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漫画家アシスタント物語 古い話で章〈23〉 先生、一番弟子の尻を蹴る!


《写真上:目白の冬の夜景。中央遠くにサンシャンシティビル。2015年 》
         < この「古い話で章〈23〉」は、文庫本約8ページ分 >

 
 

「古い話で章」は、独立した「章」ですので、「諦めま章」の続きではありません。 無料で、各話、お楽しみいただけます!
 
ただし‥‥ 各話が連続していますので、
「古い話で章〈1〉」からお読みいただく方が、よろしいかと思います。
 
はじめての方は、
「マガジン:第1章、第2章」(無料)がお薦めです!

 
 
 
               その42

  《 漫画家アシスタントが・・・面接で嘘をつく・・・!? 》

 
パソコンの不調、体の不調、母親の不調、まったくさえない‥‥ 2015年の新年を迎えてたと思っていたら( 正月気分なんてどこにもありません )‥‥

もう、2月です‥‥

パソコンの壊れたハードディスクは、交換すれば生まれ変わりますが、私の首のヘルニアは、ど~にも出来ません。

肩の痛みがキーボードを打つリズムと共鳴するように響いてきます‥‥‥‥まったく情けない話です‥‥‥‥
 

では、久しぶりに‥‥‥‥

ブログの続きを‥‥‥‥

子供の時にウイタさんは、ブランコから飛び降りた時に右ひじを骨折して、神経が断裂する障害を負いました。
 
しかし、その後、病院でのリハビリで利き腕を右手から左手に代える事が出来て、少年時代を無事に過ごす事ができたわけです。
 
事故から8年‥‥‥‥
 
左腕で字を書く事はもちろん、絵を描く事も、元々左利きの人に劣らないほどになっていました。

ただ、障害のある( 手を開く事が出来ない )右手はいつもポケットにいれたままだったり、つい人の目に触れないように気を使ってしまうのです‥‥‥‥
 
 
アシスタントになるために、初めてジョージ先生に面会した時の事です‥‥‥‥
 
ジョージ先生から、右手の事について質問されると‥‥‥‥
 
ウイタさんは、お天気の話でもするみたいに軽く‥‥‥‥
 
「 子供の頃にケガをして‥‥‥‥ 」
 
ジョージ先生は、ウイタさんの右腕をジッと見つめながら‥‥‥‥
 
「 おめぃ~、右利きなんだろ? 」

「 ‥‥‥‥ いえ 」

「 ‥‥‥‥‥‥‥‥ 」
 
ウイタさんは、嘘をつきます。
 
実際、ケガをしてから8年間、左手を使って暮らしているし、ここで右利きだと言ってしまうと「 絵が描けない 」との誤解を受ける可能性もあります。
 
「 いえ、僕は元々左利きでしたから‥‥‥‥ 」
 
この時のウソを、今でもジョージ先生は信じているかも知れません。( ただし、同期のアシスタントは、事実を知っています )
 
先生は、話題を変えるためか、ウイタさんに気を使ったのか‥‥‥‥ 

戦争で左腕を失った〇木先生( ※参照 )の話を始めます‥‥‥‥
 
「 〇木しげるは、左手がないのに漫画家として大成しているしな、大丈夫だよ‥‥ 」
 
 
すっかり中年になったウイタさんがコーヒーを飲みながら笑顔で語ります‥‥‥‥

「 右利きだろうが、左利きだろうが関係ないよ、子供の頃の事だしさ 」

‥‥と、軽く話してくれる彼は、現在、62歳‥‥‥‥ 背が高くて痩せた銀髪の壮年です。

最近の漫画家は、アシスタントを募集する時に必ず条件にあげるのが「 経験者 」という条項です。
 
今は、仕事を探す人に対して、やたらとスキルを求める時代になりましたが‥‥‥‥
 
昔は、ウイタさんのように障害があっても、私のような馬鹿者でも、絵が描けない頓珍漢でも‥‥ 心意気を買ってくれる作家や先生がいたのです。( 私の場合は『 心意気 』も怪しいのですが )
 
 
 

 


仕事場の押入れです。私が座るデスクのすぐ後ろなのですが、押入れの扉は取っ払われ、古原稿がむき出しのまま積み上げられています。今にも崩れそうですので、30年間触った事がありません。

 
               その43
 
    《 漫画家アシスタントが・・・ケツを蹴られる!? 》

 
ジョージ先生は、この当時( 1969年頃 )、2~3本のギャグ漫画の連載を抱えていましたが‥‥ さすがに一人で全部描くのは大変だったようで‥‥ アシスタントを雇う事になったわけです。
 
ジョージ先生自身も漫画家〇田拳次先生( ※参照 )のアイスタントを1年近くやっていたので、自分が独立して、いよいよアシスタントを雇うまでになった時‥‥ それはどのような気分だったのか‥‥ まんざらでもなかったでしょう。

ところが、初めて雇うことになるアシスタント志望者は、片腕に障害がある上に真剣にやる気があるようにも見えず‥‥‥‥‥‥
 
 
アシスタント志望者のウイタさんは‥‥‥‥‥‥
 
『 漫画家になろうというのに、アシスタント専業で仕事をするなんておかしいじゃない! 』

という変わった( もっともな? )考えの持ち主でしたので‥‥ ジョージ先生とのやり取りも他の人とは変わっています‥‥‥‥
 
まだ17歳、ジョージ先生よりも背が高くて、体の細いウイタさんは、右手をポケットに入れながら先生と向かい会っています。

場所は、目白にある小さなマンションの一室‥‥‥‥
 
ウイタさんは、さして緊張もせずに‥‥ まったく当然であるといったような態度でジョージ先生にある条件を提示したのです‥‥‥‥ 

ジョージ先生が弟子入りを許す条件を出したのではありません、ウイタさんの方が一方的に雇用条件を出したのです!
 
「 先生、僕、仕事は週に一日だけにして欲しいんです‥‥‥‥ 」

「 あ~~!? 」
 
何を言ってるんだこいつは‥‥? 

‥‥‥‥ジョージ先生はきっと、そんな気分だったのではないかと思います。
 
ちなみに、数年後に先生は、アシスタント志望者が来た時に「 アルバイト感覚 」の志望者を一切受け入れないようになっていました。
 
私の想像ですが‥‥ ウイタさんとのこのやり取りで懲りたのではないか‥‥ と思います。
 
それはともかく‥‥‥‥
 
先生に条件を出した後、どうなったのかというと‥‥‥‥
 
あっさり、あのジョージ先生がその条件を飲んでウイタさんを弟子1号に任命します。
 
週に一日しか仕事をしないのですから、給料は薄給ですが‥‥‥‥ ウイタさんは自宅で両親の世話になっていますので、たいした問題ではありませんでした。
 
親のスネをかじりながらアルバイト感覚で弟子入り出来たのは、明らかにジョージ先生が誤解した結果だと思われます。
 
つまり、右腕に障害があるのに漫画家になろうとする‥‥‥‥ 涙ぐましい17歳の好青年‥‥‥‥だと。
 
障害者だからきっと苦労している‥‥ 人知れぬ苦労を‥‥ 俺がなんとかしてやる‥‥‥‥‥‥ といった思い込みが先生にあったのだと思います。
 
 
最初の仕事は、先生が描くキャラクターの髪の毛などにベタを入れる仕事など、比較的簡単な作業をまかされます。
 
もっとも、当時の仕事はシンプルなギャグ漫画でしたから、背景もほとんどなく、いたって簡単でした。
 
仕事中は、ジョージ先生はまったく口をききません‥‥‥‥ 本当に静かな重たい沈黙の中で仕事をします。
 
アシスタントへの作画指示は、原稿用紙に簡単な走り書きを加えている程度、まったく会話がありません。
 
例えば‥‥‥‥

原稿の余白に‥‥‥‥
 
「 夜 」
‥‥とか‥‥‥‥
 
「 トーン 」
‥‥とか、書いてあるだけなのです。
 
また、アシスタントと一緒に食事に行ったり、お酒を飲みに行くといった習慣も当時はまだありませんでした。
  
  
しばらくして‥‥‥‥
 
週に一回しかやって来ないウイタさんだけでは頼りにならないので、数ヵ月後には新しいアシスタントを雇う事になります。
 
丁度、その頃の事ですが‥‥‥‥
 
仕事にも少し慣れて来た頃‥‥‥‥ ウイタさんの気分がゆるんでダラダラと横になって、先生の原稿が出来上がるのを待っている時でした‥‥‥‥
 
突然、トイレに行こうとした先生が、横になっている( 眠っていたわけではない )ウイタさんのそばへ近づくと‥‥‥‥
 
「 寝てンじゃねぇ~よっ! 」
 
そう怒鳴られて、オシリを蹴られたそうです。
 
ウイタさんは、この時18歳。( 当時の私は、高校生16歳 )
 
ジョージ先生は、28歳。
 
 
現在のウイタさんが62歳、( 今の私は、60歳 )

ジョージ先生は72歳‥‥‥‥ もうすぐ後期高齢者。

  
 ( 注: 2015年にgooブログに掲載 )

  
  
 
  
     「 漫画家アシスタント物語 古い話で章〈24〉」へつづく・・・・
                 「古い話で章〈22〉」へもどる‥‥
                        「もくじ」 へ‥‥
 
 
 
 
~~~ 参照  古い話で章〈23〉~~~( 読んでも、読まなくても!)

 【その42】
・〇木先生 : 代表作「〇ゲゲの鬼太郎」で有名な漫画家。1922年生まれですので、ジョージ先生よりも21歳年上。ニューギニア戦線で負傷、戦後は紙芝居や貸本で生計を立てる。
 【その43】
・〇田拳次先生 : 1960年代に売れっ子だったギャグ漫画家、代表作「○出だめ夫」は1966年に実写テレビ化され、私も小学生の頃に楽しみました。

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