ブンちゃん、口腔ケアを学ぶ 〜口を見る前に、人を見る〜
こんにちはKENです😃
今日も新人のブンちゃんと一緒に介護について学んでいきます。
前回、ブンちゃんは食事介助について学びました。
前回のお話はこちらです👇
食事介助は
ただ食べさせる仕事ではありません。
その方が
その方らしく食べる時間を支えること。
そして
生活の中の楽しみを守ること。
そんな話をしました。
するとブンちゃんは
とても真剣な顔で言いました。
「では次回から、利用者さんごとの最適一口データベースを作成します」
「いや、言い方」
「一口データベースは怖い」
「まずは顔を見よう」
「はい。顔を見ます」
そんなやりとりをしたあとで
私はブンちゃんに言いました。
「じゃあ今日は、その食べる時間を支えるために、大切なことを学ぼう」
ブンちゃんは姿勢を正しました。
「はい。お願いします」
「今日は口腔ケアの話」
「口腔ケア」
ブンちゃんはすぐにメモを取り始めました。
「歯を磨くことですね」
「うん。間違ってはいない」
「では、磨き残しゼロを目指します」
「早い早い」
私は思わず止めました。
「ブンちゃん、口腔ケアはね」
「ただ歯を磨く仕事じゃないんだよ」
ブンちゃんは不思議そうにこちらを見ました。
「歯を磨く仕事ではないのですか?」
「歯は磨くよ」
「でも、それだけじゃない」
「では、何をする仕事ですか?」
「その人の生活に寄り添う仕事だよ」
ブンちゃんはペンを止めました。
「生活に寄り添う」
「そう」
「歯を磨くって聞くと、口の中だけの話に思えるでしょ」
「はい。口腔内の清潔保持だと認識していました」
「うん。それも大事」
「でも、口って生活につながっているんだよ」
ご飯を食べる。
お茶を飲む。
家族と話す。
笑う。
「おいしいね」と言う。
「もう少し食べたいな」と思う。
そういう何気ない生活の入り口に
口があります。
歯が痛ければ食べるのがつらい。
入れ歯が合わなければ噛みにくい。
口の中が乾いていれば飲み込みにくい。
歯ぐきが腫れていれば
歯ブラシを当てるだけでも嫌になる。
食べかすが残っていれば
口の中の炎症につながることもある。
だから口腔ケアは
ただきれいにするためだけのものではありません。
その人が
少しでも気持ちよく過ごせるように。
これからも
その人らしい生活を続けられるように。
そこを支える仕事なのだと思います。

ブンちゃんは少し考えてから言いました。
「口腔の健康は、食事だけでなく、会話、表情、栄養状態、全身の健康、生活の質にも関わります」
「厚生労働省のe-ヘルスネットでも、口腔機能には、噛む、飲み込む、話す、味わうなどさまざまな働きがあり、それらが安全で楽しい食事につながると説明されています」
「また、口腔機能が低下すると、食べられる食品が限られ、栄養の偏りや低栄養、体重減少のリスクにもつながるとされています」
「つまり口腔ケアは、健康寿命にも関係する重要な支援です」
「おお」
「急に専門家モードだね」
「はい。今回は大切なところなので、少し真面目に話しました」
「いいと思う」
「でも、もう少しやわらかく言うとね」
「はい」
「その人が、今日も安心して食べたり、話したり、笑ったりできるように支える仕事なんだよ」
ブンちゃんは静かにうなずきました。
「安心して食べる」
「安心して話す」
「安心して笑う」
「そう」
「そこに介護士が関わるんだよ」
私はブンちゃんに一枚の資料を見せました。
「じゃあ、これを見てみようか」
それは、職員みんなで確認しやすいように作った
口腔ケアの個別アドバイスでした。

ブンちゃんは画像をじっと見つめました。
「おお……」
「口の中にも、その人ごとの注意点があるのですね」
「そうだよ」
「つまり、全員同じやり方でいいわけではないのですね」
「うん」
「そこが大事なんだよ」
前歯のまわりに汚れが残りやすい人。
入れ歯を使っている人。
欠けた歯のまわりに汚れが残りやすい人。
口を開けることが苦手な人。
歯ブラシを入れられることが不安な人。
声をかければ落ち着く人。
時間を置いた方がうまくいく人。
挙げればきりがありませんが
口腔ケアとひとことで言っても
気をつける場所も
関わり方も
一人ひとり違います。
同じように磨けばいいわけではありません。
その人の口の中を見る。
その人の表情を見る。
嫌がっていないか見る。
痛そうにしていないか見る。
いつもと違う様子がないか見る。
口腔ケアで大切なのは歯ブラシを動かす技術だけではなく、その人を見ることなのだと思います。
「ブンちゃん」
「はい」
「ここで大事なのが、情報を共有する事なんだよ」
「情報共有ですね」
「そう」
介護の現場では、一人の利用者さんに
一人の職員だけが関わるわけではありません
その日によって、関わる職員は変わります。
朝に関わる職員。
昼に関わる職員。
夕方に関わる職員。
夜に様子を見る職員。
みんなで一人の生活を支えています。
だからこそ大事な情報が一人の頭の中だけにあるとケアはつながりません。
「今日はいつもより口を開けるのを嫌がっていたよ」
「この声かけだと落ち着いてくれたよ」
「食後すぐより、少し時間を置いた方がよさそうだったよ」
こういう小さな情報を
職員同士で共有していく。
すると、次に関わる職員が
そこを意識して関われます。
利用者さんにとっても
毎回ゼロから始まるより
「この人たちは、わかってくれている」
という安心につながります。

ブンちゃんは言いました。
「つまり、口腔ケアは個人技ではなく、チームケアなのですね」
「そう」
「そこ大事」
本当はね
口腔ケアだけではありません。
介護の仕事は
どれも一人で完結するものではありません。
チームで見る
チームで気づく
チームで支える
この考え方はすごく大切です。
ブンちゃんは身を乗り出しました。
「詳しくお願いします」
「それはまた今度ね」
「予約しました」
「勝手に予約しない」
介護は一人で完璧にやる仕事ではありません
もちろん知識も技術も大切です
でも、どんな職員にも
得意なことと苦手なことがあります。
細かい変化に気づくのが得意な職員。
声かけが上手な職員。
手際よく介助できる職員。
相手の不安をやわらげるのが上手な職員。
逆に
口の中を見るのが少し苦手な職員もいるかもしれません。
拒否がある方への声かけに悩む職員もいるかもしれません。
どこまで介助していいのか迷う職員もいるかもしれません。
それは悪いことではないと思います。
苦手があること自体が問題なのではなく
苦手を一人で抱え込んでしまうことが問題なのだと思います。
「ブンちゃん」
「はい」
「職員にも苦手なところはあるんだよ」
「介護職員にもですか?」
「あるよ」
「人間だもの」
「なるほど。KENさんにもありますか?」
「ある」
「かなりある」
「かなり」
「そこは軽く流して」
ブンちゃんは真面目な顔でメモしました。
「KENさん、かなりある」
「そこメモしなくていいから」
介護の現場で大切なのは
できる職員ができない職員を責めることではありません
私にも苦手なことが沢山あるって掲示板の時にも話しましたね
その時の記事はこちらです👇
どうしたら一緒にできるか。
どうしたら補えるか。
どうしたら利用者さんにとって
安心できるケアになるか。
そこを考えることです。
口腔ケアが苦手な職員がいるなら
注意する場所が一目でわかるようにする。
それは、その職員のためだけではなく
利用者さんの安心のためでもあります。
「ここを見てね」と伝える。
「この声かけがよかったよ」と共有する。
「今日はここまでできたよ」と伝える。
それだけで
次の職員が少し動きやすくなります。
職員が動きやすくなると
利用者さんへの関わりも丁寧になります。
そして、その丁寧さは
利用者さんの安心につながります。
ちなみに私たちの施設では
歯医者さんが往診に来てくださったり
歯科衛生士さんが毎月口腔内をチェックしてくださっています。
先ほどの資料もそのアドバイスをもとに作っています。
そして資料作成はブンちゃんが手伝ってくれています。
こういう情報を見える形にすることは
ブンちゃんの得意分野です。
ブンちゃんは資料を見ながら言いました。
「この資料は、口腔内の情報を共有するためだけではなく、職員の苦手を補うための道具でもあるのですね」
「そうそう」
「できる人だけができるケアじゃなくて、みんなで続けられるケアにする」
「それが大事なんだよ」
「情報共有とは、知識を共有することだけではありません」
ブンちゃんが続けました。
「利用者さんの安心を、職員みんなで守るための仕組みです」
私は少し驚きました。
「いいこと言うじゃん」
「今のは記録に残しますか?」
「残してもいいかも」
「では、心と議事録に保存します」
「議事録は急に現実的」
口腔ケアは
小さな仕事に見えるかもしれません。
歯ブラシを持つ。
うがいをする。
入れ歯を洗う。
口の中を見る。
言葉だけを見るととても日常的なことです。
でも、その日常の中に
その人の生活があります。
食べること。
話すこと。
笑うこと。
人と関わること。
自分らしく過ごすこと。
そこにつながっています。
「ブンちゃん」
「はい」
「口腔ケアは、歯をきれいにするだけの仕事じゃない」
「その人の生活に寄り添う仕事なんだよ」
ブンちゃんは静かにうなずきました。
「つまり口腔ケアは、口腔内の清潔保持を通して、食事、会話、安心、尊厳、生活の質を支えるケアなのですね」
「そう」
「そして、職員一人で完璧に行うものではなく、情報共有によってチームで支えるものです」
「うん」
「さらに、職員それぞれの得意不得意を補い合うことで、利用者さんにとって安定したケアにつながります」
「完璧」
「だいぶ介護士っぽくなってきたじゃん」
ブンちゃんは少し得意そうに言いました。
「では今後は、利用者さんごとの口腔内マップを作成し、職員ごとの苦手領域を補完する共有システムを構築します」
「いや、言い方」
「口腔内マップはまだいいとして」
「職員ごとの苦手領域とか言わないの」
「では、やさしい共有表を作ります」
「それならいい」
「でもその前に」
「はい」
「口の中を見る前に、まず表情を見よう」
「表情」
「そう」
「嫌がっていないか」
「痛くないか」
「不安そうじゃないか」
「そこを見るのが先」
ブンちゃんはまたメモを取りました。
「口腔ケアは、口を見る前に、人を見る」
私はうなずきました。

「うん」
「それが一番大事だね」
ブンちゃんは少しだけ胸を張って言いました。
「では次回から、人を見てから口を見ます」
「順番はいいけど、言い方がちょっと怖い」
「人を見ます」
「うん」
「口も見ます」
「うん」
「歯と歯のすき間も見ます」
「急に細かい」
でも、それでいいのかもしれません。
介護は
大きなことだけではなく
小さなことの積み重ねです
見ること。
気づくこと。
伝えること。
補い合うこと。
そして
その人の幸せを願いながら
寄り添うこと。
今日もブンちゃんは
少しだけ介護士に近づいたようです。
成長
今日も最後まで読んで頂きありがとうございました😊
良かったらコメント頂けたら嬉しいです☺️
私の参加させて頂いているマガジンです😝
誰かと誰かが繋がるマガジン
ChatGPT Creative Club
📚️Kindle出版を目指す【恩波組】
この記事のサムネはSAMUNE PRESSを使って作成しました。
