能力では、人はついてこない
シリーズ『人生を変える、本質。』
― あなたの人生が変わるきっかけになれば、それでいい。
今回から、「人生を変える、本質」をテーマに、5話に分けて自分の想いを綴っていきたい。
※本来この文章をシリーズの最初に置く予定でした。順番が前後しましたが、この想いがすべての始まりです。
能力、選択、人間性、信頼、責任。
どれも、私自身が人生の中で何度もぶつかり、悩み、考え続けてきたテーマである。
答えを教えたいわけではない。
この記事が、あなた自身の生き方を見つめ直す小さなきっかけになれば、それだけで十分だ。
能力だけを信じていた
私は、能力を信じていた。
いや、正確に言えば、能力しか信じていなかった。
努力すれば評価される。
成果を出せば認められる。
能力があれば、人はついてくる。
本気でそう思っていた。
だから、人より働いた。
人より考えた。
人より挑戦した。
能力を磨けば、人生は切り拓ける。
そう信じて疑わなかった。
その考えが、すべて間違いだったとは思わない。
能力を磨いたからこそ、挑戦する機会をもらえた。
責任ある仕事も任された。
自分では想像もしなかった景色を見ることもできた。
能力は、人生を切り拓く力になる。
私は今でも、そう信じている。
能力だけでは越えられない壁
でも。
人生には、能力だけでは越えられない壁があった。
その壁の名前は、
「人」だった。
どれだけ正しいことを言っても、人は動かない。
どれだけ成果を出しても、人はついてこない。
どれだけ能力が高くても、人は心を開かない。
最初は、まったく理解できなかった。
なぜだ。
努力もしている。
結果も出している。
それなのに、なぜ人は動かないのか。
当時の私は、自分より能力が低いと思っていた人が評価されることを受け入れられなかった。
悔しかった。
納得できなかった。
自分の方が努力している。
自分の方が結果を出している。
本気でそう思っていた。
今だから言える。
あの頃の私は、能力でしか人を見ていなかった。
忘れられない言葉
そんな私に、忘れられない言葉をくれた上司がいる。
「成果は素晴らしい。でも、精神年齢は人並みだね。」
その瞬間、何も言い返せなかった。
悔しかった。
でも、一番悔しかったのは、自分でもその言葉を否定できなかったことだった。
私は成果ばかりを見ていた。
数字ばかりを見ていた。
勝つことばかり考えていた。
相手が何を考え、何に悩み、どんな想いで働いているのか。
そんなことは、見えていなかった。
見えていたのは、自分だけだった。
あの日、自分の価値観が崩れた。
能力が高いことと、人として成熟していることは、まったく別の話だった。
人を見誤った失敗
その後、私は大きな組織を任されることになる。
そこで、もう一度、自分の未熟さを思い知った。
能力のある人を昇格させた。
この人なら結果を出せる。
そう思った。
でも、違った。
結果的に、その人を苦しめてしまった。
最後は、降格という判断をしなければならなかった。
今でも忘れられない。
私は、人を見誤った。
能力を見ていた。
でも、本当に見るべきものは、そこだけではなかった。
責任から逃げないか。
人を支える力があるか。
周囲への思いやりがあるか。
困っている仲間に手を差し伸べられるか。
最後に、人として信頼される生き方をしているか。
管理職に必要だったのは、能力だけではなかった。
あの失敗は、今でも私の中に残っている。
人を見る基準が変わった
だからこそ、人を見る基準が変わった。
今、私が一緒に働きたいと思う人は、能力だけでは選ばない。
人の価値観を受け入れられる人。
損得だけで動かない人。
困っている人を放っておけない人。
自分の負けを認められる人。
弱さを隠さない人。
そして最後は、責任を引き受ける人。
そういう人には、人が集まる。
信頼が集まる。
組織が強くなる。
能力は、あとから育てられる。
知識も、経験も、増やすことができる。
でも、人間性だけは、人との関わりの中でしか磨かれない。
まだ、私は未熟だ
正直に言えば、私はまだ未熟だ。
今でも、自分より努力していないと思う人が評価されると、心がざわつく。
なぜだ。
そう思う自分がいる。
情けない。
未熟だ。
でも、昔と違うことが一つだけある。
その感情を、正当化しなくなった。
まだ自分は、能力で人を見ている。
そう気付けるようになった。
人間性とは、完成するものではない。
一生、磨き続けるものなのだと思う。
人は、人によって変わる
私は、多くの人に育てられてきた。
厳しい言葉で価値観を変えてくれた上司。
信じて任せてくれた人。
失敗する機会を与えてくれた人。
苦しい時に支えてくれた仲間。
人は、人によって変わる。
私はそのことを、自分の人生で何度も経験してきた。
だから今度は、自分が渡す側になりたい。
誰かの人生が変わるきっかけになりたい。
それが、私が人の成長にこだわり続ける理由である。
私がなりたい人
若い頃の私は、能力がある人になりたかった。
今は違う。
私がなりたいのは、
「あの人のように生きたい。」
そう思ってもらえる人だ。
能力は、人を感心させることができる。
でも、能力だけでは、人の人生までは変えられない。
人の人生を変えるのは、その人が何を大切にし、どんな時に何を選び、どう生きてきたか。
その積み重ねだけだ。
だから私は、能力を磨くことをやめない。
でも、それ以上に、
人として、どうあるか。
その問いを、一生かけて磨き続けたい。
人生の最後に、一人でもいい。
「あなたのおかげで人生が変わりました。」
そう言ってくれる人がいる人生なら、
私は、それ以上の成功を知らない。
── Flow Thinker R.
