【#シロクマ文芸部11月④】最終回
シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。第1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。
上記プラス、おばあさんがお題から始まる部分が読み聞かせをし、その後に孫との会話が続く形で物語が展開します。2025年、12個のお話を上手く完成させられるか、お付き合いいただければ幸いです。
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「十二月……」
「十二月?」
水晶玉の上に手をかざし、半眼にした占い師の姿は鍋の具でふざけていた時とは様子が違います。水晶玉から発せられる光で紅葉色のチークもゆらゆらと揺れ幻想的です。誕生日だからと勇気を出して未来を占ってもらおうと考えたのは正解かもしれない……。
ここで声を出して気分を害されたら……。逸る気持ちを抑え、私はじっと次の言葉を待ちました。
「小さな困難がいくつもあなたを襲うでしょう」
「ええ!そんなぁ」
占いをしてもらおうと思ったのは、今年があまりについてなかったからです。楽しかった学校もクラス替えをしてからつまらなくなりました。仲の良い子は新しいクラスにすぐ馴染んで私と一緒にいてくれなくなりました。新しいクラスメイトとはほとんど言葉を交わせず、気づくとクラスでひとり孤立していたのです。
誕生日だってお祝いをしてくれる友達がいない……このことは私のプライドを酷く傷つけていました。せめて明るい未来を占いで教えてもらえたら……。でも、占い師は部屋に入るなり、
「おやまぁ、心を開こうとしないお嬢さんがやってきたわ」
なんて言うんですもの。カッとなって思わず大声が出てしまいました。そのお陰で、占い師が心を読めるとわかりましたが……だからこそ「困難がいくつかある」という占いは私にはつらすぎました。
「もう……いや……もうやだぁ」
シクシクと泣く私に、占い師は
「心を開くの。自分から動くのよ」
と話しかけます。今までのからかうような声とは違っていたので、思わず顔をあげると、占い師は温かな目で私を見つめていました。
「いつまでも待っているだけじゃダメなの。道は自分で切り開くのです」
「でも私……今まで」
そうです。私はこれまで自分から友達に声をかけたことがなかったのです。気づいたら友達がいた……というか。誰かが声をかけてくれるのを待っているだけだったと気づきます。
ワタシ……コエノカケカタガワカラナイ……
「ど……どうしていいか……ヒック……」
「誕生日にここに来る勇気があるんだから、できるわよ」
「え?なぜ誕生日って?」
誕生日まで知っている占い師に驚いているとあははと笑いながら、
「占いの前に名前と生年月日を書いたじゃない」
と言われ赤面しましたが……あれ?私、書いたっけ?顔を見るなり失礼なことを言われて大声を出して……え?驚く私の口に占い師はそっと手をあてます。
「黙って!これからあなたは積極的に友達に話しかけなければいけません。十二月にもなって初めて声をかけるのですから大変だと思います。でも、一生懸命話しかけなさい。相手のことを考えて話しかけるのよ。自分を知ってもらうために大切なことですから」
長々と話す占い師を水晶玉がゆらゆらと照らすせいでしょうか。私の目には彼女がゆらゆら揺れたり伸び縮みしたり、さまざまな色に輝いたり見えます。その幻想的な姿を見ているうちに、占い師の言葉を信じて行動したいという気持が生まれました。
「……やってみます」
「困難を乗り越えた先には幸せが待っていますよ」
ニッコリと笑う占い師にペコリと頭を下げ、私は部屋を出ました。
次の日から、私は話しかける努力を始めました。
「声出るんだ」
と言われたり、
「わからないのに口を挟まないで」
「意味わかんない」
と言われたりもしました。クラスメイトの強い口調を聞くと、くじけそうになりましたが、その度に占い師の声を思い出します。冷たい視線が辛くはありましたが、占い師の言う希望を信じ、自分のことを理解してもらおうと頑張りました。
「あ!」
クラスの宿題を集めて職員室に持って行こうとした時のことです。綺麗に積まれたノートを廊下にばらまいてしまいました。
「ひとりじゃ無理だって言ったでしょ!」
キツい声を浴びせられ私はしょげ返りました。また失敗してしまった……その思いから体が動きません。
宿題係のクラスメイトがブツブツ言いながら散らばったノートを集めています。
「でも、手伝うって言ってくれて助かった」
「え?」
「他の子、さっさと帰っちゃって、ひとりで持って行くの嫌だったから」
手伝ってくれるんだよね?と振り向いたクラスメイトの顔が笑っているのを見た瞬間、私の心はゆっくりとほどけていきました。無言でノートを拾い始めてしまったので慌てて、
「ご……ごめんね」
と謝ると、
「こっちこそ、大きな声出してごめんね」
とニッコリしてくれました。
終業式当日、私はクラスの女子のクリスマス会に呼ばれています。
「公園の入り口で14時ね!」
「うん!」
友達の家に行くのは初めてだったので家の近くの公園で待ち合わせをすることになりました。プレゼント交換の品物はお母さんと先週一緒に買いに行きました。その時、私が勇気を出して入った占いの部屋の近くを通ったのですが。占いの部屋があったはずのビルはどこにも見当たりません。
お母さんに「占いの部屋あったよね?」と言うと、そんなもの見たことないと不思議そうな顔をされました。
占い師さんに会えたら友達できたよ、勇気をありがとうっていいたかったのに。
「こっちこっち~!」
公園の入り口に先に着いた友達が大声で呼んでいます。
「今いく~!」
私も大声で答え、走り出しました。
📚📚📚
「よかったねぇ」
ほっとしたように弟が言います。
「お友達に声をかけるのってドキドキすることあるの」
と姉が言うので、おばあさんがびっくりして、
「そうなの?」
聞き返します。うん、とうなずきながら姉が
「でもね、勇気を出して声をかけるとお友達になれるんだよ!」
とニコニコしながらおばあさんに飛びつきました。自分で言ったことに照れてしまったようです。
「僕も勇気を出したら恥ずかしかった!」
弟が姉の真似をしておばあさんに飛びつきます。
「うそだぁ、いつもモジモジしてるじゃない」
「してないもん!」
そう言いながらおばあさんに顔をうずめる弟。どうも、おばあさんに抱き着きたかっただけのようです。弟のかわいらしい嘘におばあさんはキュンとして孫2人を抱きしめました。きゃーと笑い声が漏れ、部屋の外からおかあさんの
「まだ起きてる?」
という声が聞こえました。姉と弟は慌てて布団に入り、
「寝てますよー」
と大きな声で返事をします。おかあさんは、それを聞いてしばらく笑っていましたが、リビングの方へ戻って行ったようです。怒られなくて良かったーとホッとする孫達。
「占い師さん、どうしたんだろうね」
「本当にねぇ」
と消えてしまった占い師について孫とおばあさんはしばらく話をしていましたが、しばらくすると可愛らしい寝息が聞こえてきます。おばあさんは電気を消してそっと部屋から出ました。
(おわり)
11月の物語、無事終わらせられました。小牧幸助部長、今週もありがとうございました。
来月は2025年読み聞かせシリーズ最後となる12個目の物語です。
