(2)【終わっていないと思いたかった朝】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-失踪編-
■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしてます。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指してます。
【終わっていないと思いたかった朝】
夜逃げ——
いや、失踪と言った方が正しいのかもしれない。
この写真は失踪当日、新幹線に乗る直前の僕です

あの日、僕はすべてを置いて逃げた。
彼女から受け取った
「21世紀出陣弁当」と
「頑張って」と書かれた一万円札。
その日の朝も、
コーヒーだけは飲んだ。
これから先、
もう飲めなくなるかもしれないと思いながら。
名古屋。
あてもない街。
ここから、やり直すしかなかった。
失踪初日の朝。
僕は駅のドーナツ屋で、
求人誌を広げていた。
そこで目に入った言葉。
「人夫出し」
失踪した人間が、
最短で"衣食住"を確保できる仕事。
僕はそれを知っていた。
寮完備。
日払い。
その文字だけで、少し安心した。
所持金は14万円。
ホテルは4日分、押さえてある。
大丈夫。
まだ、大丈夫だ。
その時までは。
名古屋駅前を歩く。
ふと、目に入る。
パチンコ屋。
「少し、増やしておこう」
孤独。
不安。
喪失感。
疲れ。
全部が、そう思わせた。
1日目。
マイナス5万円。
「まだ9万円ある」
2日目。
マイナス5万円。
「まだ4万円ある」
3日目。
昼過ぎ。
財布の中は、空になった。
彼女からもらった一万円札。
取り出す。
「頑張って」
と書いてある。
最後の金。
「5千円だけ残そう」
その5千円も、
すぐに消えた。
17万円。
そして、あの一万円。
たった3日で——
残り、5千円。
ホテルの部屋。
震えながら、求人誌を開く。
電話をかける。
「折り返します」
冷たい声。
10分。
でも、1時間に感じた。
電話が鳴る。
彼女以外から、初めての着信。
「あ、電話くれた人?
明日から働ける?」
救われた、と思った。
「今どこ?迎えに行くよ」
ホテルを出る。
もったいないと思いながら。
もう、戻れない。
現れた男。
正直、怖かった。
でも、優しかった。
「なんも心配せんでいいから」
ボロボロのハイエース。
オンボロのハイエース。
僕は乗り込んだ。
あとで知る。
この人は——手配師。
人を、現場に流す人間だった。
「日当1万円スタート」
希望が見えた。
でも。
寮代 2,000円
弁当 2,000円
残り、6,000円。
さらに。
最初の10日間は——
日当9,000円。
作業服代を引かれて。
手取り、4,000円。
搾取。
でも、やるしかなかった。
「飯代ある?」
「ないなら貸すよ」
借りたら終わる。
そう思った。
「大丈夫です」
寮。
木造2階建ての、ボロいアパート。

ボロボロのアパート。
オンボロのアパート。
歩いて5分のコンビニ。
晩ご飯。
朝のパン。
そして——
缶コーヒー。
これだけは、外せなかった。
ビールも買った。
眠れない気がしたから。
所持金、3,000円。
でも——
明日働けば、4,000円。
少しだけ。
ほんの少しだけ。
希望があった。
ビールを飲んで、眠った。
でも、僕はまだ知らなかった。
「人夫出しの現場」
そこに、希望なんてないことを。
【第3話】「地獄の入り口は、静かだった」へ
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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」
【第一章・失踪編】
→目次から読む
→第1話から読む
【第二章・新聞配達編】
→目次から読む
→第1話から読む
これは
名古屋に来た初日の夜の写真です。
たった12時間で
人の顔はここまで変わるのかと
自分でも思います。

