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(20)【差し出せば戻れない】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-失踪編-


■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしてます。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指しています。


【差し出せば戻れない】


決めなければならない。
今でも、あの選択が
正解だったのか分からない。


メンバーと車に乗り、現場に向かう。
心は、ざわついている。
頭は混乱している。
今は運転に集中しよう。

いや、そもそも僕は
簡単に割り切れる方ではないのだ。

何事にも理由が要る。
なぜ右か、なぜ左か?

今は、どんな理由で
何処へ向かおうとしているのか?

何も考えないで行動出来たら
どんなに楽だろうか。。。


朝礼、職長の言葉さえ
頭に入ってこない。

足場が完成した。
足場用エレベーターを使って
取り外したエアコンを降ろす。
来週からの本格的解体に向け
「水撒き」の準備をする。

こんな内容の事を言っている。
ん?
エアコンを降ろすのは分かる。
水撒きってなんだ?

まぁやってれば、分かるだろう。
仕事が作業の時は
本当に僕に向いている。

取り外されたエアコンを
足場用エレベーター前に集める。
エレベーターにまとめて乗せる。
一階に降ろす。
回収車に乗せる。

何も考えなくていい。
黙々と
淡々と
粛々と
行動するだけ。
ただ時間が過ぎていく。
ただ仕事が進んでいく。

このまま
この作業が永遠に続いてもいい。

しかし、日没が近づく。
終礼の時間だ

今日は金曜日。
明日は休みだし楽しい事を考えよう。
何も浮かばないじゃあないか。

終礼が終わる。

みんなが帰り支度をしている中、
僕だけが、少し遅れて動いていた。

ドライバーだから遅れたら
皆に迷惑がかかる。
急がないと。

なのに
頭の中は、
朝からずっと同じところを回っている。

「差し出すのか」
「差し出さないのか」

どちらを選んでも、
何かを失う気がしていた。

。。。いや
もう失っているのかもしれない。。。

帰りの車内で。
誰かが笑っている。
誰かが週末の話をしている。

でも、何も入ってこない。

窓の外の景色だけが、
やけにゆっくり流れていた。

信号で止まる。

赤。

止まる理由は分かる。
青になれば進めばいい。

それだけのことなのに。。。
それだけの事が出来ない。

会社に戻っても
エンジンを切っても
しばらく動けなかった。

静かすぎる。

ポケットから鍵を出す。
ドアを開ける。

いつもと同じはずの部屋なのに、
違う場所みたいに感じた。

こんな時は寝よう。
寝逃げだ。
夜逃げして寝逃げ

誰も見ていないのに
苦笑いが出た。

朝4時。いつも通りの朝。

目が覚めた。
習慣通りに目が覚める。

結局、
答えは出ていない。

コーヒーを淹れる。

湯気を見ながら、
考える。

差し出すのか。
差し出さないのか。

カップを持つ手が、
わずかに震えている。

まだ、決められない。

でも。

決めないまま、
今日も始まる。
休日の朝が。。。

それでも
何かが始まって
何かが終わる気がした。



(第21話【運命の歯車が回りだす】につづく)




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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」

【第一章・失踪編】
目次から読む
1話から読む

【第二章・新聞配達編】
目次から読む
1話から読む


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