✅ 電子工作ネコ、はじめてのプリント基板を作る(より完全な時計に仕上げるために…)
〜USB or BAT Power Board誕生物語〜
この記事でわかること
✅ 「ユニバーサル基板 → プリント基板」へ発展させる流れ
✅ KiCadを初めて触る人が最初につまずくポイントと乗り越え方
✅ 回路図作成で必ず通る ERCチェック と、PWR_FLG の意味
✅ フットプリントとは何か
✅ PCBエディターに回路図の部品を反映する方法
✅ ガーバーファイル作成
✅ JLCPCBでデータをアップロードしてプレビュー確認→発注する手順の雰囲気
✅ ユニバーサル基板とプリント基板の違い(見た目・配線・安心感)
✅ 自作プリント基板で実装・通電し、「設計通りに動く」を確認する体験
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✨序章:前回までのあらすじ
TEMUで 644円で買った電子工作時計キット。
USBで電源を取るだけのこの時計は、せっかく時刻を合わせても、USB電源を抜いてしまうと記憶がすべて飛んでしまい、毎回あらためて時刻合わせをしなければならないという、どうにも中途半端なものだった。
そこで、
USB電源を切っても時刻がリセットされない、もっと「使える時計」にしよう
と改造を決意したのであった。
実験と検証の結果、
この時計キットは USB電源を切っても自動的にバックアップ乾電池へ切り替わり、時刻が正しく保持されることが確認できた。
次は、
ブレッドボードで検証した電源回路をユニバーサル基板へ落とし込み、
本物の電源回路として仕上げる段階だ。
今後制作予定の自作ケースにも収まるよう、実用を見据えた設計に取りかかったのであった。
ケース作りも並行して進めていたのだが、12月6日の夕方。
ふと、こんなことを思った。
「この電源回路、
ちゃんとしたプリント基板にしてみたいな」
そう思った瞬間、
もう後戻りはできなかった。
🟦第1章:KiCad?なにそれ?〜何から手をつけていいかわからない
つい2ヶ月ほど前まで、電気回路などまったく分からずに、おっかなびっくりハンダゴテを手に、ハンディー掃除機のリチウムイオンバッテリーを交換していた僕が、
いつの間にか
「プリント基板を作ってみたい」
などという、
なかなか恐ろしいことを考えるようになっていた。
そう思ったはいいものの、
次の瞬間、現実的な疑問が浮かぶ。
――どうやって?
調べてみると、
プリント基板を作るには 専用のCADソフトが必要らしい。
しかも、無料で使えるものがあるという。
その名前が KiCad(キキャド) だった。
さっそくインストールして起動してみる。
すると、画面には見慣れないアイコンやメニューがずらりと並んでいた。
……正直に言うと、
何から手をつけていいのか、まったく分からなかった。
回路?
配線?
部品?
どれもそれっぽい言葉ではあるが、
今の自分には、どれもスタート地点に見えない。
そこで、いつものように chatGPT先生に聞いてみた。
「プリント基板を作りたいんだけど、
KiCadではまず何から始めればいい?」
返ってきた答えは、意外なほどシンプルだった。
「まずは回路図です」
回路図。
……そういえば。
今回作ろうとしている電源回路、
ユニバーサル基板で組んだときは、回路図を描いていなかった。
実物を見ながら、
「たぶんこんな感じだろう」で配線して、動いたからOK、という作り方だった。
でも、プリント基板を作るには、
その「たぶん」を、ちゃんと形にしなければならないらしい。
仕方がない。
ユニバーサル基板を机の横に置き、
KiCadの回路図エディターを開く。
セラミックコンデンサー。
電解コンデンサー。
ショットキーダイオード。
電源。
一つずつ部品を配置しながら、
実物の配線を思い出して線を引いていく。
「……こんな感じ、だったはず」
それっぽい回路図は、なんとか完成した。
だが、ここで終わりではなかった。
ERCチェック を実行すると、
画面いっぱいにエラーメッセージが表示された。
赤い警告。
黄色い警告。
知らない言葉。
「え、何がダメなの……?」
どうやら、
見た目がそれっぽい回路図 と
“正しい”回路図 は、別物らしい。
こうして、
僕はKiCadという新しい世界の入口で、いきなり立ち尽くすことになったのであった。
🟦第2章:ERCエラーとPWR_FLGの夜〜見た目がそれっぽいだけではダメらしい
それっぽい回路図は、できた。
少なくとも、自分の目にはそう見えていた。
そこで、KiCadの指示に従って
ERCチェック というものを実行してみる。
すると――
画面いっぱいに、
エラーメッセージがずらりと表示された。
赤い警告。
黄色い警告。
知らない単語。
「……え?」
何が悪いのか、さっぱり分からない。
回路は合っているはずだ。
実物は、ちゃんと動いている。
なのに、KiCadは
「この回路はおかしい」と言ってくる。
どうやらKiCadは、
「動きそうか」ではなく、
「理屈として正しいか」 を見ているらしい。
エラーメッセージを一つずつ見ていく。
•電源がどこから来ているか分からない
•このネットは浮いている
•ここは未接続だ
……そんなはずはない。
電源はここから来ているし、
配線もちゃんとつないである。
「いや、ちゃんとつないでるよ?」
そう思いながら、
もう一度回路図を見直す。
それでも、エラーは消えない。
完全に行き詰まったので、
また chatGPT先生 に聞いてみた。
「ERCエラーが消えないんだけど……」
すると、返ってきた答えの中に、
見慣れない言葉があった。
PWR_FLG
……なにそれ?
調べてみると、
PWR_FLG とは、
「ここから電源が供給されていますよ」
と KiCad に教えてあげるための、
いわば 目印 のような部品らしい。
なるほど。
人間なら、
「ここに電池がつながってるから電源だよね」
と分かる。
でもKiCadは、
言われないと分からない。
さっそく、
正しい位置に PWR_FLG を配置してみる。
そして、もう一度 ERCチェック。
……。
……あれ?
エラーが、消えた。
画面が、静かだ。
さっきまで騒がしかった警告表示が、
嘘のように消えている。
「おお……」
この瞬間、
回路図が「正しい」と認められた
という感覚が、初めて分かった気がした。
見た目がそれっぽいだけではダメ。
動くだけでもダメ。
理屈として通っていること。
それが、プリント基板を作るための
最低条件らしい。
こうして僕は、KiCadという世界で、
ひとつ目の関門を越えたのであった。

※ショットキーダイオードの向きが
反対なことに気づいたのはだいぶ
後になってからだった😅
🟦第3章:フットプリント??とF8キー〜まっさらな基板の前で、再び固まる
ERCチェックをクリアし、
回路図は「正しい」と認められた。
……となれば、
次はいよいよプリント基板だ。
そう思って、
KiCadの PCBエディター を開いてみる。
すると――
まっさらな画面 が表示された。
部品もない。
配線もない。
黒色の、何もない空間。
「……あれ?」
回路図は、ちゃんと描いた。
さっきまで表示されていた。
なのに、基板側には何も出てこない。
「え?
ここから、全部もう一回配置するの……?」
軽く絶望しかけたところで、
また chatGPT先生に聞いてみた。
すると、返ってきた答えはこうだった。
「まず、フットプリントを割り当ててください」
フットプリント。
……また知らない言葉が出てきた。
調べてみると、
フットプリントとは、
回路図上の部品と、
実際に基板に載る“形”を結びつけるもの
らしい。
なるほど。
回路図では
「ショットキーダイオード」
「電解コンデンサー」
「セラミックコンデンサー」
という概念だけが存在している。
でも基板では、
•足の間隔
•大きさ
•穴の位置
といった、
現実の形 が必要になる。
そういうことか。
回路図の各部品に、実際に使う部品のフットプリントを一つずつ割り当てていく。
思っていたほど難しくはなかった。
むしろ、
「あ、これはこの部品だな」
と、実物を触ってきた経験が役に立った。
フットプリントの割り当てが終わり、
いよいよもう一度、PCBエディターを開く。
……まだ、何もない。
「え?まだなの?」
そこで、また一言、教えられた。
「F8キーを押してください」
半信半疑で、
キーボードの F8 を押してみる。
すると――
部品が、ドン。

さっきまで何もなかった画面に、
コンデンサーやダイオードたちが、ひとかたまりになって現れた。
「おお……」
回路図の中にあった部品たちが、
ついに 基板の世界に降りてきた 瞬間だった。
ただし、
配置はぐちゃぐちゃだ。
重なっているし、
向きもバラバラ。
でも、不思議と嫌な感じはしなかった。
「ここから、並べればいいんだな」
そう思えたからだ。
部品を一つずつドラッグしながら、
ユニバーサル基板で組んだときの配置を思い出す。
プラスのラインは、できるだけまっすぐに。
マイナス側は、あとでまとめられるように。
少しずつ、
基板らしい形 になっていく。
まっさらだった画面に、
意味のある配置が生まれ始めた。
こうして僕は、
KiCadという世界で、
「回路図」と「基板」がつながる瞬間
を体験したのであった。

🟦第4章:Rev1.0 ― 入力ランドを付け忘れた夜〜動くけど、それでいいのか?
部品の配置が決まり、
配線もそれなりに整ってきた。
あとは、
KiCadの指示に従って配線を引き、
デザインルールチェックを通し、
ガーバーファイル というものを作ればいいらしい。
……また新しい言葉だ。
ガーバーファイルとは、
プリント基板を製造するための
設計図の完成形 のようなものだという。
チェックを一つずつ確認し、
警告が出ないことを確かめる。
問題なし。
ガーバービューアーで確認すると、
さっきまで画面の中にあった基板が、
「これはもう工場に送れるやつだよね?」
という姿で表示された。
ちょっと感動した。
そのまま勢いで、
JLCPCBのサイトにアクセスし、
アカウントを作って、
出来上がった zip ファイルをアップロードする。
画面上に、自分が作った基板のプレビュー が表示された。

「……本当に、作れるんだ」
基板の色を選び、
数量を確認し、
そのまま支払いまで進む。
基板は最低発注枚数の5枚で$2。
配送も一番安いので$1.2。
合わせても$3.2。
日本円にしたら500円くらい。
なんて安さだ🤣
これで、自分の設計したプリント基板が、世界のどこかで作られる。
そう思うと、ちょっと不思議な気分だった。
──そして。
支払いを終えた直後、ふと、回路図を見返していて気づいた。
「……あれ?」
入力用のランドが、ない。
USBや電池から電源を入れるための、
入力端子の場所を作り忘れていたのだ。
一瞬、頭が真っ白になる。
でも、冷静に考えれば、方法はある。
ショットキーダイオードの足と、GNDに直接ハンダを付ければ、
電源は入れられる。
動かすだけなら、それで十分だ。
……十分、なのだけれど。
「それで、いいのか?」
せっかくここまで作ったのに、
“ちゃんとした基板” とは言えない気がした。
これは、「動くかどうか」の問題ではない。
「作りたかった形かどうか」の問題だった。
しばらく考えて、答えはすぐに出た。
──やり直そう。
気がつけば、時計はすでに深夜を回っていた。
こうして、
Rev1.0 は、
「動くけれど納得できない基板」として、僕の中でそっと封印されることになったのであった。
🟦第5章:Rev1.1 ― 深夜2時の再発注〜「ちゃんと作る」を選んだ理由
再度Kicadを起動し、先程発注してしまった基板データに入力ランドを追加し、ガーバーファイルを作り直した。
作業としては、ほんの少しの修正だ。
部品を一つ足して、配線を引き直すだけ。
でも、気持ちはまったく違っていた。
「まあ、直ハンダでも動くし……」
という選択肢を、自分で却下したからだ。
これはもう、実験でも検証でもない。
人に見せてもいい形にするかどうか。
その分かれ道だった。
KiCadで修正したデータを確認し、
再びガーバービューアーで最終チェック。
今度は、ちゃんと入力用ランドがある。
「……うん、これだ」
そのまま、もう一度 JLCPCB のページを開く。
条件は同じ。
枚数も同じ。
色も同じ。
当然金額も同じ。
違うのは、自分の気持ちだけ だった。
迷いなく、再発注のボタンを押す。

※シルク印刷の間違いに気づくのももっと後のことになるのだが…😅
これでいい。
これがいい。
時計を見ると、
すでに 深夜2時 を回っていた。
18時に「プリント基板にしてみたいな」と思いついてから、わずか半日。
初めてKicadをインストールし、
回路図を描き、
エラーに悩み、
基板を設計し、
入力ランドのない基板を発注するというミスをやらかして、
それでもやり直して、
ついに再発注まで辿り着いた。
正直、自分でも少し驚いていた。
でも同時に、はっきりと分かっていた。
ここまで来られたのは、「ちゃんと作りたい」と思ったからだ。
こうして、
Rev1.1 は、
「納得して発注した最初の基板」として、世界のどこかへ旅立っていったのであった。
🟦第6章:世界を一周する基板〜細かすぎる配送ログを眺める日々
再発注を終えたあとは、やることがなくなった。
いや、正確に言えば、やれることが何もない。
あとはもう、基板が作られて、送られてくるのを待つだけだ。
JLCPCBの注文ページを開くと、
ステータスが表示されている。
•In Production
•Data Preparation
•Reviewing
しばらくすると、それが少しずつ変わっていく。
正直、何がどう違うのかは、よく分からない。
でも、不思議と何度も見てしまう。
まるで、遠くに旅立った何かの現在地を確認しているような気分だった。
やがてステータスは
Shipped に変わり、
追跡番号が表示された。
そこからはもう、物流ログ鑑賞会 の始まりである。
深圳。
空港。
フライト。
通関。
TOKYO SKYGATE。
時刻付きで、やたらと細かく更新されていく履歴。
「……今、日本に入ったな」
「お、通関終わった」
もはや、基板そのものより、移動履歴を眺めるのが楽しくなっていた。
そんな中、ちょっとした事件が起きる。
先に届いたのは――
後から発注した Rev1.1 だった。
「あれ?」
最初に発注したはずの Rev1.0 よりも、
修正版の Rev1.1 のほうが、
先に日本へ帰ってきたのだ。
理由は分からない。
便の都合か、たまたまか。
でも、思わずこう思ってしまった。
「JLCPCBさん……分かっていらっしゃる😆」
今、必要なのは
Rev1.0 じゃない。
ちゃんと作り直したほうだ。
そう思った矢先、配送ステータスに
こんな表示が出た。
Arrived at Facility – TOKYO SKYGATE / JAPAN
12月13日。
あの夜、深夜2時に再発注してから、
ちょうど一週間。
画面の中にあった基板が、ついに現実の世界へ帰ってきた。
あとはもう、届くのを待つだけ。
そして僕は、何度目か分からない追跡画面を眺めながら、こう思っていた。
「……早く、触りたい」
🟦第7章:Before → After〜同じ回路なのに、別物だった
家の玄関の郵便受けでゴトっという音がした。
何かが放り込まれた合図だ。
郵便受け届いたものは、灰色の袋の中に小さな箱らしきものが入っている。
早速袋を開けてみると、青い箱に「JLCPCB」とデカデカと書いてある。
ついに基板が届いたのだった。

注文したプリント基板が到着!
箱を開けた瞬間、まず思った。
「……きれいだ」
つい一週間前まで、
KiCadの画面の中にしか存在しなかったものが、ちゃんとした プリント基板 になって、目の前にある。
青いレジスト。
白いシルク。
まっすぐな配線。

実際5枚もいらないのだが😅
しばらく、ただ眺めていた。
そして、机の上にもう一つ並べる。
試作したユニバーサル基板。
ブレッドボードで検証した回路を、
必死に落とし込んだ一枚。
ハンダの量も、配線の長さも、すべてが「手作業」の証拠だ。
Before と After。
並べてみると、
同じ回路とは思えないほど、
印象が違う。

ユニバーサル基板は、
「どうつながっているか」 を知っている人にしか分からない。
一方、プリント基板は、
「どういう意図で作られたか」 が
そのまま見える。
配線が整理され、
電源の流れが一目で分かる。
GNDは面で受け止め、
回路全体が落ち着いている。
同じ回路。
同じ部品。
でも、安心感がまるで違う。
それはたぶん、偶然ではない。
ユニバーサル基板は、「動くかどうか」を確認するためのもの。
プリント基板は、「使い続けること」を前提にしている。
この違いは、見た目以上に大きかった。
「やっぱり、基板にすると全然違うな……」
そう思いながら、次にやることは、もう決まっていた。
部品をハンダ付けして通電。
ここまで来て、動かなかったらどうしよう、という不安は、正直ほとんどなかった。
なぜなら、この回路はすでに一度、
ちゃんと動いている。
あとは、それが “当たり前のように再現されるか”を確かめるだけだ。
🟦第8章:部品実装と通電〜当たり前のように、ちゃんと動いた
まずは、基板上にTEMUで買って大量にストックしてある部品の中から、必要な部品をハンダ付けしていく。

(右)今回作ったプリント基板
美しさが全然違う😊

ユニバーサル基板の方と大違い😅
一通り部品の実装がおわり、そっとUSBケーブルを挿す。
特別なことはしない。
ただ、いつも通りに電源を入れるだけだ。
……。
表示が点いた。
時計は、何事もなかったかのように動き始めた。
「うん、まあ、そりゃそうだよね」
ここまでは、想定通り。
問題は、次だ。
USBケーブルを、そっと抜く。
一瞬、表示が消えるかもしれない。
ほんの一瞬だけ、
止まるかもしれない。
そんなことを、頭の片隅で考えながら、ケーブルを引き抜く。
……。
止まらない。
表示はそのまま。
時刻も、そのまま。
バックアップ用の乾電池に、何の違和感もなく切り替わっている。
もう一度、USBを挿す。
問題なし。
もう一度、USBを抜く。
やっぱり、止まらない。
ユニバーサル基板で確認したときと、
まったく同じ挙動だった。
いや、それ以上に自然だった。
切り替わった瞬間が、分からない。
電源が変わったことを、
回路が主張してこない。
ただ、時計として当たり前に動き続ける。
「……よし」
声に出すほどでもない、小さな達成感。
でも、この瞬間に感じていたのは、単なる成功の喜びではなかった。
設計した通りに、設計したものが動いた。
それが、ちゃんと再現された。
偶然でも、運でもない。
ユニバーサル基板で考えた回路が、
プリント基板でも、当たり前のように通用した。
この感覚は、「動いた!」とは少し違う。
「通った」
そんな言葉のほうが、しっくりくる。
こうして、
USB or BAT Power Board は、
電源回路として成立した のであった。

USB電源で動作中。

🟦第9章:Rev1.1は娘へ〜ちょっとだけ間違えたシルク印刷
基板を眺めていて、ひとつだけ、気になるところがあった。
ショットキーダイオードのシルク印刷。
向きが、逆だ。
回路的には問題ない。
部品の向きを理解していれば、
実装で間違えることもない。
でも、印刷としては、ミスだ。
正直、悔しかった。
ここまできれいに仕上がった基板なのに、最後の最後で、小さな「詰めの甘さ」が残ってしまった。
だからこそ、この基板をどう扱うか、
少しだけ考えた。
この Rev1.1 は、仕様としては完成している。
実際、ちゃんと動く。
でも、次に出すなら、このシルクは直したい。
――なら、この一枚は。
娘に贈る時計の基板にしよう。
そう決めた。
完璧じゃない。
でも、最初に「ちゃんと作れた」一枚。
自分が初めて設計して、
初めて発注して、
初めて手に取ったプリント基板。
その基板で動く時計なら、きっと大丈夫だと思えた。
間違えたシルクも、あとから見れば、
「そういうこともあったね」と笑って話せる。
むしろ、そのほうがいい。
完璧なものより、ちゃんと手をかけたもののほうが、記憶に残る。
この Rev1.1 は、娘の机のどこかで、静かに時を刻むことになる。
そう思うと、この小さなミスも、少しだけ愛おしく感じられた。
🟦第10章:Rev1.2〜Xを外すという決断〜試作をやめた日
Rev1.1 は、ちゃんと動いた。
そして、娘に贈る基板としての役割も決まった。
では、この回路は、ここで終わりだろうか。
……いや、違う。
シルクの向き。
電圧表記。
名前の付け方。
触って、動かして、
「ここは直したいな」と思う点が、
はっきり見えてきた。
それは、失敗ではない。
次が見えた、ということだった。
KiCadを開き、
もう一度データを見直す。
•ショットキーダイオードのシルクを修正
•バッテリー入力の表記を +5V → +4.5V に変更
•名前を、用途が分かるものにする
そして、
最後に残っていた文字を消した。
X
これまで付けていた
「試作」を意味する文字。
今までの基板名はDKN-X02だった。
電子工作ネコの試作品2番目という意味だ。
Rev1.0、Rev1.1。
どちらも、確かに試作だった。
でも、
今のこの回路は違う。
仕様は固まった。
挙動は確認した。
直すべきところも、もう分かっている。
もう、Xを付けておく理由はなかった。
基板名を、こう決めた。
DKN-02-PW
USB or BAT Power Board
よく考えればこの基板は時計専用でもない。
普通に電源のor回路として使うことができる汎用性がある。
この先、別の装置の電源として使ってもいい。
「どんな基板か」が、名前だけで分かる。
Rev は 1.2。
小さな数字だけれど、
そこには、
•試して
•悩んで
•やらかして
•直して
•納得した
という時間が、全部詰まっている。
これはもう、「思いつきで作った回路」ではない。
次に使われることを前提にした、
一つの部品 だ。
こうして、
USB or BAT Power Board は、
試作という段階を終えた。

試作品から卒業!
🟦エピローグ:線が、銅になって帰ってきた
12月6日の夕方、ふと思いついただけだった。
「この電源回路、
ちゃんとしたプリント基板にしてみたいな」
あのときは、ここまで来るとは思っていなかった。
回路図も描いたことがなく、
KiCadの画面の前で立ち尽くし、
エラーに悩み、
やらかして、
深夜2時に再発注して。
それでも、一つずつ進んでいった。
画面の中にあった線は、やがて銅になり、海を越えて、手元に戻ってきた。
そして今、その基板は、当たり前のように電源を切り替え、当たり前のように時を刻んでいる。
特別なことは、何も起きない。
ただ、ちゃんと動く。
でも、それが一番うれしかった。
Rev1.0 は、分岐点。
Rev1.1 は、想いの一枚。
Rev1.2 は、未来のための基板。
完璧ではないけれど、ちゃんと理由を持って作られた。
これはもう、644円の時計のためだけの回路ではない。
次に使われることを前提にした、ひとつの部品。
電子工作ネコ・マックスのはじめてのプリント基板は、こうして完成した。
さて、
次は――
この基板に、居場所を作ってやろう。
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💡この記事が役立ったらスキ&フォロー歓迎です。
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📚 電子工作はここから
✅ 電子工作ネコ・マックスの実験ノート
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🐾🐾────────────🐾🐾
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