EU AI法 / トランプAIアクションプラン / 日本のAI推進法と規制のあり方 雑感_0802
海外政府のAIに関する最新動向について触れる。7月は、EU、US共にAI規制において激動の1ヶ月であったように思う。主要なものをまとめておく。
Ⅰ EU AI法
1 EU AI法の概要
(1)世界で初めて包括的にAIを規制する法律(2024.8.1)
制定のための議論の開始時はOpen AIも台頭していない環境下であった。AIも現在ほどのインパクトになるものとは考えていない中で、GDPRが成功したことを受け制定の議論を開始したものといえる。
世界初の水平的規定であり、AIのルールメイキングを検討するにあたり、参照すべき点が極めて多い。
(2)リスクベースアプローチ
AIリスクを「禁止」「高リスク」「中間的リスク」「低リスク」及び 「汎用目的AI」に分類する。
(3)域外適用:日本企業も対象になる可能性
EUの規制は、EU域外の国々や企業に影響を与える。国や企業はEUの規制を自主的に遵守する必要がある(ブリュッセル効果)。
(4)規制よりも競争力強化を重視する流れ
汎用目的AIに関するCode of Practiceでも制定経緯の中で、バーションアップと比例して規制のトーンはダウン傾向であった。アメリカのAIアクションプランの制定も踏まえ、その流れは今後も加速するのではないかと予想する。
欧州委員会でもEU規則の簡素化が検討されている。
2 EU GPAI Code of Practice
①透明性、②著作権、③システム安全・信頼の3章から構成される
法的義務ではいものの、自主的に署名した企業はEU AI ACTへの準拠をしやすいとされる。
3 EU AIガイドライン
汎用目的AIモデルの「汎用」の意義、プロバイダーの義務を欧州委員会でどのように解釈するか等について記載。
QAも役立つ内容が多く、参照価値が高い。
(コラム)
「人間中心」という概念には注意を要する。
EU AI ACTにおける人中心とは、AIを代理の機械として捉えた人間の自律性に重きが置かれている。一方で、日本の人中心は、文字通りの「人間中心」である(Ex.AIへの依存の防止等)。
この点に留意しないと、EU AI ACTやEUの動向を参照し、議論する際に議論がぶれてしまう。また、以下のパーソナルAIやデジタルツインズ等の議論をする際にかかる両者の違いは重要な観点になりうる。
Ⅱ トランプのAIアクションプラン
「Removing Red Tape and Onerous Regulation Ensure that Frontier AI Protects Free Speech and American Values」
❶3つの柱:①イノベーション、②インフラ(データセンター等)、③輸出・外交・安全保障(米国の技術スタックを世界標準に)
❷絶対条件:①アメリカの労働者をAIによって生み出される繁栄の中心に、②政府が調達するAIモデルは、偏見がないものに、③悪意ある行為者による誤用や盗難の防止)
❶3つの柱の概要
①イノベーション
・煩雑な規制の撤廃
・AIの解釈可能性、制御、堅牢性におけるブレークスルーへの投資
・AI評価エコシステムの構築
・法制度における合成メディアのリスクへの対抗
②インフラ
・データセンター、半導体製造施設、エネルギーインフラの許認可を合理化
・軍および諜報機関向け高セキュリティデータセンターの構築
・重要インフラのサイバーセキュリティ強化
・AIインシデント対応における連邦政府の能力の促進
③輸出・外交・安全保障
・国際的なガバナンス機関における中国の影響力への対抗
・輸出管理
・国家安全保障リスク評価の最前線に立つことの保証
・バイオセキュリティへの投資
Ⅲ 日本のAI推進法と動向
国内のAI規制について軽く触れつつ、示唆を述べる。
国内のAI規制は、広義のソフトロー(各種ペーパー、業界や協会毎のガイドライン)によるものであると考える。(なお、日本におけるAI推進法は文字通り、AIを規制するものではなく推進するベクトルでの法制である。)
AIの動きは本当に早く一日一日で動きがあり、情報の陳腐化がとにかく早い。法規制より先に実務対応や自主規制対応がなされるケースが増えていくのは必然であろう。上述のソフトローによる対応は時流に即した適切なアプローチと考える。
この点について、示唆を一点述べるのであれば、「抽象的・理念的規定の創設の有用性」が挙げられる。法規制についてみるに、AI時代においては、民法における不法行為や会社法における善管注意義務は使い勝手が大変よいものと思える。AI時代では、抽象的で解釈に委ねる規定が役に立ったりする。抽象的・理念的規定の創設は今後、ソフトローや、もっと進むと約款における規定検討においても役立つ視点と考える。
(※なお、かかる形でのAI規制を検討にあたり、規制策定者側が心の底において置きたいのは(上手く表現するのが難しいが、)民主主義を慮る視点であろう。AI時代においては、実質的な民主主義的な立法や規制立案を機能させるのが困難な側面が一定やむを得ず生じるからである。ニュアンスとして、吉田松陰の有名な言葉に「知って死ぬのと知らずに死ぬのは違う」という言葉がある。AI規制を検討にあたり、予見可能性の担保と、市民がAIに関連する意思決定をする際に、その意思決定に至るまでの過程における適切な情報提供体制の構築がより重要性を増していくものと考える。)
Ⅳ まとめ
EU・USのAI関連のニュースに齧り付きながら見ていないと瞬間的なキャッチは難しい。だが、特にEUのEU GPAI Code of Practiceは、EUへ展開している日本企業にも強く影響を及ぼしうる。これら海外のAI規制動向は興味をもって目を向けておくか信頼できてかつAIに関する法制動向に興味がある人に聞く他ないように思う。
なお、AIのキーワードに「分断」がある。規制は勿論のこと、技術の進歩も目まぐるしくその進歩の速度はどんどん加速している。
規制を策定するにあたって、AIに追いついてる側でいる必要がある。もはやAIが全く関与しない領域を探す方が難しいともいいうる。規定策定者にとって加速するAI技術の進展にも目を配ることは必須事項になっていくように思える。
(マガジン)「AIと法雑感」
※目次は以下を参照
note総則規約3条2項前段
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