背負う人だけが見える景色ー人は、背負った分だけ大きくなる。
人生を変える、本質。第1章
自分は、どう生きるか。
能力だけでは、人はついてこない。
人生は、選択でできている。
人間性は、毎日の生き方で磨かれていく。
では、人は何によって大きく成長するのか。
私は、それは「背負うこと」だと思っている。
人は、楽な場所にいるだけでは大きくならない。
安全な場所にいるだけでも、大きくならない。
自分のことだけを考えているうちは、見えない景色がある。
誰かの期待を背負う。
組織の未来を背負う。
失敗の責任を背負う。
逃げたい気持ちを抱えながら、それでも前に立つ。
その時、人は少しずつ変わっていく。
今回は、「背負うこと」について書きたい。
33歳で部長になった
33歳。
マネージャーになって、まだ4か月しか経っていなかった。
そんな私が、部長に指名された。
周りには、何年もマネージャーを経験している人がいた。
経験も、実績も、人望も、十分とは言えなかった。
正直、自分でも驚いた。
本当に自分でいいのか。
そう思った。
周りは、もっとそう思ったはずだ。
なんで、あいつが部長なんだ。
言葉にはされなくても、その空気は痛いほど伝わってきた。
人が離れていった。
相談できる人も少なかった。
自分の一言が、すべて試されているような感覚だった。
判断をすれば、見られる。
迷えば、見透かされる。
間違えれば、責められる。
そんな緊張感の中にいた。
孤独だった。
逃げたいと思ったことは、一度や二度ではない。
自分には早すぎた。
そう思った夜もある。
でも、逃げるという選択肢だけはなかった。
なぜなら、もう自分一人の問題ではなかったからだ。
期待を裏切りたくなかった
任された以上、やるしかない。
私を選んでくれた人がいる。
信じてくれた上司がいる。
任せると決めてくれた人たちがいる。
その人たちの判断が、間違っていなかったと証明したかった。
それが、あの頃の私を支えていた。
私は、期待されたから頑張れたのではない。
期待を裏切りたくなかったから、頑張れた。
この違いは大きい。
期待は、時に重い。
苦しい。
怖い。
逃げ出したくなることもある。
でも、期待には、人を一段上に引き上げる力がある。
自分のためだけなら、逃げられる。
もう無理だ。
自分には向いていない。
そう言って、降りることもできたかもしれない。
でも、誰かの期待を背負った時、人は簡単には逃げられなくなる。
あの人が信じてくれた。
あの人が任せてくれた。
あの人が、自分に賭けてくれた。
そう思うと、踏みとどまれる。
背負うとは、強い人だけができることではない。
信じてくれた人を裏切りたくない。
その思いが、自分を前に進ませることがある。
体は限界だった
あの頃の私は、誰よりも働いた。
朝早く会社へ行き、夜遅くまで働いた。
家に帰っても、仕事のことばかり考えていた。
毎日、睡眠は三時間ほどだった。
朝になると、強い吐き気で目が覚める。
今日も会社へ行けるだろうか。
そう思う朝もあった。
体は限界だった。
今振り返れば、決して良い働き方ではない。
美談にしてはいけないとも思う。
人にすすめたい働き方でもない。
もっと人を頼るべきだった。
もっと仕組みで解決すべきだった。
もっと早く、自分の限界を認めるべきだった。
そう思う部分もある。
でも、あの時の私は、それ以外のやり方を知らなかった。
不器用だった。
未熟だった。
背負うことと、抱え込むことの違いも分かっていなかった。
それでも、辞めようとは思わなかった。
休もうとも思わなかった。
なぜなら、私一人が苦しいわけではなかったからだ。
組織全体が苦しかった。
誰かが前に立たなければならなかった。
そして、その役割を任されたのは自分だった。
希望のない組織を変えたかった
当時の組織には、希望がなかった。
どうせ変わらない。
何を言っても無駄だ。
頑張っても報われない。
そんな空気が、組織全体を覆っていた。
人が諦めている組織は、静かに弱っていく。
声が出なくなる。
挑戦がなくなる。
責任を避けるようになる。
失敗を恐れて、誰も前に出なくなる。
私は思った。
この組織を変えたい。
いや、
変えなければいけない。
それは、自分ならできるという自信ではなかった。
自分がやるしかない。
その覚悟だった。
だから私は、誰よりも現場へ行った。
誰よりも話を聞いた。
問題が起きれば、一番最初に前へ出た。
ミスをした人を責めるより先に、
まず自分が行く。
そう決めていた。
正しかったかどうかは分からない。
もっと上手いやり方はあったと思う。
でも、一つだけ分かっていた。
リーダーが後ろにいたら、組織は前へ進まない。
前に立つ人がいるから、少しずつ空気は変わる。
逃げない人がいるから、少しずつ人は顔を上げる。
組織が変わる瞬間
少しずつ、組織が変わり始めた。
最初は一人だった。
次に二人。
三人。
気が付けば、少しずつ仲間が増えていた。
一緒にやります。
私もやります。
やってみましょう。
そんな言葉が聞こえるようになった。
組織が変わる瞬間を、私は初めて見た。
それは、大きな号令で一気に変わるものではなかった。
一つの会議で変わるものでもなかった。
きれいな資料で変わるものでもなかった。
毎日の小さな行動の積み重ねだった。
誰かが前に出る。
誰かが責任を引き受ける。
誰かが逃げずに向き合う。
その姿を見て、別の誰かが少しだけ前に出る。
その連鎖だった。
あの時、確信したことがある。
人は、言葉だけでは変わらない。
正論だけでも動かない。
人は、人の生き方を見て変わる。
誰かが本気で背負っている姿を見た時、
人の心は少しずつ動き始める。
背負うことは、格好いいことではない
私は、「背負う」という言葉が好きだ。
でも、背負うことは格好いいことではない。
苦しい。
怖い。
孤独だ。
判断を間違えれば、多くの人に迷惑をかける。
自分の一言で、誰かを傷つけることもある。
自分の判断で、誰かの未来が変わることもある。
だから、何度も迷う。
何度も悩む。
今でもそうだ。
背負う人は、いつも自信に満ちているわけではない。
むしろ、不安を抱えている。
怖さを知っている。
責任の重さを知っている。
それでも、逃げないだけだ。
私は、強いから背負えたわけではない。
逃げたくなかったから、背負ってきた。
期待を裏切りたくなかったから、前に立ってきた。
責任とは、誰かに押しつけられるものではない。
最後は、自分で引き受けるものだと思う。
人は、背負った分だけ大きくなる
振り返ると、私の人生は、責任を背負った時に変わってきた。
いや、もっと正確に言えば、
誰かの期待を背負った時に変わってきた。
あなただから任せる。
その一言は、嬉しかった。
同時に、怖かった。
でも、それ以上に、その期待を裏切りたくなかった。
その積み重ねが、今の自分をつくっている。
人生で一番自分を成長させたものは何だったのか。
能力ではない。
成功でもない。
大きな失敗でもない。
背負った責任だった。
託された期待だった。
人は、楽をした分だけ成長するのではない。
人は、背負った分だけ大きくなる。
そして、その景色は、
背負った人にしか見ることができない。
それでも、前に立つ
私は、強い人間ではない。
今でも迷う。
今でも苦しい。
今でも判断を間違える。
逃げたくなる日もある。
本当は誰かに代わってほしいと思う時もある。
それでも、前に立つ。
誰かがやらなければいけないなら、自分がやる。
誰かが背負わなければいけないなら、自分が背負う。
それが、私が選んできた生き方だからだ。
もちろん、これからは一人で抱え込むのではなく、仲間とともに背負っていきたい。
人を頼ること。
任せること。
支え合うこと。
それもまた、背負う人に必要な強さだと思っている。
でも、最後に逃げないことだけは、変えたくない。
いつの日か、
「あの時、あなたが前に立ってくれたから乗り越えられました」
そう言ってもらえる人生なら、
私は、それ以上の成功を知らない。
だから私は、これからも前に立ちたい。
強いからではなく。
迷わないからでもなく。
背負うと決めた人生から、逃げたくないから。
── Flow Thinker R.
