「令和の働き方」という言葉が、昭和の間違いを正当化している
「令和の働き方」という言葉を聞くたびに、少し違和感がある。
令和のマネジメント。
令和の人材教育。
令和のワークライフバランス。
まるで昭和には昭和の正解があり、時代が変わったから、新しい正解に入れ替えなければならないような言い方だ。
でも、本当にそうだろうか。
長時間働く。
上司が帰るまで帰れない。
残業時間で熱意を測る。
睡眠や家族との時間を削って会社に尽くす。
これらは、昭和だったから正しかったのではない。
昔から間違っていたものを、「当時はそれが普通だった」という言葉で見逃していただけではないか。
反対に、ワークライフバランスを守りながら成果を出す働き方は、令和だから正しいのではない。限られた時間で成果を出せるなら、それはいつの時代でも合理的だったはずだ。
働き方を「昭和か令和か」で分けるのは、もうやめた方がいい。
問うべきなのは時代ではない。
その働き方は、成果につながっているのか。
そして、人を壊さずに続けられるのか。
それだけだ。
8回転職して分かったのは、長く働く会社ほど強いわけではないということ

僕はこれまでに8回転職してきた。
業界も違えば、会社の規模も、上司の考え方も、職場の空気も違った。
長時間労働が当たり前の職場もあったし、残業をできるだけ減らそうとする職場もあった。
いろいろな会社を見てきた中で感じたのは、長く働いている会社ほど成果が出ているわけではない、ということだ。
遅くまで残っている人が多い。会議も多い。メールも報告書も多い。みんな忙しそうにしている。
それでも、仕事が前に進んでいるとは限らない。
むしろ、優先順位が曖昧で、誰も仕事を減らせず、無駄を無駄と言えないから、労働時間だけが伸びている職場もあった。
忙しいことと、成果が出ていることは別だ。
汗をかいた量は、成果の単位ではない。
「昔はみんなやっていた」は、正しさの証明にならない
昭和の働き方を語るとき、よくこんな言葉を聞く。
「昔はみんな遅くまで働いていた」
「休日出勤なんて当たり前だった」
「俺たちの時代は、それくらいやった」
おそらく、それ自体は事実なのだろう。
だが、みんながやっていたことと、それが正しかったことは同じではない。
上司が帰るまで部下も帰れなかった。体調を崩すまで働く人が評価された。
長く会社にいる人ほど、熱意があるとみなされた。
それらが当時の慣習だったとしても、成果につながる合理的な仕組みだったとは限らない。
時代背景は、間違いが存在した理由にはなる。
しかし、間違いを正解には変えない。
昭和だから正しかったのではない。
ただ、間違いを間違いだと言いにくかっただけだ。
昭和対令和ではない。成果対自己満足だ
働き方の議論は、すぐに世代対立になる。
昭和世代は根性がある。
令和世代は効率を求める。
昭和世代は仕事を優先する。
令和世代はプライベートを優先する。
だが、この分け方では本質を見失う。
昭和にも、短時間で大きな成果を出していた人はいる。
令和にも、効率化という言葉を使いながら、何も生み出していない人はいる。
長く働く人が優秀なのではない。
早く帰る人が優秀なのでもない。
本当の対立軸は、昭和対令和ではない。
成果につながる働き方か。
働いた気になれるだけの働き方か。
ここだ。
毎日遅くまで残る。
大量のメールを返す。
会議を何件もこなす。
休日にも連絡を確認する。
それで「仕事をした」と感じるかもしれない。
しかし、忙しかったことと、価値を生み出したことは別である。
長時間働いたこと自体には、価値はない。
定時で帰ったこと自体にも、価値はない。
価値があるのは、その時間で何を生み出したかだ。
長時間労働は、仕事の実力を隠してくれる

長時間働けば、短期的に処理できる仕事量は増える。
納期直前やトラブル対応など、一時的に踏ん張らなければならない場面もある。
だから、長時間労働そのものを全否定したいわけではない。
問題は、それを日常にすることだ。
時間を無制限に使える環境では、仕事の進め方を改善しなくても何とかなる。
会議が長くてもいい。判断が遅くてもいい。資料が無駄に多くてもいい。仕事を人に任せられなくてもいい。
最後は残業すればいいからだ。
つまり、長時間労働は、ときに仕事の実力不足を隠してくれる。
優先順位を決める力。
仕事を捨てる力。
人に任せる力。
業務を仕組みにする力。
限られた時間で価値を最大化する力。
それらが不足していても、労働時間を増やせば、表面上は仕事が回っているように見える。
時間を増やせば成果を出せるのは、能力ではない。
時間に頼らず成果を出すところから、能力の差が始まる。
「ワークライフバランスでは仕事にならない」は、誰の問題なのか
一定数、こう言う人がいる。
「ワークライフバランスなんて言っていたら、仕事にならない」
「成果を出したいなら、プライベートを犠牲にするのは当然だ」
正直に言えば、僕にはこの言葉が、能力不足の言い訳に聞こえることがある。
ただし、ここで言う能力とは、個人の作業速度だけではない。
仕事を整理する能力。
不要な業務をなくす能力。
優先順位を決める能力。
人員を適切に配置する能力。
部下に仕事を任せる能力。
成果の基準を明確にする能力。
ワークライフバランスを守ると仕事が回らなくなるのなら、働く人の根性を疑う前に、仕事の設計を疑うべきではないか。
無駄な会議も残したまま。曖昧な指示もそのまま。遅い承認フローもそのまま。属人化した仕事もそのまま。
その状態で労働時間だけ減らせば、成果が落ちるのは当然だ。
しかし、それはワークライフバランスが間違っている証拠ではない。
もともとの仕事が、残業を前提にしか成立していなかった証拠だ。
生活を壊さなければ成立しない仕事は、働く人ではなく設計に失敗している。
ワークライフバランスは「甘え」ではない。仕事の実力テストだ

ここは誤解されたくない。
ワークライフバランスを口にすれば、成果を出さなくていいわけではない。
定時で帰ることが正義なのでもない。
やるべき仕事を放置する。責任を引き受けない。学ぶことまで拒否する。成果を出していないのに、権利だけを主張する。
それは合理的な働き方ではない。ただの責任放棄だ。
ワークライフバランスとは、仕事を緩くする思想ではない。
限られた時間で、必要な成果を生み出せるかを問う思想だ。
時間が無限にあるなら、無駄な仕事を減らさなくても何とかなる。
しかし、働ける時間に上限があると、そうはいかない。
本当に必要な仕事は何か。
やめるべき仕事は何か。
誰が決めるのか。
どこまでやれば十分なのか。
何を成果と呼ぶのか。
これらを明確にしなければ、仕事は終わらない。
だから、ワークライフバランスは仕事をしないための逃げ道ではない。
仕事を雑な根性論から、精密な設計へ変えるための考え方だ。
そしてそれは、社員の甘さを測るテストではない。
労働時間に頼らず成果を出せるか。
組織の実力を測るテストだ。
目指すべきは「令和らしい会社」ではなく、まともな会社だ

令和になって、急に正しい働き方が発明されたわけではない。
長時間労働の非効率さも、曖昧な指示の危険性も、人を使い潰す組織の弱さも、昭和から存在していた。
変わったのは、正解ではない。
間違いを指摘できる環境だ。
以前は、会社に従うことが当たり前だった。転職の選択肢も今ほど身近ではなく、他社との比較も難しかった。職場に違和感があっても、「どこの会社も同じだ」と片づけられた。
だから、多くの人が耐えた。
だが、耐えられていたことと、正しかったことは違う。
令和の若者が弱くなったのではない。
昭和の理不尽を、理不尽だと言えるようになった。
それだけなのかもしれない。
そして、会社側も「令和らしさ」を演出するだけでは意味がない。
リモートワークなのに、監視だけが増える。
残業は禁止なのに、仕事量は変わらない。
有給休暇を推奨しながら、休むと評価が下がる。
ワークライフバランスを掲げながら、管理職だけが毎晩働いている。
これでは、昭和の働き方に令和のラベルを貼っただけだ。
必要なのは、流行の制度ではない。
評価基準を変えることだ。
何時間働いたかではなく、何を生み出したか。
どれだけ苦しんだかではなく、どれだけ改善したか。
一人で抱えたかではなく、誰でも回せるようにしたか。
今月を乗り切ったかではなく、来年も続けられるか。
正しい働き方は、時代で決まらない。
成果が出るか。
継続できるか。
人を壊さないか。
再現できるか。
見るべきなのは、それだけだ。
令和らしい会社を目指す必要はない。
まともな会社を目指せばいい。
昭和の働き方が間違っていたのは、昭和だったからではない。
令和の働き方が正しいのも、令和だからではない。
長く働いても成果が出ないなら、間違っている。
生活を守りながら成果を出せるなら、合理的である。
ただし、ワークライフバランスを成果から逃げる言い訳にするなら、それも間違っている。
「昔はみんなやっていた」
「俺たちはそれで成長した」
「ワークライフバランスなんて言っていたら仕事にならない」
そんな言葉で、労働時間に依存した仕事の未熟さを隠すのは、もう終わりにした方がいい。
長時間働ける人が優秀なのではない。
長時間働かなくても成果を出せる人が、仕事を設計できる人だ。
僕たちが求めているのは、「令和の働き方」ではない。
本来、いつの時代にも存在するべきだった働き方だ。
僕はこれまで8回転職し、文化も規模も違う職場を見てきました。
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「何となくおかしいと思っていたけれど、うまく言葉にできなかった」
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