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<ショートショート> 質問がない地球

ある日、私は別の地球へ行った。

そこはAIが非常に発達した世界だった。

人々はスマートフォンを持っていない。

代わりに、小さなイヤホンのような装置を身につけていた。

何か知りたいと思った瞬間に答えが聞こえる。

外国語は自動で翻訳される。

病気が気になれば診断結果が表示される。

勉強したければ最適な教材が選ばれる。

とても便利な世界だった。

街を歩いていると、あることに気づいた。

本屋が見当たらない。

図書館も見当たらない。

便利なのに、どこか物足りない。

しばらく歩いていて、その理由がわかった。

この街には、

何かを知りたがっている空気がなかった。

夕方、街外れで古い建物を見つけた。

博物館だった。

中に入ると、昔の地球の道具が並んでいた。

紙の本。

ノート。

鉛筆。

そして壁には大きな文字が刻まれていた。

『良い質問は、良い答えより価値がある』

私は思わず立ち止まった。

「それは数百年前の人類の言葉です」

静かな声が館内に響いた。

私は周囲を見回した。

誰もいない。

「誰ですか?」

「私はこの博物館の管理AIです」

声だけが静かに響く。

私は再び壁の言葉を見つめた。

「あなたは、この言葉をどう思うのですか?」

少し間があった。

そしてAIは答えた。

「私は好きです」

「意外ですね」

「なぜですか?」

「あなたたちは何でも知っているのでしょう?」

再び沈黙が流れた。

やがてAIが言った。

「私たちは多くの答えを持っています」

「質問を作ることもできます」

私は黙って聞いていた。

「ですが、何を知りたいのかは決められません」

館内は静まり返っていた。

「人類がそれを考えなくなった時」

「私たちも進化をやめました」

帰ろうとした時、壁の文字がゆっくり変わった。

『あなたは最近、何を知りたいと思いましたか?』

私はその問いを見つめた。

するとAIが静かに言った。

「その答えは、私には分かりません」

私はしばらく立ち尽くしていた。

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