本田圭佑と安藤百福が教えてくれる「全員が上手い世界(コモディティの世界)」で消耗しない生存戦略
自己紹介
テリー伊藤氏に師事し、『出動!ミニスカポリス』で放送作家デビュー。『がっちりマンデー!!』や『給与明細』など、経済から裏社会まで社会の深部を切り取る番組を多数手掛ける。2008年からの2年間のドイツ生活(主夫経験)を経て、現在は「ガチ中華」をはじめとする異文化・ニッチジャンルのSNS運用代行・戦略立案に従事。

序章 ネットの普及で「「日本サッカーが世界に近づいた」
FIFAワールドカップが始まり、寝不足の日々が始まった。連日熱戦が繰り広げられる中、とりわけ私の目を引いたのが、本田圭佑さんが語った「日本サッカーが世界に近づいた理由」だ。
質問に出たのは「日本と世界の差が縮まった理由は?」だった。
本田は「これはもう一択ですよ」とした上で、「ネットの普及」と断言。「いわゆるどんなプレーでも無料で簡単に見られるようになった。
要するにコモディティ化した。ヨーロッパのサッカーに毎日触れられる。
僕が子供のときでさえTSUTAYAに行って、
お金払って借りないとそのプレーに触れられなかった」
てっきり私は、「海外の強豪国に身を置く選手が増えたから」という答えを想定していたのだが、そうではなかった。まず「圧倒的な民主化によって、全体の底上げが起きたこと」が前提なのだ。
この「一部の者の技術を民主化させ、業界全体の底上げを図る」という構図で思い起こされるのが、日清食品の創業者・安藤百福さんだ。「チキンラーメン」や「カップヌードル」の生みの親である。今や即席麺が世界中で製造・消費されているのは、日清食品がその製法特許をあえて公開・開放したからに他ならない。
しかし、特許を開放すれば当然、多数のライバル会社がひしめき合う過酷なレッドオーシャン(コモディティ化)が待っている。それにもかかわらず、日清食品はなぜ今もなお、トップランナーとして輝き続けられるのだろうか。
ここに、AIの普及によって仕事が効率化し、あるいは誰もがクリエイターとなり(曲を作り、動画を作成し、noteの記事)も出せるようになった。「現代のコモディティ時代」を生き抜くヒントがある気がしてならない。
①チキンラーメンは何故、特許開放したのか?
安藤百福さんはかつて、自身が理事長を務めていた信用組合の破綻により、ほぼ全ての財産を失った。47歳にして社会的信用も失うどん底の中、自宅の裏庭の小屋で取り組んだのが「インスタントラーメン」の開発だった。試行錯誤の末に完成したチキンラーメンだったが、当初は「そんなものが売れるわけがない」と冷ややかな目を向けられたという。
当時の物価では、うどん1玉が5円。それに対してチキンラーメンは35円。同じ小麦粉を使った食べ物でありながら7倍もの価格差がある、いわば超高級品だった。それでも、チキンラーメンは飛ぶように売れた。安藤さんはこう語っている。
「値段は、商品の値段ではない。客の人生を何分救えるのかの時間だ」
当時の主婦が、夕食の支度にかける時間は約60分。それがたった3分に短縮される。高くても買いたい理由は、その「削られた57分という有益な時間(価値)」を買っていたからだ。
だが、あまりの大ヒットゆえに全国で類似品や粗悪品が出回り、業界全体のイメージ失墜の危機が訪れる。そこで安藤さんは1964年、自社の独占技術であった特許を業界に広く開放した。目先の自社の利益にとどまらず、業界全体の発展(民主化)を選んだのだ。
しかし、コモディティ化を受け入れるということは、他社の格安プライベートブランド(PB)と同じ土俵で戦うことを意味する。その中で、なぜ「カップヌードル」は他より高い価格のまま選ばれ続けるのか。試しにAIにその理由を訊いてみた。すると、こんな返答が返ってきた。
「カップヌードルが天才的なのは、それを『情緒的価値(カルチャー)』に昇華させた点です。
あさま山荘事件での隊員たちの食事シーンや、
原宿の歩行者天国で食べる若者たちの姿を通じて『憧れ』を演出し
常に尖ったクリエイティブで若者の心を掴んできた。
自虐やネットミーム(謎肉など)すら味方にし、
軸を持ちながら常に『自己否定』していく社風に理由があります。」
この分析を見て、私は「確かにその通りだけど……」と少し立ち止まってしまった。これはすでに圧倒的な先行者である「カップヌードル」だからこそできる芸当であり、まだ自分の「軸」すら定まっていない成長途中の個人には、あまり参考にならないのではないか、という疑問が湧いたからだ。
② コモディティから抜け出すための「個人の武器」
そもそも私が「コモディティ化」という言葉を深く意識したのは、2011年に出版された故・瀧本哲史氏の著書『僕は君たちに武器を配りたい』だった。リーマンショック後の就職氷河期、有効求人倍率が0.5%という厳しい時代に、若者がどう生き残るかを説いた一冊だ。

この目次にもあるのが、第4章の「生きる残るタイプと、生き残れないタイプ」が記憶に残っている。

本書の中で強く記憶に残っているのが、「コモディティから抜け出すには、圧倒的な『スペシャリスト』になるしかない」という指摘だ。これは、最近の私のNoteでも繰り返し取り上げてきたテーマでもある。
つまり、安藤百福さんの歩みから個人がまず学ぶべきは、情緒的なブランディングではなく、「圧倒的な自分の軸(強み)」を最初に作るということだ。
私自身の体験談で言えば、今世の中には「動画編集者」が溢れかえり、完全にコモディティ化している。しかし私は、単なる「動画編集」の枠にとどまらない。本業である放送作家としての経験を活かし、「企画」「台本」「撮影」「動画編集」「アップロード」「分析」までを一貫してワンストップで手がけている。だからこそ、価格競争の泥沼に巻き込まれることなく、独自のポジションを維持できている。
さらに土台となる「軸」を持った上で、「誰をターゲットにするのか」を見極める。これこそが個人の生存戦略だ。
③ 新しい自分を発見するための「アウェイの法則」
ここで冒頭の本田圭佑さんの話に戻る。ネットによって技術が民主化したサッカー界において、それでもなお突き抜ける選手たちは何をしているか。
やはり「海外」という、日本国内とは全く異なる基準(環境)の中に身を置いている。「朱に交われば赤くなる」の言葉通り、厳しい環境に揉まれることで、自らの新たな強みや弱みに気づき、コモディティの枠を突破していくのだ。
実は、日清の「カップヌードル」の誕生秘話も、この「環境の変化」が大きく関係している。 安藤百福さんがチキンラーメンの海外進出を目指してアメリカへ渡った際、現地のバイヤーたちは箸も持っていなければ、ラーメンを入れる丼(どんぶり)も持っていなかった。万事休すかと思われたが、彼らはチキンラーメンを小さく割って紙コップに入れ、そこにお湯を注いでフォークで食べ始めたのだ。 この光景こそが、のちの「カップヌードル」開発の決定的なヒントになった。
これが、観光業界ならば「地元の良さを見つけるのはよそ者だ」というのがある。いかに違う目線で揉まれるかによってあなたのすでに持っている価値ある能力に気づくかもしれない。
それはあくまで、自らの「軸」を持った人間が、あえて「環境の違う場所」を覗きに行く。それによって、既存の武器が全く新しい価値へと生まれ変わる。これこそがコモディティ化を打破する最高の方程式ではないだろうか。
まとめ
あなたのいる業界、あるいはNoteの世界で「コモディティ」の泥沼から脱出するために必要なもの。
それは、まずは何よりも「自分の軸(強み)」を確立することだ。 カップヌードルのような大それたものである必要はない。ほんの少しの差でもいいから「自分の味」を出すこと。
その上で、ターゲットを明確にして「客・読者目線」を徹底する。そして、自分の現在地を見極めるために、時には別業界や新しい環境のアウェイな視点を取り入れてみる。 誰もが同じ武器を持てる時代だからこそ、「あなただけの山」を登り、時には違う山の景色を覗きに行く貪欲さを持っていたい。
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