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【#32】映画memo『TOKYOタクシー』

スキマからこんにちは。
いそいそと張り切って観てきましたよ。
 
あーだこうだ言いながら、私からすると、“ちょっとお兄さん”のキムタクをずっと見てきたのでね。
今回は、大御所である倍賞千恵子さんがお相手です。
 
山田洋次監督最新作
『TOKYOタクシー』。
 
※展開がわかることが嫌な方は、鑑賞後にお読みいただけるとうれしいです。

あらすじ

タクシー運転手の宇佐美浩二(木村拓哉)は、ある日、八十五歳の高野すみれ(倍賞千恵子)を東京の柴又から、神奈川の葉山にある高齢者施設まで送ることになった。
すみれは浩二に、いくつか寄り道を依頼する。
次第に心を許したすみれは、自らの壮絶な過去を語り始める。
偶然出会った二人の心が、そして人生が大きく動いていくことになる――。

Filmarksより

キュートな千恵子ד市井の人”なキムタク

千恵子が可愛い。倍賞さんは『男はつらいよ』の時も『幸福の黄色いハンカチ』の時も『ホノカアボーイ』の時もいつだって可愛かったけれど、年齢を重ねてさらに品のある美しさに磨きがかかっている。
やっぱり声がいいですよね。聞きやすくて。歌を歌う方って、声質がいいのはもちろんだけど、台詞回しのリズムもよくて、心地いいことが多い。
 
対して、検事やらシェフやら信長やら、かっこよさ担当ポジションの男ばかり演じてきたキムタクが本作で演じるのは、娘の教育資金(クラリネットの音色は使わんのかーい、とツッコミたくなる)に頭を悩ませるタクシー運転手。
木村さんの市井の人、なんか結構、新鮮です。主役だったりかっこいい役ばかりじゃなく、ゲストの犯人役とか、今回みたいにお金に困っているような役もどんどんやられたらいいと思う。
 
結果、かっこよくなっちゃっても、それはもう宿命ということで。
華があるからどうしても目立っちゃうけど、受けのお芝居もしっかりできるということが改めて証明されたのでは。
 
バックミラー越しに倍賞さん演じるすみれに呼応するお芝居、かなりよかった。ラストの静かな涙もいい。
『PERFECT DAYS』の役所広司みたいに何とも言えない表情をしてくれる日もやってくるかもしれない(あれは忘れられない)。
 
筒井道隆も前に同じようなこと、言ってましたよ。主役ばっかりやるなって。私も本当にそう思います。

“いま”と乖離のある台詞の数々

で、ストーリーと脚本について。
きれいな東京(神奈川も出てくるけどね)の街並みをバックに、一人の女が乗り合わせたタクシーの車内で波乱万丈人生を語りだす。
 
いや、高野すみれって。女優かよ!な役名ですが、倍賞さんにはよく似合う。色っぽい初恋の人(イ・ジュニョン)にずっと想いを寄せてきたすみれが、ダメDV夫(迫田孝也)との日々を苦悶の表情で回想していく。
 
脚本のせいで、所々話しづらそうにされていますが、逆に言うと、この台詞で持たせられる倍賞さんってすごいな、と心の底から思いました。
 
キムタクの妻を演じる優香の台詞もなかなか酷かった。古臭くて。回想シーンは大昔のことだからさておき、妻が生きているのは令和ですから。優香の“力技のおばはん芝居”で、監督は命拾いした気がする。
 
周りの人間も大御所だからって忖度するなよ。変だから。大御所への忖度といえば、最近観た『港のひかり』でも感じましたよね。誰も意見を言えないってことなのか。
 
私は制作に携わっていた頃、「監督、ここ、娘はこんな風に言わないんじゃないかな。こういうのはどうかな」などと演出家に提案していました。「ばかやろう、お前それは〇〇だよ、〇〇が××で……でも確かにお前の言うことも一理あるな」って意見を汲んだりしてくれたものです。
 
一緒に書いていらっしゃる朝原雄三さんも61歳のようだから94歳の山田監督にアドバイスするにも限界があったのかなと思う。

“弱そうでいて強い”女・すみれ

覚悟を持ってたくましく生きるすみれの前半部分を蒼井優ちゃんがきりっと演じている。よくある演出とはいえ、タクシーの中で今現在のすみれと互いを慈しむかのように触れ合うシーンが愛おしい。
 
偉そうにホンへのダメ出しはしてしまいましたが、山田監督って、女の人の強さをきれいに、そして恐ろしく撮りますよね。
 
すみれは、迫田孝也演じる、嫌なヤツを凝縮して煮詰めたような夫・小川の股間を煮えたぎった油で焼いちゃう。昔のドラマ『阿修羅のごとく』での和田勉のホラー演出ぶりを少し思い出します(あれも忘れられない。気になる方は調べてみてください)。
 
裁判ですみれが自分の名前を「小川」ではなく旧姓である「高野」だと主張するところもよかったです。
 
山田監督は、可憐でありながら、“信念を曲げない”女の人の描写が本当に上手。子どもに虐待する男への怒り、そしてそんな男に一度でも頼ってしまったすみれの哀しみが伝わってきました。

人生讃歌の物語とスイーツの誘惑

すみれさんと一緒に東京の名所を辿りつつ、マジックアワーのレインボーブリッジを眺め、一期一会の出会いを思い出す……。
 
人生を優しくそっと包み込むようなお話です。
あ、帰りにシュークリームが食べたくなるから、ダイエット中の方は心しておくように(私はシュークリームがなくて、関係ないプリンを食べたw)。
 
観た映画の感想は「マガジン」にまとめているので、他の作品の記事も、よかったら読んでみてくださいね!

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