「FIREダンジョンズ」(仕事と、転職と、投資術のファンタジー)④まさかの全滅!
会社員じゃない生き方がしたい。
ある日わたしはそう願ってしまった。
それが何を意味するかも知らずに。
あのときからわたしは旅に出たのだと思う。
アバターをつくり、オンラインRPG「FIREダンジョンズ」に参加した。

はじまりの町で「ゲームをクリアするまで元の世界に戻れない」と告げられたプレイヤーたち。主人公のパーティーは、暗闇の洞窟ダンジョンでモンスターと対峙するが……
投資系YouTuberのバンプさん(筋肉むきむきのおじさん)に「おまえたちを仲間だと思っていない」と言われる。

フルーツ(※ 仲間の名前)のアイテム「スモールライト」で洞窟を照らそうとしたが不発。

暗闇ダンジョンのモンスターは、カイシャイーン・ゴブリンタイプ。
意志を持たない怪力。敵を殲滅するまで拳を振るうのみ。
対するは、著名投資家のバンプさん。
彼、いや彼女は一撃必殺の武器があると言うが……。
「コンサルの魔法」ぴかー。
わたしが放つ光の中、両者が激突する。
バンプさんの武器とは……?
何も持っていないように見える。
両者、全力疾走。
このままでは激突する。
相手の拳は岩をも砕くという。
バンプさーーーん!
ゴブリンが拳を繰り出す直前だった。
バンプさんがかがんだ。
ダイヤモンド・クリティカル・アッパーーー!
アッパーで殴ったーーーっ!
モンスターが砕け飛ぶ。光の粒子になって四散した。
す、すごい。そして、投資術ぜんぜん関係ない。
「ふん、頼れるものは己の肉体のみだ」
さすが中身は筋肉むきむきのおじさん。
けど、この技、めっちゃ接近しなきゃだめじゃん。汎用性ゼロだよね。脳まで筋肉になっちゃったの!
「仲間の仇はうったぞ。これでクリアってことでいいのか、カイシャイーン」
本体がここにはないカイシャイーンに向かって呼びかける。
「ふっふっふ、なかなかやるではないですか。さすがプレミアムユーザー」
洞窟に声だけが響く。
嫌な予感がする。ダンジョンクリアなら、ここは暗闇のままではないように思うのだ。
「コンサルの魔法」ぴかー。
洞窟の様子は先ほどと変化がない。
「では、そろそろ本番といきましょう」
ドタドタと奥から嫌な音が聞こえてきた。
たまらず、もう一発光の矢を放つ。
ドタドタドタドタ。
「コンサルの魔法」ぴかー。
あ、終わった……。
直感してしまった。
ゴブリンが、3体、5体、10体……、いやそれ以上?
「くっくっく。誰がゴブリンは一体だと言いました? カイシャイーン・ゴブリンタイプは集団で動きます。彼らには意志がない。しかし、直観しているのです。ひとりひとりは無能でも、団結したほうが強いに決まっていると。これがゴブリンタイプの真の強さ。さあ、われわれを馬鹿にした罪を償いなさい」
わたしは叫んだ。
「バンプさん、逃げましょう! 撤退です。全力で逃げれば、誰かが助かるかもしれません」
バンプさんは振り返らなかった。
「おまえたち、迷惑をかけてすまなかったな。あたいの見立てが甘かった。ここはなんとかする。おまえたちは逃げろ!」
「バンプさん」「バンプ殿」
「ダイヤモンドクリティカルアッパーが縦の動きだけだと思うなよ。横にだって飛べるんだ。うおおおお!」そう言って拳を握り、ゴブリンの群れに突っ込んだ。
しかし、一撃目よりも勢いが弱い。
一体を吹っ飛ばしたものの、ゴブリンの集団にもみくちゃにされる。
バンプさーーーん!
バンプさんのHP(ヒットポイント)のゲージがどんどん削られる。
なんとかしなきゃ。
「コンサルの魔法!」
光の弓を飛ばそうとしたが、不発。わずかな明かりがともっただけ。連発しすぎてマジックポイントが切れた。
HPのゲージが残り50、30、20、10……、無情にも0。
バンプさんは死亡した。
われわれもすぐ同じ運命を辿るだろう。
ゴブリンたちがこちらに襲いかかってくる。それは黒い津波。
なにか、なにかできることは?
最後の思考がスモールライトを求めた。
フルーツの手にあったそれを握る。スイッチを長押しした。
モンスターが、モンスターの波が覆いかぶさってくる。
終わった。全滅。
どうか苦痛がありませんように。
……………………
あたりが眩しい光に包まれている。
目を開けていることはできる。黄金色の他に何も見えないだけ。
ここは、死後の世界だろうか。
『おまえたち、わたしの声が聞こえるか……』
誰だ、聞き覚えのない声。
「創造主?」
この声はフルーツ! そばにいるのか?
『そうだ……、よくわかったな。おまえたちと取引をしにきた』
取引……。
『わたしは、おまえたちを逃がしてやることができる。この世界から。このゲーム、FIREダンジョンズから』
さすが創造主、ゲームの開発者。
いったいどんな顔をしているのだろう。
眩しくてよく見えないが、全体的に茶色い感じがする。うっすらとではあるが、きのこっぽいフォルムをしているような気もする。
『ボーナスチャンスもあるぞ。もし、わたしの好物を当てることができたら、』
「チョコレート」「チョコレート」
『……すごいな、おまえたち。では、特別に選ばせてやろう。FIREダンジョンズから脱出する権利か、あるいは、この世界に残るつもりなら、ひとつだけ願いをかなえてあげよう』
ごくっ。脱出できるのか、このゲームから。
迷わなかった。
「残ります。この『FIREダンジョンズ』に。そして、願いをかなえてください」
『ほう、酔狂な。その願いとは』
「お願いです。バンプさんを助けてください。HPが0になったばかりです」
バンプさんは仲間想いのいい人だ。必殺技はあれだけど、ゲームをクリアできる可能性のある優秀なプレイヤーだ。
『では、おまえは?』
今度はフルーツ。頼むから、あんま変なこと言わないで。
「むろん、オレも残る。願いはそうだな……、ずっと気になってたんだ。この世界には何かが足りないと。おかげでようやく気づけたぜ」
(なんか、いいもんもらってな)
「カロリーメイトにメイプル味がない」
(…………)
『わかった。おまえたちの願いを叶えよう。それでは、今度はわたしの番だ。最初に取引と言ったはず』
ごくっ。
『スモールライト回収させて』
えっ……。
『スモールライトなんてものは、はじめからなかった。ぜったい他の人に言わないでね。約束だからね』
やっぱりあれ、ゲームのバグだったんだ。
『最後に、先輩からのアドバイスだ』
先輩――?
『わたしが消えたあと、このダンジョンからどうやって抜け出すつもりだったんだ?』
あ……。
『特別サービスだ。この程度のモンスターなら一発で葬り去れる。おまえたちも強くなれ。ずっと先の階層で待っているぞ』
「もしかして、あなたもプレイヤー? ずっと戦っているのですか。真のFIREを求めて」
『さらばだ。ぜったいスモールライトのこと言わないでね』
直後、光がさらにまぶしくなった。
……………………
その後、わたしたち3人は草原に横になっていた。
ふぁい、フルーツ、そして、バンプさん。
洞窟は跡形もなくなくなっていた。
「なぜ、あたいを助けた? とは言わない。ありがとうな……」
空にはうっすら一番星が見える。
「あたいは有名になって自惚れていたみたいだ。イチからやり直し。アカウントも初期状態に戻っちまった。もうプレミアムユーザーでもない」
バンプさん……。
「武器も『シルバーマッスルアッパー』に格下げだ」
だから、アッパー選ぶなって。
「おや、バンプ殿の名前が(名無しさん)になっているが」
「ああ、これもちょうど良かった。あたいは『バンプ』なんて名前好きじゃない。だって、可愛くないじゃない。YouTuberの知名度が利用できるから使ってたんだ」
「そうだったんですね」
「だから、おまえたちが決めてくれ」
「えっ」
「へへ、正式にお前たちのパーティーに加わるんだからな。可愛い名前を頼むぜ。あたいを再生させてくれたヒー・ロー・さん」
わたしはフルーツとアイコンタクトをとる。
そこに言葉は必要なかった。
「ようこそ、わたしたちのパーティーへ」
せーの、
「メイプル」「メイプル」
「まあ、素敵!」
こうして、焔ふぁいは3人目の仲間を得た。
進もう、この厳しくも愛のあるFIREダンジョンズを!

【NEW】続編です。よろしくお願いしまーす!

好評だったら続くシステムです(スキをくださーい)
▼記事を書いたのはこんなひと▼
FIREの精霊でーす!
— 焔ふぁい|FIREの精霊 (@rockstar_narite) March 21, 2026
土曜日なのにFIRE日誌を書くよ。
・noteで創作した
・四季報でMyデータベース更新した
・平日よりも仕事してる感がありますー!
最近、毎日FIRE日誌をつけています。
▼創作にもエッセイにも挑戦▼
一歳のときの思考を言語化した気合のエッセイ。
こちらは「メタルと、魔法と、非モテのファンタジー?」
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クリエイターであり続けたいー! が、整体に行かないと死ぬ。ポンコツゆえ、ポンコツゆえ、300円よろしくお願いしまーーす!