「本質を見抜く」ために必要な7つの力と視点とは?
アメリカの経済学者ロバート・カッツ教授は「管理職に必要な3つの能力」の1つとして「コンセプチュアルスキル」を提唱しています。
コンセプチュアルスキルというのは、「物事の本質を見極め、個人や組織の可能性を最大限に高める能力。概念化能力とも呼ばれ、抽象的な考えや物事の大枠を理解する力を指す」とのことです。
コンセプチュアルスキルに長けた人材には「ひとつの経験から多くを学び、対応する能力に長けている」「業務を合理的に遂行し、効率的に働くことができるといった特徴があるそう。
要するに、「課題の本質がどこにあるかを見極め、解決策を考えることができる」「複雑に絡み合って見える問題を解くカギを見つけられる」能力といえるでしょう。
問題解決が苦手な人は、問題の本質に気づかずに迷走しがち。また、話す意見もどこかとっ散らかって、何を言いたいのかわからないことが多い。
ところが、この「本質をつかむ技術」というのは、ビジネスではあまり語られていない。そんな問題意識から企画したのが羽田康祐『本質をつかむ』。
このnoteでは3週にわたって紹介してきました。
今回は、本質を見抜く力とは何なのか? どんな視点を持てばいいのか? より具体的に解説している箇所を抜粋してお届けします。
本質を見抜く力は、単一のスキルではなく、大きく分けて7つの力から成り立っている。
「本質を見抜く7つの力」一覧
第1 本質的な「意味」を見抜く力
本質的な「意味」を見抜く力とは、物事の表面的な内容だけでなく、その背後に隠された本当の意図を読み取る力だ。この力を身につけることで、発言や行動の裏にある真のメッセージを汲み取り、正しい理解ができるようになる。
第2 本質的な「原因」を見抜く力
本質的な「原因」を見抜く力は、目に見える問題の背後にある根本原因を突き止める力だ。この力を身につけることで、場当たり的な対応ではなく、根本的な問題解決策を導き出すことができるようになる。
第3 本質的な「目的」を見抜く力
本質的な「目的」を見抜く力とは、行動や計画の背後にある真の狙いを見抜く力だ。この力を身につけることで、手段と目的を混同してしまう状況を避け、真の目的に沿った適切な言動ができるようになる。
第4 本質的な「特性」を見抜く力
本質的な「特性」を見抜く力とは、変化を形づくっている作用や働きを深く理解し、それらが全体に与える影響を見抜く力だ。この力を身につけることで、変化を形づくっている根本的な原理や力学を見極め、適切に活かせるようになる。
第5 本質的な「価値」を見抜く力
本質的な「価値」を見抜く力とは、物事が持つ有益性や意義を理解する力だ。この力は、価値を生み出したり、価値を提供するなど、ビジネス活動を効果的に進めるうえで必須となる力といえる。
第6 「関係」の本質を見抜く力
「関係」の本質を見抜く力とは、物事の背後に隠れた因果関係を把握し、それを応用可能な形に整理する力だ。この力を身につけることで、精度の高い予測や仮説を立てられるようになる。
第7 「大局」を見抜く力
「大局」を見抜く力は、個別の現象にとらわれることなく、大きな方向性を見極める力だ。この力を身につけることで、より広い視野で戦略的な判断を下すことができるようになる。
これらの力はそれぞれ独立した役割を果たしつつも、互いに補完し合う関係にある(図4)。本章では、それぞれの力について順を追って解説していこう。

「視点力」と本質を見抜く7つの力との関係
視点力×本質的な「意味」を見抜く力 視点力1
視点力は、相手の言動の裏側にある意図を適切に理解するために必要不可欠だ。なぜなら、本質的な意味を見抜く力を補完する役割を果たすからだ。
たった一つの発言内容であっても、そこにはさまざまな解釈がありうる。適切な解釈をするためには、その発言内容の背景にある「相手の経験」「置かれた状況」「価値観」などに視点を巡らせ、その背景と照らし合わせることで初めて、相手の言葉の真の意味が浮かび上がる。
視点力があれば、相手の言葉の表面的な内容だけでなく、その裏に隠された背景や意図を読み取りやすくなる。本質的な意味を見抜くには、柔軟で多角的な視点を持つことが鍵となる。
視点力×本質的な「原因」を見抜く力 視点力2
視点力は、隠れた原因を見つけ出すためにも欠かせない力だ。
物事の根本原因は、一つの視点だけではたどり着けない。たとえば、利益が減少している原因は、売上サイドで見ただけでも「社会動向の変化」「顧客ニーズの変化」「競合の動き」「自社組織の弱み」など、複数の仮説がありうる。またコストサイドで見ても「原価の上昇」「経費の上昇」「金融費用の上昇」などがありうるだろう。
このように、多角的な視点を持つことで初めて、さまざまな仮説を立て、根本原因を見抜き、本質的な解決策を導き出せるようになるのだ。
視点力×本質的な「目的」を見抜く力 視点力3
視点力は、目先の目標に惑わされず、本質的な目的を見極めるためにも重要だ。
人は一つの視点にとらわれると、目先の目標に気を取られて、その先にある本来の目的を見失うリスクが高まる。
たとえば社員研修を行う場合「年間200名の受講者を確保する」という目標が設定されているとしよう。この数字を達成することだけに集中してしまうと、研修の本来の目的を見失う。「なぜこの研修が必要なのか?」を考え、多角的に視点を巡らせれば「業務効率を上げるため」なのか「次世代リーダーを育成するため」なのか、または「組織全体のスキルセットを底上げするため」なのかといった、さまざまな視点で仮説を立てることができるようになるはずだ。
視点力を身につければ、単なる数値目標の達成にとどまらず、目標の背後にある本質的な目的を見極められるようになる。
視点力×本質的な「特性」を見抜く力 視点力4
本質的な特性を見抜くには、視点力が欠かせない。なぜなら一つの視点だけに固執すると、物事の特性の一部しか見えず、別の可能性に目が向かなくなるからだ。
たとえば「紙」について考えてみよう。紙は、視点によってその特性を変える。「書き込むもの」という視点でとらえると「情報を記録する」という特性が見いだせる。一方で「包むもの」という視点でとらえると「保護や運搬」という特性になるだろう。「拭くもの」という視点では「吸水性」の特性が見えてくる。さらに「折るもの」や「敷くもの」として考えれば、「形を変える柔軟性や表面の質感」といった特性が浮かび上がる。
このように、視点力を養うことで、一つの物事の背後に潜む、複数の特性を見抜けるようになるのだ。
視点力×本質的な「価値」を見抜く力 視点力5
価値は、見る人や状況によってその様相を変える。そのため、視点力がなければその本質を正確に見抜くことは難しい。
たとえば、一杯のコーヒーを考えてみよう。「飲むもの」という視点では、缶コーヒーは100円ちょっとの飲み物だ。しかし、「リラックスできる時間をもたらすもの」という視点でとらえると、カフェでは500円相当になる。「社交の場を演出する」という視点でとらえると、コーヒーは人と人をつなぐきっかけとなり、関係性を深める価値が生まれるだろう。高級ホテルでは1000円程度の価格となるはずだ。そのコーヒーがフェアトレードで取引されているなど「地域経済への貢献」という社会的な視点で見れば、生産地の経済や生活に対する価値が加わる。
このように、視点力を駆使して物事のさまざまな側面に光を当てることで、真の意義を見いだし、それを最大限に活かせるようになるのだ。
視点力×「関係」の本質を見抜く力 視点力6
本質的な因果関係を見抜くには、多様な視点が欠かせない。
たとえば「社員の退職が増えている」という現象が起きているとしよう。「給与が低いから→退職する」という視点もあれば「職場の人間関係が悪いから→退職する」「キャリア成長の機会が足りないから→退職する」「柔軟な働き方ができないから→退職する」など、さまざまな視点が考えられる。
さらに、これらの背後にある共通点を見抜ければ「人は自己成長を実感し、自分の存在が周囲に認められる環境があれば→働き続ける」という普遍的な法則を導き出すことができる。この法則を起点に施策を考えることで、単なる離職率の改善にとどまらず、従業員エンゲージメントを向上させ、組織全体の活性化を実現するアクションを取れるようになる。
このように多様な視点と深い洞察を組み合わせることで、普遍的な法則を見つけ出すことができる。さまざまな現象の本質的な関係性を解明し、未来に活かすことができるのだ。
視点力×「大局」を見抜く力 視点力7
物事の大局を見抜くには「全体の視点↔部分の視点」「原因の視点↔結果の視点」「短期的な視点↔長期的な視点」「物事の本質的な特性や価値を見抜く視点」など、さまざまな視点の総合力が求められる。
たとえば、事業戦略を立案する際には、短期的な市場の動向(短期的な視点)だけでなく、その背後にある顧客の根本的なニーズや業界の変化(長期的な視点)を理解する必要がある。
同時に、製品開発や営業活動などの個別な取り組みが、全体のブランド価値や競争力にどのように影響を及ぼすのか(全体の視点↔部分の視点)を検討しなければならない。
さらに、AIやデジタル技術の特性を見抜き、業界全体にどのような大局的な変化をもたらすのかを考えれば、自社の次の一手をより戦略的に定めることができるだろう。
視点力が大局観にもたらす影響は絶大だ。大局を見抜く力に視点力を加えれば、状況を俯瞰的に眺めるだけでは見えない洞察を得て、長期的な成功に向けた道筋を描くことができるのだ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(編集部 isiguro)
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