【#シロクマ文芸部11月③】鍋の具は
シロクマ文芸部の1カ月の全お題を使って一つの物語を作っています。レギュラー部員は月初めにお題を全部教えてもらえるので思いつきました。第1回目は20字小説、2回目以降は文字数制限のないお話というスタイルで毎月挑戦中です。
上記プラス、おばあさんがお題から始まる部分が読み聞かせをし、その後に孫との会話が続く形で物語が展開します。2025年、12個のお話を上手く完成させられるか、お付き合いいただければ幸いです。
11月1回目はこちら👇
11月2回目はこちら👇
「鍋の具はなにがお好みだい?」
大人しく座り直した途端に発せられたこの質問を変に思いました。
「私の将来と鍋の具は関係あるんですか?」
と私は思わず聞き返します。すると占い師はぷぷっと笑って、
「ないよ。今晩鍋が食べたいからお客さんの意見を参考にしようと思って」
そう言われた私は思わずむっとして中腰になりました。
「ごめんごめん」
笑いながら謝ると、占い師はようやく両手のひらを水晶の上に向けます。優しくなでるように手を動かす様子は占い師そのものです。
やっと本気で占ってくれるようね。
浮き上がりかけた腰を椅子に下ろし、私はそっと占い師と水晶を見つめます。水晶が冷たい色合いから温かなものへと変わり、中で煙のようなものがほやほやと動き始めたように見えました。部屋の中に厳かな空気が流れ始め、私の背筋も自然と伸びます。
この人、占いの才能はある気がする
緊張でゴクリと喉も鳴りました。
「視えた……」
「な、なにが視えたんですか?」
「大根だね……」
「え?私のラッキーアイテムがですか?」
違うよ、と笑う占い師。
「あんたの好きな鍋の具は「大根」だって水晶が教えてくれた」
「鍋の具なんて透視しないでください!」
「だって、素直に教えてくれないからさ」
頓珍漢な会話となりましたが、確かに私の好きな鍋の具は大根です。私の心を覗ける占い師は確かな能力を持っている……これはもう、絶対私の未来を絶対に占ってもらうしかない……
占い師にしっかりと向き直り、私は再度口を開きました。
「そろそろ本当に占ってもらってもよろしいでしょうか?」
「おや、意外と骨のあるお客さんだね。こりゃやりがいがあるわ」
占い師は再び両手を水晶玉の上へとかかげました。
📚📚📚
「ぼくはトリニク」
「え?」
弟の突然の言葉におばあさんは不思議そうな顔になりました。
「私は卵!」
姉の発言で、孫達がお鍋の好きな具を言っていることに気づいたおばあさん。
「私は豆腐かな」
と返しました。
「お姉ちゃん、ぼくはおなべの好きな具をを言ったんだよ?おでんじゃないよ」
「わかってる。でもおでんもお鍋だよ」
えーそうなの!と目を丸くする弟にドヤ顔をする姉。
「パエリアもチゲもお鍋って意味なんですって。どこの国もお鍋はバラエティ豊かなメニューなのねえ」
とおばあさんも続きます。おでんならちくわぶも好きだ、鍋の具はトリのつみれも好き、牛も豚もお魚もだ~いすきと盛り上がっているうちに寝る時間となりました。
「明日はお鍋にしようってお母さんに頼もうね」
「うん……」
あっという間に眠りについた孫達の口元がもごもごと動いているのに、おばあさんは気づきました。
「夢の中で鍋パーティーをしているのかな?」
そっと笑いを押さえながら、おばあさんは部屋の電気を消しました。
(つづく)
小牧幸助部長、今週もありがとうございました。
