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5003年 7月8日

「決まりが増える日」


夏だった。


店の入口に、

新しい張り紙が増えていた。


少し前までは無かったものだった。


「こちらへお並びください」

「ご利用はお一人様一点まで」

「順番にご案内いたします」


そんな言葉が並んでいた。


誰かが困ったから、

増えたんだと思う。


私は冷たいお茶を買って、

少し離れたベンチに座った。


昔のことを思い出した。


人が増えると、

決まりも増えていた。


最初は、

そんなもの無かった。


みんな、

なんとなくやっていた。


でも、

誰かが急いで。

誰かが割り込んで。

誰かが怒った。


だから、

少しずつ決まりが増えた。


並び方。

話し方。

仕事のやり方。


細かいことまで。


不思議だった。


決まりが無いと困るのに。


増えすぎても、

みんな少し困っていた。


遠くで、

蝉が鳴いていた。


入口の張り紙が、

風で少し揺れた。


昔、

決まりを増やす人たちがいたんだけどね。


その後、

決まりを減らしたい人たちも出てきた。


私は冷たくなったペットボトルを持ち直した。


人間、

自由だけでも困るし。

決まりだけでも困るみたい。


(5003/7/8執筆)


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