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【憲法入門#9】新しい人権ってある?(人権総論・包括的基本権)

前回の記事(https://note.com/hogakuyoridokoro/n/n6f031a11e19b)では、国民同士の人権の運用に関する私人間効力について解説しました。今回は、人権総論の最後、「包括的基本権」について解説します。


幸福追求権とは何か

早速、「包括基本権」とは別の用語が出てきてしまいました。「幸福追求」と用語が出てくるのは憲法では以下の条文です。

日本国憲法第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

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このふわっとした書き方が「包括的基本権」の理念そのものです。「包括的」という言葉から分かるとおり、この記事で解説する人権はそれぞれが独立しているわけではありません。

憲法の言葉を借りるならば、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」を覆うようにある細々とした権利を指します。

特に近年は、技術の急激な進歩や生活様式の変化に伴って、日本国憲法制定時には考えもしないような新たな人権侵害が起きる可能性があります。(というより実際に起きてきました。)しかし、憲法の改正には非常に大きなエネルギーがかかります。改訂をすることなく、「新しい人権」を導き出す根拠。それが、幸福追求権です。

いわゆる「新しい人権」には何があるのか

では、幸福追求権を根拠に導き出されてきた「新しい人権」には何があるのでしょうか。これらの人権は憲法に直接的な規定はありませんが、いずれも判例などで認められてきたものです。よって、判例とセットで見ていきます。

①人格権

人間が生まれながらに持つ、生命、身体、自由、名誉などの利益を守るための権利です。憲法上にその中身ついての具体的な権利が規定されているわけではありませんが、民法や刑法などで具体的に保護されています。

こちらは、さまざまな権利を内包しています。②肖像権もこの人格権の一種ですし、③名誉権④プライバシー権もこれに含まれます。

②肖像権

憲法上に明文化されていませんし、判例の判決文も肖像権とは明示していません。しかし、肖像権といえば皆が「ああ、あれね」とわかります。それは、京都府学連事件で被告人が上告の際に「肖像権」という言葉を使ったからです。総務省でも「肖像権」という言葉が使われています。ややこしい話をすると、人格権という権利の一部です。肖像権とは、無断で自分の写真や動画を撮られたり、それを公開されたりしない権利です。

これが認められた有名判例は「京都府学連事件」です。判例については下の方の項目でまとめて解説しています。

③名誉権

人格権の一種であり、社会的評価を下げられない権利です。現代社会では、人として周囲と関わって生きていくためには他者からの社会的評価が重要なのはいうまでもありません。だからこそ、自分の評価を守るための権利です。

この名誉権を認めた判例が「北方ジャーナル事件」です。判例については下の方の項目でまとめて解説しています。

④プライバシー権

私生活を他者に公開されない権利です。通説としては、「自己に関する情報をコントロールする権利」とされているため、閲読や訂正、抹消も可能とされています。

このプライバシーの権利を認めた画期的な判例は、「宴のあと事件」です。判例については下の方の項目でまとめて解説しています。

「新しい人権」と認められる要件は?

世の中の自分に対する不都合を解消するために、何もかも「新しい人権」として主張することはできません。そんなことを認めていたらキリがありません。では、「新しい人権」が認められるための根拠は何でしょうか。ここで学説を2つ紹介します。

①一般行為説(一般的行為自由説)

これは幸福追求権があらゆる個人の自由な行為を包括的に保障するとする考え方です。日常の些細な行為にも憲法上の保護が及ぶと考えます。また、個人の自由に対する国家の制限には、常に正当な理由(公共の福祉)が必要です。

②人格的利益説(通説)

①一般行為説が全ての行為を保障する一方で、こちらは人間として生きるために必須の権利のみを保障すると考える説です。学説の中ではこちらが通説(多数説)です。

全てを憲法上の権利に指定することで、人権の数が当然ながら増えてしまいます。そうなると権利の相対的価値が低くなってしまいます。それを防ぐために適用範囲を減らしているのです。

よって、「新しい人権」として認められるには、それが「人間として生きるために必須の権利」である必要があります。

「新しい人権」を認めた判例

新しい人権を認めた判例はそれぞれの権利に複数存在します。今回は代表例を紹介します。

①京都府学連事件

これは一般に肖像権を認めたと言われている最高裁判例です。犯罪捜査のために無許可で他者の写真を撮影することは違憲か否かが争われました。詳細はこちらの記事で解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。

②宴のあと事件

こちらはプライバシー権を最初に認めた下級審判決です。自身の私生活が詳しく書かれた小説に対して憲法上の権利が主張できるか否がを争った事件です。詳細はこちらの記事で解説していますので、興味のある方はぜひご覧ください。

本回のまとめ

  • 包括的基本権とは、個人の尊重、生命、自由、および幸福追求に対する権利のこと。

  • 幸福追求権は「新しい人権」を認める根拠になりうる。

  • 「新しい人権」には、人格権があり、具体的には肖像権や名誉権、プライバシー権が認められている。

  • 幸福追求権に関する学説には「一般的行為説」と「人格的利益説」の2つがあり、通説は「人格的利益説」である。

なお、今回をもって、人権総論が終了しました。
次回の記事からは「人権各論」で個別の権利を扱います。

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