見出し画像

ロジカルシンキングが論理の思考なら、「本質を見抜く力」は洞察の思考

先週、先々週と4月発売の新刊『本質をつかむ』(羽田康祐)をご紹介しましたが、おかげさまで増刷が決まりました。

売れ行き好調ということで、POPの作成を営業部から依頼されたので、つくってみました(私は自分の担当本の販促物は外注せずに自作しております)。

わかりやすいと思ったのですが、評価はいまいち。

営業部の評価は「いや、このノリじゃないでしょ!」でした。「もっと信頼感がある、硬質なものに」と修正を命じられました。そこでつくったのがコチラ。

物事の「本質」=「急所」を狙うということで、ライフルのスコープを連想しました。

営業部の評価は「そうそう、こういうのでいいんだよ、こういうので」でした。結局、裏表両面で使うことで、2案とも採用されたのでした。

さて、話は変わりますが、「本質を見抜く力」とは、いわゆる思考スキルなので、「ロジカルシンキングと何が違うの?」という声も出るかと思います。そこで今回は、そんな疑問に応えている箇所を前掲書から抜粋して、以下、お届けします。


「本質を見抜く力」と「ロジカルシンキング」の違い

 思考スキルと聞いて、まず初めに思い浮かべるのがロジカルシンキングだろう。今やビジネスシーンで一般的となり、必須スキルとして定着してきた。しかし「本質を見抜く力」は、ロジカルシンキングとは明確に異なる。
 ロジカルシンキングとは、与えられた情報を基に、論理的に結論を導き出す思考法だ。その特徴は、物事を体系化し、筋道立てて考えることで合理的な結論を得られる点にある。
 しかしこの方法は「与えられた情報が正確で完全である」という前提に基づいている。
 そのため、不完全な情報や偏った情報を基にロジカルシンキングを展開した場合、間違った結論に導かれてしまう。言い換えれば、ロジカルシンキングは「結論の質」が「インプットされた情報の質」に左右されてしまうという限界がある。
 一方で本質を見抜く力は、表面的な情報にとらわれず「なぜこの情報が重要なのか」「背後にある原因は何か」を問い続けることで、真の意味や価値を見いだす。
 たとえば、売上低迷の原因を探る場合を考えてみよう。ロジカルシンキングでは、売上を分解し「顧客数の減少」や「平均購入単価の低下」といった原因を特定することができる。しかし、これだけでは「なぜ顧客が減少しているのか」「なぜ単価が低下しているのか」という本質にはたどり着けない。
 ここで本質を見抜く力が必要となる。単なる分析にとどまらず「顧客ニーズが変化しているのではないか」「競合製品が提供する価値が上回っているのではないか」といった「見えない背景」を洞察する。本質を見抜く力は、目に見えない根本的な原因を探り当て、持続可能な解決策を導き出すのに役立つ。
 現代のビジネス環境は玉石混交の情報が溢れ、変化も激しい。手に入る情報が正確かつ完全であることはむしろ稀だ。不完全で偏った情報が当たり前である現代において、ロジカルシンキングだけには頼れない。
 本質を見抜く力は、このような不透明な状況でこそ力を発揮する。目の前の情報が不完全であっても、その裏に隠れた見えない意味や力学を読み解き、適切な行動を導き出す力こそが、本質を見抜く力だ。
 さらに、ロジカルシンキングは別の限界も存在する。それは新しい視点やアイデアを生み出す力が弱い点だ。ロジカルシンキングは過去の事実を基に考える思考法であるため、その範囲を超えた革新的な発想や創造的なアプローチを生み出すことが難しい。
 一方で、本質を見抜く力は、表面的に表れている現象の背後にある根本的な原理や力学を探り当て、そこを起点に新しいアプローチを見いだす力だ。この力は、新たな視点や可能性を発見することを可能にする。
 たとえば、売上低迷の課題を考える際、本質を見抜く力を持つ人は「社会の価値観がどのように変化しているのか」「トレンドの変化の背後にある根本的なニーズは何か」といった本質的な問いを投げかける。このアプローチによって、ロジカルシンキングではたどり着けない新しい機会や解決策を見いだすことができる。
 未来を切り拓くためには、過去の延長線上にない、新しいアイデアや戦略が求められる。本質を見抜く力は、過去の枠組みを根本から問い直し、まったく新しい道筋を描く力をもたらす。この力は、イノベーションを生み出し、変化の波に乗るための重要なスキルとなる。
 最後に、ロジカルシンキングは、データや事実を基に合理的な結論を導き出せる点が強みだが「人間的な要素」への理解が不足しがちになる。
 論理的なアプローチは、データや客観的な事実を重視するため、人間の感情や文化的背景といった、数字や論理では測りきれない要素を軽視してしまう。
 たとえば、製品の売上低迷を分析する際、ロジカルシンキングでは「価格が競合より高い」「広告宣伝費が不足している」といった数値や事実に基づく結論に行き着くかもしれない。
 しかし、それだけでは「顧客がその製品に共感を抱いていない」「ブランドのストーリーが刺さっていない」といった感情的な要因をとらえることが難しい。
 本質を見抜く力は、人間の感情や文化的な背景を理解し、それを判断に取り入れる柔軟性を持つ。この力は、数字や事実だけでなく、目に見えない価値観や心理的要素を洞察するために欠かせないスキルだ。
 ロジカルシンキングがデータや事実に基づく「論理の思考」であるとするならば、本質を見抜く力は感情や文化的背景をも含めた「洞察の思考」と言えるだろう(図3)。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

(編集部 isikuro)