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「チャットAI」しか使わないのはもったいない!非エンジニアこそ「エディタ」でコンテキストを「資産」に

BASE株式会社執行役員の柳川です。金融事業の事業責任者をしています。
私はエンジニア→PdM→事業責任者というキャリアを歩んできました。
現在は事業戦略、プロダクト戦略、組織戦略全ての責任を持ちながら、事業責任者を務めさせていただいています。

はじめに

先日、思想の整理として「『AIに働かされる』が正解? 事業責任者が考える組織図の変化」というnoteを書きました。 いい記事なんですが、1万7千文字あるので、このnote読んだ後に「面白そう」と思ったら読んでください。

このnoteで私が最も伝えたかった前提は以下の3点です。

  1. AIは既に「シニアレベル」である 思考力において、AIはもはや人間(ミドルレイヤー)を超え、シニアレベルに達しています。特定のスコープに限定すれば、人間より深く、速く考えることができます。

  2. 「使う」から「働かされる」への転換 人間がAIに逐一指示を出す「マイクロマネジメント」は、生産性のボトルネックになります。これからは人間が判断を委ね、自律的に動くAIに「働かされる」側へシフトする必要があります。ですが、ここには「ロングコンテキスト問題」という課題があります。現状においては「ロングコンテキスト問題」を認識しながら、人間がうまく立ち回る必要があります。 記事でいうところの「超優秀だけど記憶喪失だし価値判断もできない天才のお世話係」です。

  3. コンテキストの役割分担 これからの組織において、人間は「コンテキストを広げてドメイン(領域)を定義する」役割を担い、AIは「渡されたコンテキストの中で素早く思考・実行する」役割を担います。

「コンテキストを限定した上で意志を込めれば、その思考力は人間を凌駕する」
この仮説を証明する習作として、「noteを添削するGem」を作ってみました。私の執筆者、編集者としての意志(コンテキスト)を移植した結果、驚くほど自律的に「人間らしい鋭い指摘」をしてくれるように見えます見えますというのが肝ですね。ぜひ使ってみてください。僕の過去noteで試してもらって良いです。
このGemには「緊張と弛緩」という独自の評価軸や、炎上を防ぐリスク管理基準などの「私の編集者としての意志(コンテキスト)」をパッケージングしています。だからこそ、汎用的なAIには不可能な「人間らしい鋭い指摘」をしているように見えるのです。

人間が鍵を握る「ロングコンテキスト」の正体は、量ではなく「意志」である

具体的なやり方の話に入る前に、一つだけ重要な話をさせてください。 なぜ、わざわざ人間がAIのために「コンテキスト」を整えてやる必要があるのでしょうか? AIに全てのデータを渡して終わりではダメなのでしょうか?
ダメです。なぜなら、AIには「意志(Will)」がないからです。SF的なことを言っているわけではありません。
AIにとって、膨大なデータは単なる情報の羅列にすぎません。 過去の議事録の「決定事項」も、雑談の中の「冗談」も、AIにとっては等しく「トークン(記号)」として処理されてしまいます。放っておくと、AIは全てをフラットに扱ってしまいます。
一方で私たち人間は、言語化されていない文脈も含めた「ロングコンテキスト」を持っています。 しかし、その本質は情報の「量」だけではありません。 「このプロジェクトにおいて何が最重要か(優先順位)」「我々はどうあるべきか(美学・価値観)」「絶対に譲れない一線はどこか(リスク許容度)」
これら無数の情報に「重み付け(Weighting)」を行い、意味を与えること。これこそが人間が持つロングコンテキストの正体であり、「意志」です。
混沌とした情報の中から、意志を持って文脈を切り出し、「ここを重視せよ」と定義してあげること。これは今のところAIには難しい、人間にしかできない「尊い」知的作業です。
AIにコンテキストを渡す行為は、単なる情報のコピペではありません。あなたの「意志」をAIにインストールする儀式なのです。
もちろんこの「ロングコンテキストに対する重み付け」もどこかで技術的なブレイクスルーが起きる時が来ると思います。それがきた時には僕らは仕事しなくてよくなるかもしれませんね。
幸か不幸かまだその時は来ていないので、「意志」を正しく機能させるための、具体的な手法(ワークフロー)を提案します。

1. 「コンテキスト」を手元に残す

基本的には、これだけ意識しておけば問題ありません。
チャットツールでAIを利用していると、会話を通じて少しずつ学習し、賢くなっていく感覚があると思います。しかし、その学習結果は勝手に消えますし、他の話題が混ざることで「汚染」されてしまいます。 また、AIはロングコンテキスト(超長文の記憶)があまり得意ではありません。コンテキストウィンドウ(容量)は増えていますが、人間のように文脈を保持し続けることはできません。
用途ごとにコンテキストを限定して渡すほうが圧倒的に精度が出ます。いわゆる「プロンプトエンジニアリング」です。
「手元(ローカル)で、用途ごとのコンテキストファイルを育てる」。 まずはこれを徹底しましょう。
いいですかみなさん、コンテキストこそ資産です!

2. 「AI搭載エディタ」を仕事道具にする

コンテキストを手元に残す習慣をどう身につければいいか。一番簡単な方法は、普段仕事をする道具を変えることです。何を変えるか。
今まで主にエンジニアが活用してきた文章を扱うツール、「エディタ」を使いましょう。これがAIとめちゃくちゃ相性がいいのです。 ザックリ言うとファイルシステムとメモ帳が合体したものがエディタなのですが、最近はこれにAI機能が融合しています。

具体的には、Cursor(カーソル)や、Claude Codeや、GoogleのAntigravity(アンチグラビティ)などが代表的です。
これらを使って仕事をすると、AIに指示した結果がテキストファイルとして手元に残ります。「今の動き良かったから残して」とAIに指示して明示的に残すこともできます。この手元に残ったファイルがコンテキストになる話です。
難しく考える必要はないです。いつもChat GptやGeminiにチャットで話しかけているようなことエディタ上で行えば良いのです。勝手にファイルを整理整頓して残してくれます。
指示した結果「必要だったアウトプット」を得ながら、その「アウトプットを得るためにAIに渡した情報」も残しておけるわけです。
そしてこの両方ともがコンテキストです。

そしてコンテキストファイルが手元に残っていると、「手元のコンテキストををAIに見せながら作業指示を出す」というフローが自然に発生するため、その結果としてまたまた勝手にコンテキストファイルや「コンテキストの種」が溜まっていきます。

そしてその貯まったコンテキストを、必要な時に必要なだけAIに渡せるのです。AIが賢く自律性高く作業してくれるのを実感できると思います。
大事なのは自分がAIにどのような情報を渡して動いてもらっているかがなんとなくわかることです。この感覚が非常に重要です。
AIが自律的に賢く動くほどに、徐々に「AIに働かされる」感覚がわかってくると思います。

こういうのね

3. コンテキストファイルは自分で書かない

「プロンプトやコンテキストファイルを、いちいち書いたり修正したりするのは面倒」だと思いませんか?
安心してください。いちいち自分で書いてはいけません。AIに書かせるのです。具体的な手順は以下の通りです。

  1. まずは仕事の相棒としてAIに指示する ドキュメント作成でもデータ整理でも構いません。とにかく指示を出してください。最初はAIも意図通りに動かないでしょう。そこで諦めて自分でやるのではなく、根気強くフィードバックを続けてください。「ここが違う」「もっとこうして」「この情報を参考にして」と対話を重ねます。お手本を見せるのは良いですが、自分ででタスクを完遂させてしまっては意味がありません。あくまでAIにゴールさせることが重要です。

  2. 成功パターンを抽出させる なんとか仕事が完遂したら、そのチャットログには「成功に至るまでの指示」と「必要な情報」が全て詰まっています。これがコンテキストの正体です。 最後にこう伝えてください。 「この仕事をうまく進めるために必要だった一連の前提条件やルールを、再利用可能な形でまとめて」 これで、コンテキストファイルの一丁上がりです。

  3. 育てていく 次に同じ仕事をする時は、このコンテキストファイルを読み込ませた上でスタートします。 もちろん、一度で完璧なものはできません。使ってみて違和感があれば「もっとこうして」と要望を投げ、またファイルを更新してもらう。AIと一緒にファイルを育てていくのです。

最初は大変だと思います。「普通に自分でやった方が早いじゃん」と感じるはずです。それで合っています。最初は時間がかかるものなのです。頑張って。しかし、一度「型」が出来上がれば、その後の生産性は爆発的に向上します。コンテキストファイルという「資産」を作るための投資期間だと思って、最初はぐっと堪えてAIと向き合ってみてください。
そのままは使えないけどにた仕事であれば横展開できたりもするので、生産性上がるから!

大事なことを書きます。AIに質問するんじゃないんです、AIに仕事をさせるんです!仕事をさせるためには何が必要なのか!これが大事です。
なんか結構、泥臭い話ですが、諦めないのが大事だったりしますね。

細かい記法やテクニックも存在しますが、それは興味が湧いてから調べれば十分です。まずは「AIに書かせる」ことから始めましょう。

4. 安定したらGemやGPTs(Skills)へ

手元で作業する際は、エディタ上でコンテキストを直接修正しながら進めるのが最速です。過去作ったコンテキストを読ませるのとかもめちゃくちゃ楽なのでエディタ最高です。
ただ、それが汎用的なタスクとして「型」になってきたら、GoogleのGemsやOpenAIのGPTsとしてパッケージ化しましょう(これをSkillsと呼んだりします)。
Skills化することのメリットは2つです。

  1. 他人に渡しやすくなる(ナレッジの共有)

  2. AIに特定の役割(ロール)を認識させやすくなる

  3. 人間もあるAIに対しての特定の役割を認識しやすくなる

細かく役割を分けて、別人格としていくことが大事なので、その勘所を掴むためにもSkillsにしましょう。勘所を掴むのだいじ。認識を変えるの大事。

ちなみに、コンテキストは「プロンプト(指示文)」と「ナレッジ(知識ファイル)」の組み合わせだと捉えてください。最初は区別せずにプロンプトにまとめても良いですが、慣れてきたらこの2つを分けて管理すると精度が上がります。

まぁGemにすると若干挙動変わったり、うまく動かなくなったりもするんだけど、それはご愛嬌ということで。

5. コンテキストは細かく切る

コンテキストファイルを意識しながら作業していると、自分の分身ができる感覚になり、「最強の巨大コンテキストファイル」を作りたくなるかもしれません。
気持ちはわかりますが、でもちょっと待ってください!最初に言いましたが、AIはロングコンテキストが苦手です。 あれもこれもと詰め込むより、用途ごとにコンテキストを限定して渡すほうが圧倒的に精度が出ます。ここは心を鬼にして、作業ごとに別のコンテキストファイルを作っていってください。 この感覚を身につけるためにも、安定したものはSkills(Gem/GPTs)として切り出していくのがお勧めなのです。めんどくさいけど!

6. まずは「日報」から始めよう

「仕事のログやデータ」があるとコンテキストを作るのは楽になります。「仕事のログやデータなんて手元にないよ」という方もいるかもしれません。 簡単な話です。「日報」でいいんです。
日報には日々の仕事の具体的な情報が詰まっています。それをAIに食わせて整理させれば、それはもう立派な「あなたの仕事のコンテキストファイル」になります。「日報」を書くことはメリットがあります。

僕の場合は執筆したnoteがかなり役に立ってます。

7. 操作がわからなくても、AIに指示すればいい

「エディタなんて使い慣れないから怖い! 操作方法もわからない!」 そう思う方も大勢いるでしょう。大丈夫です、大体AIがなんとかしてくれます。操作方法なんてAIに聞けばすぐに教えてくれます。
整理が苦手な人も安心してください。エディタ上のファイル整理も、全部AIに指示してやってもらいましょう。ファイルっていつしかぐちゃぐちゃになっていくのです。でも最初に厳密にルール運用するのも辛い。 「このまとめ方がいいと思ってたんだけど、ちょっと違うなー」と思った時も、AIに頼めば一瞬で整理し直してくれます。 エディタ上に全てのコンテキストがあるからこそ、AIは強力なパートナーになります。ツールの操作方法を覚える必要すら、なくなりつつあるのです。

8. Gemを作ることは、AIプロダクトを作ることと同じ

ここで重要な視点です。 「noteを添削するGem」のようなツールを作ることは、そのまま「AIプロダクト」を作ることと同じだということです。
ただ漫然とAIを使うのではなく、コンテキストを細かく切り出し、そこに「こう動いてほしい」という強い意志を込める。 そうすると、汎用的なAIがあたかも意志を持った「自律型のAI」のように振る舞い始めます。あくまでも「ある特定のスコープにおいては」ですよ。
しかしこれこそがAIプロダクトの一つの形です。 と考えると、「コンテキストの設計と意志の注入」頑張ってみようと思いませんか。AI活用のレベル差は、単なる販管費の削減以上に、会社の競争力の差になると思いませんか。

9.コンテキストを記述するとは、仕事の解像度を上げることにほかならない

コンテキストの作成自体はAIが助けくれるという話をしました。しかしそのコンテキストの元になる、「具体の作業」であったり「思想」はあなたそのものなわけです。コンテキストの作成をする中でそれらを見つめ直すことになるわけです。これは「自分の仕事の解像度を上げる作業」であり、ひいては「自分自身を見つめ直す作業」でもあるわけです。
この仕事の解像度を上げるということが上手な人は、うまくその能力を活用しましょう。苦手な人は訓練しましょう。
案外、AIが言葉にしてくれるということそのものが勉強になりますよ。コンテキストファイル読んでみてください。メタ認知が育まれます。

10. AI活用は「育成」にも使える

「noteを添削するGem」。この手法はおそらく、人材育成にも応用できます。コンテキストをパッケージ化することは、「誰かが仕事に取り組む時の思考プロセス」をそのまま追体験可能にすることと同義です。その追体験は育成のために伴走です。育成の伴走をしてくれるAI、作れる気がしませんか。
言葉で説明しても、文章で渡しても、チェックリストで渡しても、なかなか理解されないことが、AIに伴走せると理解されること、あると思います。そうです、伴走なのです。具体的なアウトプットに合わせて具体的に返す。この辺りは生成AI本当にすごいですよね。

まとめ

非エンジニアという言葉は嫌いなんだけど使っちゃった。

「AI界隈の人たちがやっていることって、いまいちよくわからないんだよなー。わけわからん横文字とか、ツールの名前とか出てくるし。」と思っているそこのあなた!仲間はたくさんいると思います。
僕も先日のnoteを書き切るまでは、何が大切なことなのかをうまく言語化しきれていないところがありました。
僭越ながらの私見ですが、いわゆる「AI先進界隈」の人たちと、「チャット形式のAIを便利に使っているけど、これまだ仕事全体を根本的に変えるほどではなくない?」という人たちの間にまだまだ溝があるように思います。
別に溝があっていいと思うんですが、「言葉が通じるようになった方がもっといい世の中になるんじゃないかなー」というのが個人的なスタンスなのです。

「AI先進界隈」の人たちがやっていることがわかると、シンプルに勉強になりますし、ただの「驚き屋」と「ちゃんとやっている人」の区別もつくようになると思います。

ということで、先日の『AIに働かされる』が正解? 事業責任者が考える組織図の変化」に書いた思想を下敷きにした上であれば、AI界隈の人たちがやってることとか、言っていることが、一定伝わるような気がしたので、この文章を書いてみました。
一つ一つのことは具体的には書ききれていませんが、「なんとなくこういう要素があるんだなー」が伝われば幸いです。

具体的なHowの数よりも思想が大事だと思っている派閥なので、同じ派閥の人で、まだAIピンと来てなかった人には刺さる記事になったかなと。
具体的なHowはもっと得意な人たちたくさんいるので勉強させてもらいましょう。

個人的には、今まで書き溜めてきた「組織論」とか「仕事論」とか「スタンス論」「AI」の話がやっとばっちり繋がった感覚があり、小さく、しかし確実に興奮しています。(ルーツである哲学と繋がっている感覚もある)

僕自身は「仕事」には一家言ありますが、AIについてはめちゃくちゃ詳しい人ではないです。
「仕事」とは何か、それを取り巻く「人間」とは何か、については延々と考えています。

ちなみにこの文章を「noteを添削するGem」に読み込ませると、A判定です。S判定まである添削ツールなので、最高評価ではないわけです。でもそれはなんにも問題がないわけです。この文章は面白おかしく読んでもらうnoteではなくて、How toに近いものです。解説記事に近いわけです。
価値基準が違うわけです。緊張と弛緩のバランスでいうと、いたずらに緊張感を高める必要はない。淡々とでいいのです。
これこそが、「意志を込める」ということなわけです。「価値基準を埋め込む」ということなわけです。

この文章の評価

一番読まれたnoteの評価は当然Sです

執筆動機


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