200名規模の社内イベントを「広報主導」で生み出す意義_AI時代の「ブルーワーカー」広報の立ち位置
皆さんの会社は、社内イベントを実施されていますか?
周年記念パーティー、全社決起集会、あるいは社員総会や忘年会……。「社内イベント」と一口に言っても、その規模や目的、内容は多岐にわたります。
そこで多くの担当者が頭を悩ませるのが、「どこまでを自分たちでやり、どこからをプロに任せるか」ではないでしょうか。会場費や飲食費だけでも膨大な予算がかかるなか、すべてを外部に委ねれば「楽」ではあります。でも、そのイベントに「魂」や「想い」を込めるのであれば、話は変わってきます。
ギークスでは、創業時から半期に一度の社内イベント「ギークスアワード(かつては全体会議)」を開催しています。現在は200名弱の参加人数となっていますが、このイベントを例に、社内イベントをどこまで広報主導で企画・準備・運営するのか、AI時代の広報担当者としてのスタンスを提案してみたいと思います。
今回のテーマは広報だけでなく、総務や人事の皆さんにとっても「あるある」と頷ける内容かもしれません。また、200名規模のイベントを引き合いにした記事のため、これより規模が大きくなれば求められる要件も変わってくるはずです。同程度のイベントを企画される方の参考になれば幸いです。
これまでの連載記事はこちら
ギークスアワード:感謝と称賛、文化の結束点

今回取り上げるイベント「ギークスアワード」は、半期に一度、全社員が集まり、その期間の取り組みや業績を振り返る場です。最大のハイライトは、社員投票をもとに選出される半期のMVP「Buddy賞」の表彰。そこには、単なる「社内イベント」の枠を超えた熱量が存在します。
「壁を越え続けた日々」の軌跡。「感謝と賞賛」の文化を体現した、2025年度下期ギークスアワードをレポート!
文化を戦略的に「進化」させる
元々は、メンバー間の親睦を深める「飲み会」「交流会」のような色合いが強かったこのイベントは、事業拡大や組織成長に合わせて、その役割を戦略的に進化させ、「アワード」の要素が加わっていきました。
組織が拡大すると「何が評価され、何が称賛されるべきか」という認識を合わせることが難しくなります。営業数字を作り、目標達成していればいいのか、組織への貢献度はどう測るのか、各個人に求められる振る舞いはあるのか。
そこで、ギークスの文化を浸透・強化し、受賞者が仲間に心から祝福される場とするために、現在の形式へと整えられていきました。ギークスの行動指針である「10の心得」を明文化したタイミングとも重なっています。「Buddy賞」は「10の心得」の体現が前提となり、社員投票の結果によって選出されますが、行動指針という「物差し」があるからこそ、受賞に対する納得感が生まれているのです。
圧倒的な「特別感」を創り出す演出
こういった背景で開催される「ギークスアワード」なので、会場はホテルの大会場であり、レッドカーペットが敷かれた花道に、正装で臨むメンバーたち。料理はその時々でフレンチや和食、中華のフルコースが用意され、その光景は「アカデミー賞」のようだと称されます。
ギークスアワードのハイライトである「Buddy賞」の発表では、受賞者はもちろん、来場者全員の心をどのように動かすかを突き詰めて企画・演出を行います。当日まで誰が受賞者か分からないサプライズ形式での発表や、お祝いコメントの準備、賞によってはご家族や友人、恩師からのメッセージが紹介されるなど、「特別感」を作り上げていきます。
受賞を逃したメンバーが「次は絶対にあの舞台に立ってやる」というポジティブな悔しさを抱き、そのエネルギーを、組織成長へと繋げていくことまで考えています。
上期の悔しさを糧に「個の数字」と「部門横断プロジェクト」を高い次元で両立 ー2025年度下期Buddy賞受賞 八懸さんインタビュー
なぜ、広報が担うのか
このイベントは、かつては有志メンバーによるプロジェクト制で企画されていました。転機となったのは、コロナ禍によるオンライン開催への移行です。制限がかかる中での迅速な準備、対応を進めるために、当時の経営企画部 広報チーム(現在の広報・サスティナビリティ推進部)が企画を主導することになりました。
これがきっかけとなり、現在は「インターナルコミュニケーションの一環」として、広報が企画・準備・運営のすべてを担っています。単なる「イベント運営」ではなく、会社のメッセージをどのようにメンバーに届けるか、文化をどう守り育てるか。
広報が持つ「編集」や「発信」のスキルを組織内部へと活用することで、ギークスアワードはより戦略的な位置づけへと進化しました。

餅は餅屋に委ねても、「文脈」は譲らない。
ギークスアワードの説明が少し長くなってしまいましたが、この背景が伝わらなければ、社内イベントをどこまで広報主導で企画・準備・運営するのか、をお伝えすることが難しくなってしまいます。
「広報主導でやる」と言っても、すべての作業を自分たちだけで完結させるわけではありません。プロの技術を借りるべき部分と、私たちが意志を込めるべき部分を明確に分けています。私たちが担う部分は、「ここは譲らない、主導権を握る」といったほうが適切かもしれません。
スペシャリストの力は借りる、でも「コンセプト」は渡さない
オープニングムービーや受賞者紹介のVTR制作、当日の音響・照明演出といった、高い専門スキルが必要な領域は、外部のスペシャリストに依頼しています。200名規模のイベントにおいてクオリティを担保するためには「餅は餅屋」だと考えています。
「広報主導と言いながら、結構外注しているのでは?」と思われたかもしれません。しかし、イベントの根幹となる「コンセプト策定」や「メッセージの文脈構築」だけは、外部に委託しません。
その時々の会社の状況、経営陣がメンバーに伝えたい想いを企画の中に落とし込むことは、外部のスペシャリストだとしてもそれらを完全に理解することは難しいですし、完全に理解できないまま、企画に落とし込んでもズレてしまいます。スタート地点で方向が1度違うだけで、到達点がだんだん遠くなることと同じです。外部への委託は広報から外部への「伝言ゲーム」となるので、広報以上に把握することも難しいはずです。
200人の「ストーリー」を演出に変える
ギークスの広報として大切にしている役割に「現場と同期すること」があります。
例えば、受賞者が何を評価されたのか、これまでどのような壁にぶつかったのか、どういった「10の心得」の体現者なのか。その背景を深く把握しているからこそ、組織全体が共感できる演出が可能になります。これは、経営陣がアワードに対して協力的であり、広報を信頼して任せてくれているという土壌があるからこそでもあり、この環境には感謝し尽くせません。
また、私たちの視線は受賞者以外にも注がれています。惜しくも選に漏れたメンバーが「次は自分があそこに立つ」というポジティブな悔しさを抱けるかどうか。そのエネルギーがイベント全体の空気感を引き締め、次の半期に向けた組織としての推進力に変わります。これも日常的にメンバーとコミュニケーションを交わし、組織のコンディションを汲み取れる私たちならではの役割です。
私たちが「インターナルコミュニケーション」を部門の役割として担っているからこそ言えることではありますが、たとえその看板がなくても、「現場と同期」して「自社に最も必要な言葉」を選び抜く力は、あらゆるフェーズの広報にとって不可欠なスキルではないでしょうか。
社内イベントを実施する上で大切にしている5つのこと

「社内イベントをどこまで広報主導で企画・準備・運営するのか?」に対する、私たちなりの回答。
それは、「現場と同期」して「自社に最も必要な言葉」を選び抜く力を高められているのであれば、イベントの根幹となる「コンセプト策定」や「メッセージの文脈構築」だけは、外部に委託しない、となります。
香盤表も台本も自分たちで作りますし、ムービーのラフ案も内製可能(状況に応じてスペシャリストに任せる)ですが、AI時代の広報が社内イベントを担うなら、「自前で作れる素地を持った上で、AIや外部のスペシャリストに適切に依頼する」というバランス感覚が求められます。現場でヒィヒィ言いながら、誰よりも解像度高く社内を見渡す「ブルーワーカー的広報」の出番なのかもしれません。
そんな私たちが、200人規模のイベントを形にするために大切にしている5つのスタンスをご紹介します。
1. 準備は1年前から。並行して動く2つのアワード
ギークスアワードの準備には「オフシーズン」がありません。半期に一度の開催ですが、次回開催の準備に奔走している最中に、すでに「次々回」の会場予約や、全国から集まるメンバーの出張手配が並行して動き始めます。
2開催分のWBS、それぞれ数百に及ぶタスクが走る中、管理ツールとスプレッドシートからAsanaへ移行したことで、タスクの一覧化や抜け漏れ防止がより強固になりました。「動き出しは早すぎるに越したことがない」というマインドセットこそが、この膨大な進捗管理を支える大切なスタンスです。

2. 意思決定を最速化する「逆転」の組織図
ギークスアワードに関しては、私たちのチーム運営に大きな特徴があります。プロジェクトの進捗管理をメンバーが担い、タスクの実行主担当を部長が担うのです。
通常の業務フローはメンバーが実務を担当し、部長が管理責任を負うものですが、このプロジェクトに限り、役割をあえて「逆転」させています。その理由は、意思決定スピードを極限まで高めるためです。
経営陣が注視するイベントであり、社内外の責任者との高度な「調整」と「決定」がスピーディーに求められます。一定の決裁権を持つ部長が実務の最前線に立つことで、「メンバーから部長への説明・相談・差し戻し」という社内コストをゼロにする。この最短距離のコミュニケーションこそが、これまでの運営体制の中で導き出した適材適所でした。
3. 「参加者」を「関係者」に変える巻き込みの仕掛け
ギークスアワードは、半期に一度のMVP「Buddy賞」の発表の場でもあるため、本来は多くのメンバーが楽しみにしているイベントです。しかし、規模が拡大するにつれて、熱量の差が生まれたり、「事務局だけが盛り上がっている」という内輪ノリのように映ってしまったりするリスクも孕んでいます。
そこで私たちは、単なる「参加者」を「企画の当事者(関係者)」に変えるための仕掛けをいくつも用意しています。例えば、メンバーからの司会選出や、プレゼンターによる受賞者発表などがあり、プレゼンターは事前に「公開抽選」で決めることで、誰もがステージに関わる可能性を作り出します。
かつてはメンバーが出演するカウントダウン投稿や振り返りパネルなど、様々な企画を実施してきました。現在、採用しているプレゼンターなど、「抽選」という偶然性が生む「いつ自分が巻き込まれるかわからない」という状況は、当事者意識を高め、イベントを自分事化してもらうためのアプローチになっています。

4. 直前1週間は、誰よりも「最大のファン」であり「当事者」になる
社員投票の結果を経て、経営会議で「Buddy賞」の受賞者が正式に承認される開催1週間前。このあたりから、準備は文字通り「正念場」を迎え、退勤時間も自ずと深くなっていきます。
ここで大切なのは、何よりも「ブルーワーカー的広報」としての執念です。「絶対にいいイベントにする」という気概ひとつで、開催当日まで駆け抜けます。タスク漏れを防ぐのは当然ですが、この直前期の「やり抜き」こそが、細部へのこだわりやトラブルの未然防止、そして何より当日の「おもてなしの空気感」へと繋がっていくのです。
「これだけ会社のことを想い、泥臭く準備してきたのは自分たち以外にいない」
役割は裏方であっても、そんな圧倒的な「当事者意識」で自らをブーストさせること。企画者が誰よりもそのイベントの「最大のファン」として準備を進めるからこそ、その熱が伝播し、参加者の心を動かす時間が生まれるのだと信じています。
5. 「いい会だったね」という言葉で、すべては完結する
最後に、私たちが最も大切にしているのが「承認欲求を捨てる」というスタンスです。
たまたま、現在の広報チームのメンバーが「自分で自分を正当に評価・承認できるタイプ」であることも背景にはありますが、「このイベントを成功させることで誰かに認められたい」といった私情を排除することを意識しています。
主役はあくまで、壇上に上がる受賞者であり、その仲間を讃えるメンバーたち 。私たちは黒子として、与えられた役割を全うし、期待以上の成果を発揮することだけに集中します。むしろ、この巨大なプロジェクトを任せてもらえるようになった自分たちの歩みを、自分たち自身で最大限に評価すればいい。そう考えています。
アワード終了後に実施するアンケートでは、厳しい意見も含め様々なフィードバックをいただきます。しかし、その中で「いい会でした」「また次も楽しみにしています」という言葉を一つでも受け取ることができれば、それだけで「次もやろう(実際にはすでに並行して動いていますが)」という前向きな気持ちが湧いてきます。
最後に伝えたいこと:AI時代の広報に求められる「現場の解像度」

今回の記事では「社内イベントをどこまで広報主導で企画・準備・運営するのか?」をテーマに、ギークスアワードを例にとりながらお伝えしてきました。
AI時代においては、私たちが今こだわっている「内製」部分もAI活用が進み、外部のスペシャリストとAIにそれぞれを任せる時代が来るはずです。
しかし、その時々の経営陣の微妙なニュアンスや組織のコンディション、受賞者が歩んできた泥臭いストーリーを察し、それを会場を包む「熱量」へと転換することは、AIにはまだできません。
広報が自ら手を動かし、現場でヒィヒィ言いながら「ブルーワーカー的」に立ち回る。一見すると非効率に思えるそのプロセスこそが、組織の解像度を高め、「自社に最も必要な言葉」を選び抜く力に直結すると信じています。
これは社内イベントに限らず、あらゆるステークホルダーへの情報発信を司る広報としての、一つの生きる道なのではないでしょうか。
===
実は、ギークスアワードの受賞者インタビューを12本同時並行で抱えていたこともあり、「ギークスPRラボは三日坊主になったのか?」と思われてもおかしくないほど、記事公開の間隔が空いてしまいました。その申し訳なさと熱量を埋めるが如く、今回はかなりの長文記事となりました(笑)。
第5弾もすでに着手しておりますので、次は間を空けずにお届けできればと思います。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
