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ビジネスや物事の「本質をつかむ」には方法があった!

1日かけて仕上げた仕事が、結局なんの役にも立たなかった、意味がなかった、1円の価値も生み出さなかった……てなことが、若い頃はよくありました(今もたまにあります)。
「ベストセラーをリサーチしろ」と上司に言われたので一日かけて網羅的に調べたら、「なんで小説とか、写真集とかが入ってるんだよ。俺たちの企画にカンケーねえだろ」みたいな。
まあ、物事の本質をつかんでいなかったからこそのミスですね。一を聞いて一しかできないどころか、むしろマイナス。
一方で、一を聞いて十を理解するような優秀なビジネスパーソンもいます。彼らは他の人と何が違うのか? それは「本質をつかむ」力の有無だと語るのが、新刊の羽田康祐『本質をつかむ』です。

「物事の本質をつかむって難しいよな」「何か方法があるのだろうか?」と漠然と思ったのですが、著者の羽田康祐さんだったら書けるのではないかと無茶振りしたことがきっかけで本書が生まれました。
「難しいなあ」とおっしゃりつつ、自身のこれまでの経験や学びを棚卸しし、私が期待した以上に、その方法を体系化してくださいました。抽象度の高い「本質」という言葉をここまで具体的に、そして日々のビジネスに落とし込んだ本は他にないはずです!

1ページ37文字×14行というスカスカのビジネス書があるなか、本書は17行。読み応えがあります。

今回は『本質をつかむ』の「まえがき」(4000字超)を公開いたします。


まえがき 現代における「本質」の見えにくさ

「本質を見失う」とは?
 あなたは次のような場面に陥ったことはないだろうか?

●上司の指示通りに作業をしたはずなのに「いや、そうじゃなくて」「思ってたのと違う」と突き返されてしまう……。
●丁寧に報告したつもりでも「だから何?」「要はどういうこと?」と問われ、返答に窮してしまう……。

 あるいは、次のような経験はないだろうか?

●エクセル関数や生成AIをマスターして業務のスピードを上げたものの、仕事の生産性が上がった気がしない。
●網羅的に資料やデータを集めたものの、情報の洪水におぼれてしまい、どう扱っていいかがわからなくなる。
●高度な機械学習で分析を行ったものの、分析結果が活かされない。
●部下にきめ細かく指示を出しているのに、全然成長してくれない。
●担当業務のKPIを大幅達成したものの、まったく評価されない。

 これらに共通するのは、物事の表面にとらわれるあまり、本質を見失っていることだ。
 仕事の生産性を上げるうえで、業務スピードを上げることは本質ではない。生産性向上の本質は「やらなくてもよいことを見極めて、やめてしまう」ことにある。なぜなら業務スピードをいくら上げたところで、そもそもその業務自体が必要ないのであれば「スピードを上げること」には意味がないからだ。
 また、多くの時間を割き網羅的に情報を集めたところで、情報収集そのものは目的ではなく手段に過ぎない。事前に情報収集の「目的」や「重要な核心」を見極めておかなければ、膨大な情報におぼれ、価値ある示唆は導き出せない。
 分析で重要なのは「分析手法が高度であること」ではない。「すごそう」「頭がよさそう」という印象はつくれるかもしれないが、分析の本質は意思決定者に判断材料を提供することだ。その目的が達成されるのであれば、むしろ分析手法は誰にとってもわかりやすくシンプルであるほうが価値がある。
 報告書作成では、膨大な報告内容を漏れなく詰め込むことが本質ではない。報告書作成の本質は、相手が知りたいことや必要とする結論を伝えつつ、次に向けた示唆や教訓を組織知に変えていくことだ。
 マネジメントにおいては、細かく指示を出すことは即効性がある反面、部下の自己判断力を奪う。マネジメントの役割は短期的な成果だけでなく、チーム全体の長期的な競争力向上も含まれる。そうである以上、部下が自立して成果を出せるような機会を与え、自主性を育むことこそが本質的なマネジメントといえる。
 KPIを達成しても評価されないのは、KPIが全体の中の一部分でしかないことを理解していないからだ。たとえばあなたがマーケッターだったとして、広告を出稿して資料請求者数のKPIを達成したとしても、資料請求者が購入に至らなければ、あなたは広告費をドブに捨てただけになる。これではKPIを大幅達成したとしても、評価はされないだろう。
 このように「本質を見抜く力」が乏しいと、ビジネスのあらゆる場面で的外れな言動を繰り返してしまうことになる。

本質が見えにくくなる時代

 残念なことだが、これからはより一層、本質が見えにくい社会になっていくはずだ。なぜなら次の3つの変化が速度を増しながら進んでいくからだ(図1)。

◯ビジネス環境の複雑化
◯情報濁流
◯変化のスピードの速さ

ビジネス環境の複雑化

 今後、より一層、ビジネス環境は複雑になっていくはずだ。
 消費者向けビジネスにおいては、顧客ニーズは際限なく細分化し続けるだろう。顧客が商品を選ぶ際のプロセスも格段に複雑になり、その全体像を把握することすら難しくなる。
 法人向けビジネスにおいても、単純な「モノ売り」から「ソリューション提案」へのシフトが進み、より高いレベルの提供価値が求められるようになるはずだ。企業自身が自社の本質的な課題をとらえ切れないケースも増えていくだろう。その結果、支援会社側は曖昧な要件に振り回されることが多くなるはずだ。
 テクノロジーの進化もまた、ビジネス環境の複雑化に拍車をかけている。生成AI、IoT、ブロックチェーンといった革新的な技術が次々に登場し、企業はこれらをいかに効果的に取り入れるかが成否を分ける。

情報濁流

 企業の外側に目を向ければ、デジタル化の進展により、毎日のように膨大なデータが吐き出され、情報拡散のスピードは加速している。その結果、個人や組織が受け取る情報量は飛躍的に増えている。
 ネット記事やSNSからは、日々何千もの情報が流れ込んでくる。中には信頼性の高い情報もある一方で、センセーショナルな見いだしで注目を集める偏った情報も多く含まれる。さらに今後は生成AIが、大量のコンテンツをまき散らしていくだろう。
 どのような情報も、その背景や意図を見抜けなければ真の価値を見極めることはできない。膨大な情報濁流の中で、データの背後にある文脈や因果関係を見抜く力が求められる時代だ。

変化のスピードの速さ

 インターネットの普及は、情報の流れを根本的に変え、変化のスピードを加速させた。
 情報はリアルタイムで世界中に共有される。企業が製品を発表すれば、即座に顧客や競合に伝わり、瞬時に反応が返ってくる。
 この即時性は、新しい取り組みをスピーディーに展開できるメリットがある反面、問題が生じた場合には短時間で対応を迫られるプレッシャーも伴う。
 技術の進化は指数関数的に発展し、新しい技術や製品が登場するサイクルはますます短くなるはずだ。各種多様なテクノロジーは数年単位で入れ替わり、社会やビジネスの構造を大きく変化させていくだろう。
 このような状況では、目の前の情報に振り回されるのではなく、背景や意図を見抜き、本質をとらえる力がますます重要となるはずだ。

そして「可視化依存社会」へ

 情報濁流の先にあるのは、可視化された情報に振り回され「目に見えない本質」や「長期的な視点」が見逃されていく「可視化依存社会」だ。
 KPIや数値データなどの「目に見える」情報に注意が奪われ「目に見えない」質的な側面や、背景にあるストーリーは軽視されていく。
 コスパ意識を重視する風潮が一層強まる中で「考える」「暗中模索する」「試行錯誤する」といったプロセスは「無駄なもの」として煙たがられ、本質を探る姿勢は薄れていく。
 短期的な結果を求めるあまり、問題の本質に向き合う時間を確保できず、解決策は表面的なものになる。短期目標が優先され、長期的な戦略は後回しにされる。
「可視化依存社会」とは、表面的な情報や短期的な指標ばかりに目が行き、深い洞察を見逃してしまう社会だ。
 そんな可視化依存社会に突入するからこそ、必須となるスキルが「本質を見抜く力」だ。別の言い方をすれば、見えないものを見抜き、物事の核心にたどり着くスキルともいえる。
「可視化依存社会」では、複雑な問題に対処することが日常的に求められるはずだ。「本質を見抜く力」を身につけることができれば、表面的なものに振り回されず、その本質をシンプルにとらえることができるようになるだろう。迷いやリスクに悩まされる時間が減り、決断に自信を持てるようにもなるはずだ。
「真の価値」は、見えないものにこそ宿る。それをつかむことこそが「本質を見抜く力」だ。
 多くの企業・個人が「可視化依存社会」に踊らされているからこそ、本質を見抜く力は、あなたならではの希少な価値になりうる。未来を切り拓く鍵にもなるはずだ。
 本書では「可視化依存社会」を生き抜くために、本質を見抜く力を磨く具体的なアプローチを紹介する。

本書の構成

 第一章では、現代社会が「可視化」への依存を強めていく中で「本質を見抜く力」がなぜ重要なのかを掘り下げる。もしあなたが「本質」という言葉に曖昧な印象を持っているなら、この章は特に役立つはずだ。
 続く第二章では、物事の本質を見抜くうえで必要になる7つの力について解説する。その7つとは次の通りだ。

本質を見抜くための7つの力
第1 本質的な「意味」を見抜く力
第2 本質的な「原因」を見抜く力
第3 本質的な「目的」を見抜く力
第4 本質的な「特性」を見抜く力
第5 本質的な「価値」を見抜く力
第6 「関係」の本質を見抜く力
第7 「大局」を見抜く力

 それぞれの力に対して「なぜ重要なのか?」「どのようなメリットがあるのか?」「どのような思考の手順をたどればいいのか?」について解説する。
 第二章を読み進めることで、それぞれの力にはどのようなメリットがあり、どのように思考手順を踏めばいいかを体系的に理解できるはずだ。その結果、物事の本質に迫るための方法論を手に入れることができる。
 第三章では「本質を見抜く視点力」について解説する。ここまで説明してきた、本質を見抜く7つの力――意味、原因、目的、特性、価値、関係、大局――は、一言で言えば「考える力」だ。しかし何かを「考える」には、その手前に「そもそも、何について考えるべきなのか?」を見極める「視点力」が欠かせない。
 よって、第三章では本質を見抜くうえで極めて重要な「視点力」について紐解いていく。第三章をお読みになれば、どのような頭の使い方をすれば、自由自在に視点を切り替えることができるのか? をご理解いただけるはずだ。
 最後の第四章では「本質を見抜く7つの力を身につける1週間トレーニング」を紹介する。
 本質を見抜く力は「3日で身につく〇〇」などのビジネスハックとは異なり、日々の習慣によって少しずつ鍛え上げられていく筋トレのようなものだ。この第四章では、本質を見抜く力を身につけるためのトレーニングガイドを提供する。
 本質を見抜く力は、これからの「可視化依存社会」を生き抜くうえでの強力な武器となり、あなた自身の成長を加速させる原動力となるはずだ。
 ぜひ、本書を最後まで読み進めていただければ幸いだ。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 石 ク ろ)