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shiroyukimin
【小説】『ココロ走る』 第1話 静かなる摩耗
2020年4月。
東京に緊急事態宣言が出された。
世界中の誰もが戸惑っていた。
駅のホームは静まり返り、街から音が消えさっていった。
しかし、私はいつもどおり会社へ向かった。
家にいても落ち着かない。家族もそれぞれの時間を持て余しているといった風である。
私は不動産会社で、営業部門の管理職の立場にいた。
部下の生活とメンタルを支えながら、上からは営業の数字を上げることを要求される。
「森山さん、どうにかしてください」
「森山、なんとしても営業成績あげろ」
この緊急事態の中、私の心は静かに摩耗していた。
眠れない日が続いた。
布団に入って目を閉じても、クライアントからのメールの件名がフラッシュバックする。
電話の着信音にびくっとする。
“ここから壊れるな”って、自分でも分かる瞬間があった。
ある日の夕方、いつもの駅ビルから歩いて帰る途中。
ふと見上げた空に、オレンジ色の夕陽が、ビルの谷間に沈んでいくのが見えた。
心にふっと隙間ができた。
そして、気づいたら走り出していた。
革靴のままだった。
目的地なんてなかった。
ただ、止まったら何かが終わる気がしていた。
息が切れて、足が重くなって、喉が渇いて、
それでも走った。
それが、自分を救うきっかけになるなんて、
そのときは思ってもいなかった。
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※これは事実をベースにしたフィクションです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
小さなことでも、感じたことがあればコメントで教えてもらえるとうれしいです。
