漫画家アシスタント物語 古い話で章〈15〉 師匠は、剣豪を見切る若侍!
《 写真上:目白の、秋山プロの入っているマンションを撮影した写真です。撮影時期は、2014年の5月で気持ち良くシャッターを押したのでしたが‥‥頸椎ヘルニアで背中は痛いわ、膝も痛いわ、空の財布で懐も痛いわ‥‥ 》
< この「古い話で章〈15〉」は、文庫本約9ページ分 >
「古い話で章」は、独立した「章」ですので、「諦めま章」の続きではありません。 無料で、各話、お楽しみいただけます!
ただし‥‥ 各話が連続していますので、「古い話で章〈1〉」からお読みいただく方が、よろしいかと思います。
はじめての方は、「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!
その29
《 漫画家アシスタントが・・・本気モードのスイッチを・・・!? 》
私は、以前‥‥‥‥といってもかなり前ですが‥‥‥‥
まだ、若い頃‥‥ 秋山プロに入って2,3年しか経っていなかった頃( 1980年頃 )だと思いますが‥‥‥‥
忘年会か何かの席で、ジョージ先生から唐突に‥‥
「 おめぃ~はズタズタになるタイプだな‥‥‥‥ 」
‥‥‥‥と、言われた事があります。
その時、どういう意味でそう言われたのか、よく分かりませんでしたが‥‥‥‥ 前回、ジョージ先生が人を「切る」冗談のような話を書きながら、ふと気づいたのですが‥‥‥‥
これは、きっと、私が「剣豪」ではさらさらなく、「 ヘナチョコ野郎 」で多くの人から斬られっぱなしになると予想した言葉だったのでしょう。
事実、よく‥‥‥‥
「 あんた、ジョージ先生の弟子なのに、普通の人だね 」
「 サングラスなんかして、外見だけ先生の真似かい 」
「 小池さんの漫画は、先生の漫画に比べるとなぁ‥‥ 」
‥‥‥‥なんて言われても、言われっぱなし。( 斬られっぱなし )
「 ジョージ先生のとこで、何年やっても漫画家に成れない 」
‥‥‥‥これでも言われっぱなし。( 斬られっぱなし )
世の中には、初対面でも真剣で切りつけるタイプの人( 多くは有名漫画家 )がいるのです。
それをしっかりと受け止め、斬り返す事が出来るようでないと‥‥‥‥ なかなか大物には成れないのでしょう。
例えば、漫画家大先生から、軽いジャブで‥‥
「 君の漫画は‥‥つまらないね ぇ」
そう言われたら‥‥?
若いジョージ先生なら、即座に‥‥
「 お前がもう古いだけ 」
‥‥と、簡単に、何の苦もなく、躊躇もなく、斬り返すはずです。
数年前に、ジョージ先生から聞いた面白い話で、こんなものがあります‥‥‥‥
まだ、ジョージ先生が若かった頃( たぶん1960年代末、先生20歳代 ) ‥‥‥‥ 週刊誌で数本の連載を持ち始めた頃だと思います。
銀座の某クラブで、有名な漫画原作者のK大先生と出会った時の事です‥‥‥‥
その当時の漫画原作者K大先生は、ほぼ全ての少年誌で大ヒットを飛ばし、その作品の多くがテレビアニメで高視聴率を叩き出していた‥‥‥‥ まさに、黄金時代でした。
ただ、このK大先生‥‥‥‥ 業界では大変に恐れられた豪傑の一人‥‥‥ 並びうる人物とていない、まさに業界に覇王のように君臨する親分的存在でした。
彼には、まだ20歳代のジョージ先生は、ただの甘っちょっに見えたに違いありません。 銀座の高級クラブ‥‥ 一番奥の席でにらみを利かせるK大先生‥‥‥‥
顔を見知っていたK大先生は、店に入って来たジョージ先生の顔を見ると‥‥‥‥
「 おい、ジョージだよな? 」
‥‥‥‥と、野太い声でこっちへ来いと促します‥‥‥‥
通常の漫画家なら、この段階でペコペコと「 ご挨拶 」となるのですが‥‥‥‥
ジョージ先生は、「 なんだよ? 」‥‥という平然とした態度で、K大先生の前に立ちます‥‥‥‥( 元々、人に媚びる男ではありません )
すると‥‥ K大先生は、ス~と右手を差し出して握手をしようとします‥‥‥‥
この時に、K大先生の手と不用意に握手をすれば、大変な事になります。 その怪力にものを言わせて、相手の手を握り潰し、苦痛の悲鳴をあげさせて「 挨拶 」に代えるわけです‥‥ そして‥‥‥‥
この瞬間から、主人と奴隷の( 精神的に )関係になってしまいます。
ジョージ先生は、その噂を知っていたので‥‥‥‥ 瞬間的に、ごく浅くしか手を握りませんでした。( 悪との接し方には慣れている )
そのため、K大先生が握力を加えても、指の先が潰れるだけ、それほどの痛みはありません。
大先生、さらに力を込めてつぶしにかかります‥‥‥‥
ところが‥‥‥‥
「 !? 」
ジョージ先生は平然‥‥‥‥‥‥
「 お前‥‥‥‥ なかなかやるじゃないか 」
‥‥‥‥そう言ってニヤリと笑ったそうです。
私だったら、小便漏らして泣いてるところだと思います。
さて、そんな業界の「 剣豪 」どもの戦いなんぞ、知る由もない漫画家アシスタントの加川さん‥‥‥‥
秋山プロに来てからの1年間は、フラ~フラ~~~と、風に漂よう綿ホコリのように呑気に過ごしていたのですが‥‥‥‥‥‥‥‥
彼女もでき、極貧暮らしにもうんざりし始め‥‥‥‥‥‥ いよいよ、漫画道への本気モードに入ります。
独身男性は誰でも‥‥‥‥
『 3,4年したら、何ンとかなンだろ~! 』
‥‥‥‥ってな、軽い気分でいる時期というものがあるかと思いますが‥‥‥‥
女ができると人は変わるものなのかどうかは、わかりませんが‥‥‥‥
とにかく、加川さんにも漫画創作の意欲がムラムラと訪れるわけです。
20歳代の前半、こうした上昇志向の波に乗れると強いもので、その勢いは簡単には収まりません。
『 よし、俺は、毎週一本、漫画を描いてやるぜ~っ! 』
♪ や~ると思えば~~どこま~で~~やるさ~~ ♪
(「人生劇場」作詞:佐藤惣之助、より)
男一匹、漫画家アシスタントが本気を出しますのですが‥‥‥‥‥‥‥‥
つづきは次回に‥‥‥‥

その30
《 漫画家アシスタントが・・・全力で空回りする!? 》
「 絵なんて描いていりゃ~上手くなるもんだよ 」
‥‥‥‥とか
「 漫画は、描き続ける事でどんどん良くなるのだ 」
‥‥‥‥とか、言われますが‥‥‥‥‥‥
同じような( レベルの )絵を何枚描いても、また、同じようにつまらない漫画を何本描いても、まったく上達はしないものです。
どこに問題があり、どう解決するのか‥‥‥‥ 論理的に解くだけの脳力か、直感力( 才能 )が必要とされるわけです。
何本描いてもダメな時に先生に言われるのが‥‥‥‥
「 本を読むんだ! 」
そして‥‥ 何100冊と読んでもダメな時に‥‥
「 頭を使って読め 」
頭を使って本を読んで、描いてみても‥‥‥‥‥‥
「 発想が弱い‥‥‥‥奇抜なアイデアが必要なんだ、もっと勉強しろ! 」
「どう勉強するんですか?」
「 本を読むんだ!」
『 本を読め‥‥‥‥って今更? 』( 疑い出す )
「 頭を使うんだ! 」
このあたりまで来るとほとんどの人間は、ヘトヘトに疲れてしまい創作どころではなくなります。
同じところをグルグルと回り続けているような空しさに襲われるのです。
もっとも、弟子がそうなる事が分かっているのに、批評し続ける先生も複雑な心境かも知れません‥‥‥‥
さて、私の先輩アシスタントである加川さんが、その創作意欲に火をつけて毎週のように作品( 絵コンテ )を持って先生を訪ねます‥‥‥‥
自分に向かって『 毎週一本描いてやる! 』という決意を胸に、猪突猛進‥‥‥‥
この状態が1970年、加川さんが20歳の頃、ほぼ一年間続きます‥‥‥‥
毎週、一本描いた絵コンテやネーム( セリフだけのシナリオ )をジョージ先生の応接用のデスクの上に置いておくのです。
すると、次の日には、その絵コンテやネームの用紙に赤ペンで「 × 」が記されて置いてあります。
それを見ると‥‥‥‥
ほとんどのセリフやコマに赤い「 × 」が記されているわけです‥‥‥‥
ただ、ほんの一カ所か二カ所‥‥‥‥ 「 無印 」になっているコマがあるのですが‥‥‥‥
その意味は‥‥‥‥
『 お前の原稿で使えるのはココだけだ! 』
‥‥‥‥という意味なのです。
ジョージ先生の教え方がまるで禅問答のように難解なのですが‥‥‥‥ 全てのアシスタントが、この( 似たような )洗礼を受けます。
何本も何本も、同じように赤ペンで「 × 」が付けられるだけの指導( ? )について、私は、当時を懐かしそうに話してくれる加川さんに質問してみました。
「 ( 先生は )ここはダメだけど、こ~すれば良くなるよ‥‥‥‥ とかいった言い方はなかったんですか? 」
「 なかったね 」
「 ここは、こ~すれば面白くなる‥‥ とかも? 」
「 そんな言い方、一切ない! 」
「 『 × 』とかダメ出しするだけですか? 」
「 そう‥‥‥‥ とにかく‥‥‥‥『 こっちのコマ全部、無駄、いらねぃ 』って言うだけ 」
「 でも、それでわかるんですか? 」
「 わかんね‥‥‥‥ 全然、分かんねえ! 」
「 そ‥‥ それで‥‥‥‥ど~するんですか? 」
「 また、描いて持って行く‥‥‥‥ 」
「 ダメな部分をどう修正したら良いかわかって? 」
「 それも、わかんね 」
「 漫画家アシスタント物語 古い話で章〈16〉」へつづく・・・・
「古い話で章〈14〉」へもどる‥‥
「もくじ」 へ‥‥
⇩⇩ イエス小池、チェンマイ楽隠居の現実‥‥ マガジン・シリーズ!
⇧⇧ 全部、無料です!
いいなと思ったら応援しよう!
年金生活者にとって、とても嬉しいご支援! 感謝申し上げます!