5004年 6月2日
「急ぐ人と、待つ人」
昼だった。
駅のホームに、
人が並んでいた。
みんな、
少し急いでいた。
電車が来る前から、
スマホを見ている。
改札を出ると、
走っている人もいた。
私は自動販売機で、
冷たいお茶を買った。
少し離れたところで、
信号が変わるのを待った。
最近は、
何でも早くなった。
返事も。
買い物も。
調べることも。
少し前なら、
何日もかかったことが。
今は数秒で終わる。
便利だった。
私は昔のことを思い出した。
ずいぶん前。
もっと早くしたい人たちがいた。

遠くへ早く行きたい。
早く伝えたい。
早く届けたい。
そう言いながら、
道を作っていた。
船を作っていた。
橋を架けていた。
でも、
その後。
待つことを大事にする人たちも現れた。
季節を待つ。
返事を待つ。
実が熟すのを待つ。
そういう人たちだった。
ホームに電車が入ってきた。
風が少し吹いた。
昔、
急ぐ人たちがいたんだけどね。
待つ人たちもいた。
私は冷たいお茶を飲みながら、
電車を見送った。
人間、
早くしたいみたいだし。
待ちたいみたいでもある。

(5004/6/2執筆)
