「本質」の「本質」って何だ? 「本質」の解像度を上げると見えるものとは?
先週、新刊の羽田康祐『本質をつかむ』の「まえがき」を公開させていただきました。
あらためて思うのですが、「本質」とは不思議な言葉ですよね。
本質というと、物事の「肝」「金玉」「急所」というイメージが私のなかにあり、だとしたら、カンタンに見つかりそうですが、なかなか見つからない。具体的なモノのようでいて、抽象的で掴み所がない。ためしに「本質」を辞書で調べてみると……
ほん‐しつ【本質】 の解説
1 物事の根本的な性質・要素。そのものの、本来の姿。「—に迫る」「—を見きわめる」
2 哲学で、存在するものの基底・本性をなすもの。
㋐偶有性に対立し、事物に内属する不変の性質。
㋑実存に対立し、そのもののなんであるかを規定し、その本性を構成するもの。
3 論理学で、思惟の対象を定義する諸限定。類・種のごとき普遍をさす。→実体 →属性 →本体
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2と3は、正直何を言っているのかよくわかりませんが、1は多くの人が共有している「本質」の意味かと思います。しかし、それ以上ではない。もっと「本質」の根本的な意味や姿とは何でしょう?
前掲書『本質をつかむ』の中から、「本質」を5つの特性に分けて解説した箇所を抜粋し、掲載します。「本質」という言葉の解像度が上がると、物事の本質を見抜く力は必ず向上するはずです。
本質が持っている5つの特性とは
本質とは何か?
「本質」という言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか?
ある人は「物事の根っこ」と答えるかもしれない。それは、物事を支える見えない土台であり、すべての現象の背景に隠れている「本当の意味」を指す。
また別の人は「変わらないもの」ととらえるかもしれない。表面的には時代が変化しても、揺るがない普遍的な原則や価値観、それが本質だと考える人もいるだろう。
さらに「シンプルなもの」というイメージを抱く人もいるかもしれない。複雑に絡み合った要素をそぎ落としていったときに最後に残る、最も重要で純粋な要素。それが本質だという見方だ。
いずれにせよ「本質」という言葉には、表面だけでは見えない核心や価値、真実を探し求める意味が込められているといえるだろう。
筆者は「本質」を、文字通り「本来の質」だと考えている。「本来の質」とは、物事の表面に現れる一時的な現象や飾りではなく、それ自体を成り立たせている最も重要な核心部分だ。
「本質」とは、極めて曖昧な概念だ。そうである以上「本質が持つさまざまな特性」を理解することが欠かせない。
そこでここからは、筆者が考える「本質が持つ5つの特性」について解説を加えていこう(図2)。こちらをお読みになれば「本質」に対する理解が格段に進むはずだ。

根本性(物事の核心部分) 本質の特性1
「本質」には、根本性が備わっていなければならない。
根本性とは、物事を成り立たせる最も重要な核心部分を指す。表面的な特徴や一時的な変化に左右されるのではなく「それがなければ成り立たない」「意義を持たない」という性質のものだ。
たとえば、自動車について考えてみよう。自動車は「移動手段としての機能」がなければ、それはもはや自動車とは呼べない。エンジン性能やデザイン、快適性といった要素は重要ではあっても、それらは移動手段としての本質を支える周辺的な要素に過ぎない。根本となる「走る」機能がなければ、どんなに他の機能や外観が優れていても自動車としての存在意義を失う。
本質を見抜くためには、物事の表面に惑わされることなく、根本にある核心部分を探り当てる力が必要だ。この力がなければ、目に見える一時的な物事に振り回され、真に重要な価値を見失ってしまう。
必要性(ニーズに応える価値) 本質の特性2
「本質」には、必要性が備わっていなければならない。
ここでいう必要性とは、相手がそれを求め、価値を感じ、なくては困ると感じる要素のことを指す。
たとえば、製品の機能を例に挙げてみよう。どれだけ豊富な機能を搭載していても、顧客にとってその機能が「役立つ」「必要だ」と感じられなければ、豊富な機能は本質的な価値があるとはいえない。
逆にシンプルな機能であっても、顧客の課題を解決し「これがなければ困る」と思われる機能であれば、本質的な価値を持つといえる。
よく引き合いに出されるのが、日本の家電メーカーがつくる「ガラパゴスリモコン」だ。
日本の家電メーカーは「機能を追加していくこと=価値が増えること」と考え、どんどん機能を足し算していった。しかし人々が選んだのは、シンプルに機能をそぎ落としたアップル製品だ。
相手にとって必要不可欠な存在となるためには、相手の状況や課題を深く理解し、真に求められる価値を見抜かなければならない。相手からの必要性を伴ったものこそが、本質を成り立たせる条件なのだ。
シンプル性(複雑さの奥にある原則) 本質の特性3
「本質」は、シンプルでなければならない。
シンプルであるとは、複雑さの中から余計な枝葉を取り除いた後の、純粋で簡潔な状態にあることを意味する。
たとえ表面的には複雑に見える物事であっても、その根底には共通するシンプルな原則が存在する。本質とはまさにその原則であり、一見するとバラバラで複雑に見える物事の背後にある共通の原則を見つけ、その原理を基に全体像をとらえ直すことで、人にわかりやすく説明したり、効果的な解決策を見つけたりすることが可能になる。
たとえば、プロジェクトについて考えてみよう。どのようなプロジェクトでも、成功の本質は「チームが共通の目標に向かって効果的に協力すること」にある。このシンプルな原理は、大きなプロジェクトであれ、小さなプロジェクトであれ、あるいはテーマが異なるプロジェクトであっても共通する。
人は、複雑な物事の中にある核心をとらえ、シンプルな形で表現できるとき、迷いを減らし、正しい方向性を見いだすことができる。
普遍性(時代を超えて通用する法則) 本質の特性4
「本質」には、普遍性が備わっていなければならない。普遍性とは、特定の時間や場所、状況に縛られることなく、多くの場面や分野で通用する性質を指す。
たとえば「需要と供給のバランス」という経済の法則がある。この法則は、どんな取引市場においても当てはまる普遍性があり、物価や取引量など複雑な経済現象をシンプルにとらえる助けとなる。
重力の法則は、物体の落下から惑星の軌道運動に至るまで、幅広い現象を一つの法則でシンプルに説明できる。
では、ビジネスの本質はどうだろう。ビジネスの本質とは、技術の進化やトレンドの変化にかかわらず「顧客に価値を提供し、問題を解決することで対価を得る」ことだ。このような普遍的な視点を持つことで、可視化依存社会の中で、揺るがない指針を得ることができる。
さらに本質に備わる普遍性は、抽象化することによってその応用範囲を広げることができる。
抽象化とは、目の前の個別事例にとどまらず、その裏側にある共通の原理や力学を導き出し、幅広く応用可能な法則として整理することだ。これにより、個別事例を超えて、汎用性の高い学びを手に入れることができる。
たとえば、木という具体的な対象を超え「植物」というカテゴリーに抽象化することで、さまざまな木々や植物が持つ共通の性質(成長、生態系への寄与など)を浮き彫りにできる。
同じように、ビジネスの本質が「顧客に価値を提供し、問題を解決することで対価を得ること」だと理解していれば、BtoC企業であれ、BtoB企業であれ、あるいは製造業であれ小売業であれ、応用できるはずだ。
このように、本質を理解していれば、さまざまな状況、立場、文脈を超えて応用可能な指針になる。
全体規定性(全体を貫く中心軸) 本質の特性5
「本質」には、全体規定性が備わっていなければならない。
全体規定性とは、本質が全体の働きを決定づける力だ。たとえば、企業におけるミッションやパーパス(存在意義)について考えてみよう。明確なミッションやパーパスは、組織全体のカルチャーや行動指針、さらには意思決定の基準にまで影響を及ぼす。
スターバックスのミッション「サードプレイスを提供する」という本質的な価値観は、店舗デザインやサービスの在り方、商品の選定など、組織全体の活動を方向づけている。このように、企業の本質は全体を統一し、一貫性をつくる力を持つ。
本質が明確であれば、製品やサービスの全体的な価値が統一され、ユーザーに一貫した印象を与えることができる。
事業やサービス、組織におけるコンセプトも同様で、その本質が明確であれば、全体がその本質を中心に規定され、整合性を持った取り組みが展開できるようになる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(編集部 石く ろよう き)
