(21)【運命の歯車が回りだす】人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。-失踪編-
■この物語は筆者の実体験をもとに執筆しています。
・正直、極限まで恥をさらしてます。
・僕が生きてきた記録(ノンフィクション)です。
・ほぼ毎日更新を目指しています。
【運命の歯車が回りだす】
朝4時。
休日なのに、
この時間に目が覚めた。
一瞬だけ、
何もかも忘れていた。
静かだ。静寂。
昨日の続きを
考えなくていい、数秒間。
「差し出すのか」
「差し出さないのか」
目を閉じたまま、
天井の向こうを見ていた。
答えは、出ていない。
コーヒーを淹れる。
いつもと同じ手順。
いつもと同じ香り。
毎日、同じ作業を繰り返すことで
同じ品質のものができあがる。
コーヒーも、同じだ。
湯気が立ちのぼる。
その向こう側に、
答えがある気がして
少しだけ見つめた。
。。。何も、変わらない。
カップを持つ。
昨日と同じように、
手が、わずかに震えている。
心が身体を支配する。
休日。。。
何をしてもいい日。
でも同時に、
何をしていいか分からない日でもある。
。。。コン、コン!
静寂を壊す音。
一瞬、心臓が跳ねた。
ドアの向こうから声がした。
松下さんだった。
「おっ、起きとるな。
コーヒーもらいに来たで。」
松下さんはゆっくりと、
そしてポツポツと話し始めた。
「何を悩んどるん?」
返事が、すぐに出なかった。
「認められて、指名されて、
もしかしたら期待もされとる」
「それでも怖いんやろ?」
図星だった。
何も言えない。
「ここに居続ける恐怖か?」
ゆっくり、息を吐いた。
否定できなかった。
少し間があってから、
松下さんは続けた。
「工場、行くか?」
「ここ、名古屋やで。」
「車工場、いくらでもある。」
頭の中で、
何かが引っかかった。
「自分、免許あるやろ?」
「エレカ、乗れるで。」
一瞬、意味が分からなかった。
。。。その瞬間。
カチ、と音がした気がした。
止まっていた何かが、
わずかに動いた。
運命の歯車が動き始めた

今まで、考えもしなかった。
気づいていなかったんじゃあない。
見ようとしていなかっただけだ。
選択肢は、
二つしかないと思っていた。
「差し出す」か
「差し出さない」か
でも。。。
もう一つ、あった。
第3の選択肢。
転職。
そして
黙々と
淡々と
粛々と作業する仕事。
エレカが何かは知らないけれど。
屋内での仕事。
「差し出さずに、生きる」
そんな形が、
存在するのかもしれない。
コーヒーを一口、飲んだ。
。。。味がした。
心が、身体を支配する。
味覚さえも。
昨日まで、
何を飲んでいたのか
分からなくなるくらいに。
うまい。
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「人生が終わった日も、朝のコーヒーだけは飲んでいた。」
【第一章・失踪編】
→目次から読む
→第1話から読む
【第二章・新聞配達編】
→目次から読む
→第1話から読む
