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元漫画家アシスタントのタイ移住物語 *創作大賞・応募作品*

#創作大賞2026 #エッセイ部門
 
 
      

    元漫画家アシスタントが、妻の実家をぶち壊す!

 
 
認知症の老母と、タイ人のカミさんを連れて、タイへ移住したのは2017年。 2年近く、チェンマイ市街の借家で暮らしました。

下の写真。 新しい大きな借家、二階左にはベランダ付きのベッドルームがある2バス、2トイレの4LDK、( 当時の家賃月8万円、円安の現在なら月13万円 )。

私は日本で、漫画家ジョージ秋山(『銭ゲバ』『浮浪雲』の作者 )のアシスタントを40年ほど勤めていました。

下の写真、秋山プロにて、デビュー後1990年頃の写真です。 6人のスタッフと一緒に仕事中です。

63歳でアシスタントを引退‥‥ 退職金や、兼業したマッサージ店と大学非常勤講師などで貯めたお金を持って‥‥ タイへ移住。

サラ金だのカードローンだの貧乏暮らしには慣れていましたが、タイでの豊かな暮らしには、すっかり幻惑されてしまい‥‥

毎日、軽い躁状態に‥‥ 気付けば借家賃料、母の老人ホーム費用、日々の外食費に交際費‥‥ 貯金は減り続ける一方!

そこで、カミさんの亡くなった父親が残してくれた土地( 市街から遠いド田舎 )を利用しようと考えました。

カミさんの古い実家を建て替えて、私の認知症の母、カミさん、そして足が不自由で耳も聞こえないカミさんの実母、介助してくれるヘルパーさんなど、皆で暮らせる大きな平屋建築を目論んだのです。

家を建てるのは男の夢‥‥ そんな昭和男の妄想が、外国の現実の前で通用するのか‥‥

悩んでいても、貯金と時間が消えていく‥‥

考えるまでもない、もう結論は出ています。
 

古いカミさんの実家の解体工事中。

上の写真、解体中のカミさんの実家( チェンマイ北部のド田舎、2DK )。チェンマイの借家から片道、車で4時間かかります。

窓やドアなど建具の破壊から始まります。ハンマーでドカンドカンぶち壊していきます。

窓を叩き出します。 下の写真は、青い屋根( 三枚上 )の写真と同じ場所です。

解体はどんどん進み‥‥

ショベルカーで壁を破壊。

夕暮れ前には、更地にして終了です。
 
 
 

    

       鉄筋の柱が、私の未来を暗示する!

 
 
下の写真は、建設現場での地鎮祭。左から私、カミさん、神主さん(?)みたいな人が祈禱してくれてます。 しかし、お祈りよりも大切な事があったかも‥‥‥‥

下の写真は地盤を固めるための杭打ち工事。 30本ほど打ち込みました。

 打ち込んだ杭を元に基礎工事と鉄筋の柱を立てます。

鉄筋の柱が立っています。 これも何だか頼りない柱です‥‥

これで、大丈夫なのか‥‥ 風が吹いたら倒れそうな‥‥

とにかく安く工事をしてもらう・・・・ そんな欲張りコンセプトが良くなかったのです。 全てが裏目に出ます。

これから始まる地獄の日々を想像さえしないで、地鎮祭に向かっている自分の姿を見ますと・・・・ なんとも、やり切れないといよりも・・・・ 哀しくさえなります。

基礎工事が適当でも、基礎があるだけまし‥‥ 私はそう思っていました。

実際、タイの一般住宅に基礎( 土台、床下 )はありません。 地べたに直接コンクリの床です。

 
 
 
 

        どんどん、値切れる建築費!?

 

いよいよ、新しい家の建築がはじまりました。

拠点にしていたチェンマイ市街にある借家、そこでゆっくり過ごす事がまったく出来ず‥‥ 結局、引き払う事になります。

どうしても建築現場近くから離れられなくなったからです。 そのため、近隣のホテルなどに連泊したりしました。

そして、認知症( 当時要介護度4 )の母を、チェンマイ市街の介護施設に預けたまま、なかなか、面会にも行けません。

まったく落ち着く時間が持てませんでした。
 

それから、これはタイでの建築上の常識なのですが‥‥‥‥

絶対に工事現場には毎日立ち会わないとヤバいのです。 実際に図面と寸法が違うとか、材質が違うとか、手順が違うとか、あらゆるトラブルに目を光らせていないと人間の住める家ではなくなります!

もっとも、私の安普請にこそ原因があるのですが‥‥‥‥

下の写真は、改築中の現場に積みあがったレンガなのですが‥‥ なぜか品質や色合いが不揃い。

下は、風呂場のバスタブが入る部分です。 一見して『 これで大丈夫なのか? 』と不安に・・・・・・ ご想像通り、バスタブを入れる時に大きさやパイプの不備など、問題が発生。 解決に一苦労します。

タイの建設現場‥‥ どこでも「新築工事」なのか、古い建物の「解体工事中」なのか、まったくわかりません。

そもそも、新しい家の見取り図を作る時に精一杯豪華な家を作ろうとした事が後々、問題を大きくした原因になります。( 素人のやる事はホントに怖いです )

建築平面図や完成予想図を描くのは、未経験者には難しいのですが‥‥ 長年、家やビルを描く仕事をしている私にとっては、さして難しいものではありません。

ただ、建築の専門知識も必要ですので、厳密な設計図までは手が出ません。

それでも、何枚もの平面図や立体図、スチレンボード( 工作用紙 )による住宅模型作りなど‥‥ 工作を楽しむように作っていました。

そして、タイの建築費の相場も、会社情報もまったく知らない私は、数社に図面を見せて見積もりを出してもらいます。

見積もりの総額で建設会社の選別を図るつもりでした。

私の平面図には、和室や山荘風のオープンキッチンとダイニングのある広い5LDKが描かれ、石壁のタイルや多くの間接照明、中庭やテラスリビングなど・・・・・ 理想的な装飾がされています。

問題があれば、それに応じて変更する・・・・ という流れでした。

家は平屋建てで、敷地は400坪、建坪は100~120坪( カミさんの受け継いだ遺産です。タイの田舎での地価で当時300万円ほど。円安、物価高の現在なら1000万円 )

( 以下の価格は全て、現在の資材高騰と円安に換算すると倍増します )

建設費で一番高い見積もりを出したのが、タイでは最大手のS社( タイの大手と日本の〇キスイハイムの合弁企業 )です。 ほぼ日本建築仕様で2018年当時で、見積額は3000万円以上。

ちなみに、日本で建てたら5000万円( 坪単価約5~60万円 )位でしょうか・・・・( 一流の注文建築なら1億円 )

タイの一般的な建築会社( 零細、小企業 )だと1400~1600万円。

さて・・・・・・・

私の描いた見取り図を見ながら一番安い価格を提示したのがD社々長。( 髭を生やした中年男性、以降D社長 )

その価格はなんと・・・・・・・・・・・1200万円!

( 以下の会話は全てタイ語と英語のチャンポンです )

これは、無理だろうな・・・・ と思いつつ質問する私です‥‥

「 本当に日本間が作れますか? 」

「 大丈夫です 」

「 床の間や広縁の設置や、雪見障子などの建具の入手は難しいのでは? 」

「 大丈夫でしょう、資材会社を何社も探せばきっと見つかりますよ 」

「 オープンキッチンは壁も天井も大きなはりも、木造の山荘風に仕上げられますか? 」

「 それは素晴らしい! 」

頼もしい、D社長の言葉!

「大丈夫ですよ~! 」

高価な石壁のタイルや間接照明の問題もクリアー出来て、さらに値引きしてくれるという・・・・・・!

「 1000万円で引き受けましょう! 」

私は、調子に乗ってさらに値引きを求めました。 

一生の買い物です、貧乏生活60年! サラ金、カードローン、借金地獄30年!  最後に一発大逆転の汗がにじみます!

「 もう少し安くなりませんか!? 」

「 900万円・・・・・これが限度です 」

あと少し・・・・ あと少しで日本間付きの5LDK、大きなキッチン、山荘風ダイニング、36㎡ガラス張りリビング、自分の書斎、間接照明やテラス付き中庭まで、何でも理想通りの「家」が作れるのだ!

ウサギ小屋じゃない‥‥ 理想の邸宅だ! 夢のマイホームだ! 

額にダラダラ汗が流れる!

私は、調子に乗って・・・・‥・・!

「 もう一声! 」

「 ・・・・・・・・・・ 」

「 どうか・・・・ もう一声! 」馬鹿ほど怖いものはない。

「 では‥‥ 850万円で 」

ここで、「 おかしいぞ? 」と・・・・・・・・・・ 思わなくてはいけないところなのです!

日本の建築相場はともかく、タイの一般的な建築費用( 耐震性0、防音、断熱工事無し、通気孔無し、基礎も土台もイ~加減 )でさえ1500万円前後はするのに、なぜ850万円で出来るのか?

しかし、この程度の予算がカミさんの貯金と私の資金で払える限界でした・・・・・・・・・・・・・・そのため、「 格安料金 」に完全に魅了されていたわけです。( 格安なら、夢のマイホーム、老後資金も少し残せる! )
 
 

その結果・・・・・・・・・・・

始まった建築は、ズルズルに遅く、資材は安物で、作業技術はおそまつ・・・・・・・ もっとも、資材が多少ボロでも「 格安 」なので我慢は出来るのですが・・・・・・・・・

作業が開始されてから4ヵ月( 完成予定日まで1ヵ月ちょっと )ほどで、疑惑の日々が始まります。

時計が止まったようなノロノロ作業。

『 格安なんだから、仕様がないよなぁ‥‥ 』

そのまま‥‥ ズルズルと地獄へ落ちて行くのです。

 

水のしたたるシャブコン作り、中古の安い石材やレンガ、サビた鉄骨・・・・・・

基礎的な水平や垂直さえ、水準器を使用しているけど・・・・・・・・・・・ 正確に使用しているかは不確実。

『 そんな事は我慢できる!  格安なんだ!  仕方がないんだ! 』

しかし・・・・・・・・

D社長の工事への疑念は、抑えがたいものになります・・・・ 下請け作業員に給料を払っていない事が判明したからです。

カミさんに作業員の一人が・・・・・・・

「 2ヵ月以上給料をもらっていないんです 」
・・・・・と、愚痴をこぼしたのです。

それと同時期に、資材の搬入が遅れているために、作業員が現場に来ても、まったく工事が進まない日があったりするのです。

進行の遅れ、現場の作業員への未払賃金・・・・・ これは、ちょっとただ事ではない‥‥‥‥

しかし、その事をD社長に問い詰めると・・・・・・・・・

「 来週中には、全ての費用を支払いますので大丈夫です! 」

・・・・と、きっぱり笑顔で答えます。

日本人だったら平謝りに謝るものですが・・・・ タイでは、都合の悪い事が起きると、ニコニコ笑顔で( 堂々と胸を張って )冗談でも話すように・・・・

「 大丈夫ですよ~っ! アハハハハハッ! 」

・・・・・・・・・今から考えると、「 微笑みの国 」なんていっても、その裏側は熱帯の四角いジャングルだったというわけです!

 

 

       タイは大変! 社長がヤバいよ!

 
 
2019年、3月。タイの季節は、雨の降らない乾季から、クソ熱い酷暑期へと入っていきます・・・・・・・・・・・

本来なら、3月中に棟上げから建具類の設置、内装工事に入る予定でしたが、屋根も未完成、内装どころか床も壁もレンガむき出し、ベタベタのコンクリート‥‥‥‥

建屋内の作業風景です。 奥の3人は女性です、タイでは建築作業にも多くの女性が参加します。当時の日当は1200円( 現在は2000円 )ほど。
 

下の写真は、建物の裏側、セメントで成型すると、かなり印象が変わってきます。ただし、完成予定日が1ヵ月半後にせまっているのに、まだ屋根も床も出来ていません!    

手前が玄関部分、奥のリビングルームで(!)セメントをこねています。

そして‥‥

誰もいなくなりました‥‥‥‥

「 あれ・・・・・今日はお休みなのかな? 」

・・・・などと思っていると・・・・・・・・・・

作業員は、滞納した賃金を払ってもらうまでは現場に来ない・・・・ との連絡があり、さらに、資材も一切届かない!

つまり、資材費用が未払いなために、資材会社がその搬送を中断したのです。 さっそく、問題のD社長に問い合わせると・・・・・・・・

「 大丈夫ですよ、2,3日うちには全て支払いますから アハハハッ! 」

天井ボードも電気配線も建具もない吹きさらしの廃墟のような有様。

「風呂場が野良犬のトイレになってるじゃないかぁあああ!」

野良犬、野良猫、野鳥に害虫、まさに大繁殖! ‥‥‥‥誰のための「邸宅」やらわからない!


やっと屋根が出来ても、まだ床もドアも窓もない吹きさらし!

「 必ず、予定日までには完成させます! 」

完成予定日の4月1日まで、もう一ヵ月もない・・・・・・・・・・

着手金から基礎工事、棟上げ・・・・・ と、節目ごとに建設代金を分割支払いして、そのほとんどが支払い済みになっているのに・・・・‥‥( 総支払額約850万円 )

誰もいない、資材もない。

廃墟のようなマイホームを見た時、腹が立つよりも、嫌な寒気を感じたものです。

完成予定日が近づくのに・・・・ 普通なら内装工事が急ピッチで進んでいなくてはならないばずなのに・・・・・・・・

誰もいない現場に時間だけが過ぎていく・・・・ 進捗状況は、ほとんど変化がありませんでした。( ドアもガラスもない廃墟のまま )

そして、ついに完成予定日を越えてしまいます。

こうした場合のために、遅延罰金があるのですが・・・・ 1日の遅延で3000円ほど( 労働者の2日分の日当に相当する )。

資材費用や作業員への未払い賃金、さらに、これからかかるであろう経費の金額は300万円か‥‥ 400万円か? ・・・・・つまり、遅延罰金などまったく意味がないのです。

問題のD社長は、「 今は金がない 」の一点張りで話になりません。
 
 

結局‥‥

賠償交渉をする事に・・・・・・・・

カミさんの友人の「 つて 」で町長や町の有力者に相談した結果、町長の自宅で話し合う事になりました。

D氏には、借金しかなく現金も預金もまったくないために、建築作業の継続は不可能であり、損害金の支払いもまったく出来ない事がわかりました。

また、町の有力者による調査では、彼の会社では複数のアメリカ人や日本人の顧客に対して同じような状況に立ち至っている事もわかりました。

実質的損害金額は、400万円以上。 しかし、200万円に圧縮して、さらに、月々( 15万円 )の無利息分割返済という誓約で妥協しました。

D社長は、少しでも収入があると博打に投じてしまい、従業員の給料、多くの建築資材費を横領していた事になるのです。 つまり、完全なギャンブル依存症! おまけに多重債務者!

裁判に訴えても、私たちに損害金が1円も戻ってくる可能性はないので、わずかな分割返済に同意しました。
 

今だから、冷静に書けますが‥‥

実は、このD社長はその後、ただの一度も‥‥‥ 約束した毎月の送金日に、お金を送ってくれた事はありませんでした。

 
 
さて‥‥‥‥

ここからが問題です‥‥

D氏が現場からいなくなって、作業の監督は誰がするのか?

資材や作業員の手配、仕事の成果確認は誰がするのか?

専門的、技術的な問題が発生した場合( 建物の至る所で問題が発生中 )、誰がどう処理するのか?

茫然と、荒れすさんでいく我が家の前で立ち尽くします。

漫画背景を描く事しかできない、足腰の弱い60男が呆然と‥‥‥

 

その後、別の建築会社に相談すると、見積もられた追加工事費1200万円。

‥‥まったく、絶望的状況です!

この建設会社の社員がこの荒れた現場を見て、ニヤニヤ笑って高額の見積もりを出してきたわけで‥‥‥‥

私は内心、期待していたのです‥‥‥‥

同情してほしかったのです!

「 お気の毒に・・・・・ 悪い奴にひっかかりましたねぇ‥‥」

「 任せて下さい、きっと素敵な家にしますよ! 」

・・・・・・・・・・・・ってな事、言って欲しかった!

・・・・・・・しかし、この業者さんは・・・・・・・・・・・・

『 こんなヤバい物件に関わってるほど暇じゃねぇ~よ 』

・・・・・・・ってな、冷たい視線を私に向けるだけで、挨拶もそこそこに立ち去って行きました。

もう高額な追加建築費を出せない、貧乏日本人を見限った目でした‥‥‥‥

もはや建築継続が不可能。

レンガ塀はコンクリートで補強され、やっと屋根も出来たのに‥‥‥‥

このまま諦められるのか・・・・・・・・

とにかく、自力で・・・・ 残りの資金(300万円)を全部注入して、完成へ向かう・・・・・・・ しかない!

作業員は全員継続して建築にあたり、その未払給与は全額肩代わりする。

資材も不足分も、これから先の必要な分まで全てこちらで準備する!

口で言うのは簡単ですが、事実上、私とカミさんが建設会社を代行して、その現場監督や資材調達、資材運搬、作業員人事・・・諸々、やらならなくてはならないのです。

ペンとインクしか持った事のない腕でシャベルやバケツを持ち、モッコを担ぐ‥‥‥‥

日中40℃の酷暑の中で‥‥ 上半身裸で‥‥ 朝8時から夕方まで建築現場を仕切らなくてならない!

涙が出るほど情けないのを我慢しつつ・・・・・・・・

昼間は、汗だく( 毎日、3、4回シャワーを浴びる )になりながら・・・・ 収支決算に、預金残高に頭を痛める!

この日から、近くの安宿やカミさんの親族、友人宅への居候がはじまります‥‥‥‥

深夜の帳簿書き‥‥ 支払い明細、レシート、請求書、数字の羅列に‥‥ 

涙が出そうになる‥‥‥‥
 
 

そして・・・・・・・

預金通帳の残高だけは・・・・・ ゼロに向かって行進中‥‥‥‥

でも‥‥

‥‥‥‥たとえ、金がなくても!

泣くな! 泣いてたまるか! オレは笑って前進だ! 

元漫画家アシスタントの現場監督!
 
 

 

      問題山積み! 土木作業と現場監督!



自宅を建てる時に、日本なら週に一度か二度、現場を見に行けば足りると思うのですが・・・・ タイでは、毎日のように現場を確認する必要があります。

そうしないと、作業員の怠業や工事ミスを防いだり出来ません。 現場にある資材を、深夜に泥棒される事さえあるのです。

屋根材の取り付け工事を撮影したものです。この工事の直後にギャンブル狂の社長が現場放棄します。

完成が延滞する2ヵ月の間に風雨と、追加工事の作業で白壁がすっかり汚れてしまいます。 結局は全部塗り直す羽目になるのです。

       

2019年3月に中断し、社長D氏が夜逃げ‥‥

4月1日には、新居に引っ越せると思っていたのに‥‥

作業員がいなくなった現場には活気が失われ‥‥ 屋根が出来ただけの吹きさらし‥‥ 酷暑期の焼けるような日差しが降り注ぐ・・・・・・・・

日本間は、障子の代わりに板戸で塞ぐ。 それは、まるで座敷牢。

労働者への未払い賃金や、未払い資材費を整理。 建築作業を再開し、私とカミさんは朝から晩まで現場監督の仕事をしました。

借家を引き払って、3月はカミさんの親類宅。 4月は安宿、5月はカミさんの友人宅に居候しました。

そして毎日、お金のかかる問題が起きます‥‥

「 電気配線工事のお金をまだもらってません・・・・・ 」

「 壁材の敷設費用は別料金ですが・・・・・ 」

「 臨時雇いの日当を払って下さい・・・・・ 」

「 テラスの設置費用を・・・・・ ]

お金は、毎日出ていきます。

老後の蓄えとしてとっておいた預金は、どんどん消えていきます。

もし、建築費以外に預金がなかったり、借金をしていたら・・・・・・・工事は継続できなくなり、廃墟のような現場の前でカラッケツのまま安いアパートを探す羽目になっていたでしょう。

この、毎日の出費によって、私とカミさんの関係も歪んで行きました。
連日、お金の事で喧嘩になるわけです。 

夫婦関係などというものは脆いものです・・・・ 現場を投げ出して・・・・ 私もD社長のように逃げる事ばかり考えました。

お金の問題と同じように辛かったのが・・・・・ 毎日の現場作業の監視です・・・・・・・・・・・・

そして今日も、作業員から多くの問題が持ち込まれます・・・・・・・・

「 トイレの設置用金具が足りません 」

「 下水設備は、どうしますか? 」

「 風呂場が小さいので、バスタブが入りません 」

「 ドア枠がないので、ドアが設置出来ません 」

「 配管の資材がありません 」

「 ペンキが切れました 」
 

『 そんな事、俺にど~~しろってんだよ~~っ! 』

・・・・・などと考えても、口には出来ず・・・・・・・・・・

一度、電気工事で私の指示と違う配線工事に「違うじゃないか!」と注意してしまったら、電気工事の職人全員が即退去‥‥‥‥ 

タイ人は、人前で「怒られる」「断られる」「笑われる」などの侮辱に神経質です。 そのため、注意や支持を出す時には慎重でないといけません。

「まだ、金ももらってないのに、恥かかされて‥‥やってられっか!」

‥‥と、捨て台詞を残して去って行きました。 また、電気工事の業者さんを改めて探さねばなりません‥‥‥‥

毎日々々・・・・・・・・・ 黙って、起きる問題に即応しないと、作業がストップしてしまいます。
 

ただ‥‥

安い事は間違いないのです。

とにかく必要な資材は、大急ぎで建築資材店へ調達に向かい、土台や壁の欠陥は誤魔化し、矛盾は隠し、穴やすき間はシリコン注入!

こうして、2ヵ月間‥‥ 4月のタイの、灼熱地獄の中‥‥ 右往左往の突貫追加工事が続きます。

建築着工は11月、完成予定日は2019年4月1日だったのに‥‥

2年前まで、漫画家アシスタントやってたのに・・・・

のん気に65歳で‥‥ 気楽な隠居暮らしを夢見ていたのに・・・・

今じゃ、こんな所で汗まみれの泥まみれ・・・・‥‥
 

買って来た建築資材、建具、床材などをトラックから降ろし、シャツの胸や肩を真っ黒にしながら担いで運ぶ‥‥

気温40℃‥‥ 火であぶられるような炎天下‥‥ シャベルで残土やコンクリ屑を片付ける‥‥

フラフラしながら、両手でバケツを持って、砂利運び・・・・‥‥

『 何やってんだ、どうなってるんだよ、これはよぉ~っ! 』

などと、心の中で嘆いてみても・・・・・・・・・・ 後の祭りのタイ暮らし。
 

毎日、考える事は同じ事‥‥

今日は、休みたい‥‥

もう少し眠たい‥‥

働きたくねぇ!
 

こうして二ヵ月が経ちました‥‥‥‥
 
 

 
 

     料金払え! その屋根は俺のだぞっ!


 
家の完成の直前に‥‥

想像もしなかった問題が起きました‥‥

家の建築を請け負ったのがD社ですが、そのD社々長の依頼で屋根が設置され‥‥‥ 一応「 棟上げ 」が完了( 2019年の3月 )しました。

しかし、その直後にD社長が現場放棄したのですが‥‥

この屋根設置代金全額( 80万円ほど、タイの労働者の年収分 )が未払のままでした。

結果として、屋根業者は設置代金の督促で私のカミさんへ何度も電話をかけてきます。

「 屋根は設置したんだから、その資材費と手間賃を払ってくれ! 」

しかし、建築費としてD社へ一括して支払い済みですから( 屋根の施工契約はD社と屋根業者で交わしている )私たちが支払ういわれはないのです。

D社長は、賠償金さえ払わずに夜逃げ状態。 そのため、頭に血が登った屋根業者が脅しの電話をかけてくるようになりました。

「 金を払わないなら屋根をはがしに行くからな! 」

「 今すぐ払え! 屋根は俺のものだ~っ! 」

「屋根返せ~~~っ!」

大きな屋根の全費用がタダ働きなのではたまりません・・・・ 家族の生活もかかっているでしょう‥‥ 当然の怒りだと思います。

ただ・・・・ 気持ちはよくわかるのですが・・・・ それでも、こう返答する以外にありませんでした。

「 もし、勝手に屋根をはがしに来たら警察に連絡しますよ! 」

これで、納得してもらうしかなく・・・・・・・・・・

この数日間、いつ屋根業者が怒鳴り込んで来るか、ビクビクしていました。

しかし、これ以降、何の連絡もありませんでした。

D社長を追っているのかも‥‥‥‥
 
 

下の写真が、完成した平屋住宅( 一部 )です。

2019年6月、認知症の要介護度4の母、カミさんと、寝たきりの義母、お手伝いさんが二人。 そして、猫3匹と犬2匹‥‥ 全員が同居完了。

総面積は約1200㎡、建屋面積は約360㎡の5LDK、東京で大手の注文建築なら土地代込みで億単位の金がかかると思いますが‥‥

チェンマイの田舎なら土地代で約300万円、建築費は格安の850万円!( 2019年の契約上の金額、実費ではありません )
 

下の写真は、リビング。

問題だったバスルーム。

今は、この書斎でパソコンに向かっています。

人生、山あり谷あり‥‥

家は建ったが‥‥ 暮らしが立たない‥‥ 貯金もないまま8年目。

年金と、健康だけが頼りの隠居生活。

それでも続く、タイ暮らし!


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