだ、まさにその寺だった。
当時はまだ白虎像など無く、寅を祀っていることすら知らなかった。
偶然では済まされない不思議な出来事は他にもあるが、オカルト小説と勘違いされても困るので、このくらいで編集後記を締め括ろう。
念のため、本小説は「青春純愛小説」である。
