【AIマンガ】ゆきちゃんの家(一部手描き)






「ゆきちゃんの家」
学校からの帰り道、陽菜は公園の隅で小さな段ボール箱を見つけた。
中で、白い塊が震えている。拳ほどの大きさの子うさぎだった。箱には「だれかもらってください」と、かすれた字で書いてある。
空を見上げると、今にも雨が降りそうだった。
気づけば、箱ごと抱えて走り出していた。
「お父さん!」
玄関を勢いよく開けた娘の腕の中を見て、慎一の動きが止まる。
「……うさぎか」
「うちの子にする。ダメって言われても、返せない」
娘の目は真剣だった。ダメと言われる覚悟をしている顔だ。
しばらく黙って娘とうさぎを見比べたあと、父は踵を返した。
「押し入れに、段ボールがあったな」
その夜、リビングは工作教室になった。
カッターで窓を切り抜き、ガムテープで補強する。普段は組み立て家具の説明書すら読まない人が、やけに真剣な顔で図面らしきものまで描いている。娘は横で床材の新聞紙を敷き、水入れを置いた。
二時間後。窓が二つ、アーチ型の出入り口までついた、立派すぎる家が完成した。
「……お父さん、凝りすぎ」
「基礎が大事だ」
翌朝、慎一は誰よりも早く起きていた。二人しかいない家だけれど。
台所で、にんじんを丁寧なスティック状に切っている。
「あんまり食べないんだって。にんじんばっかりだと」
「昨日の夜、スマホで調べたの」
「……俺もだ」
二人とも、夜中に同じことを調べていたらしい。
段ボールの家の前ににんじんを置くと、子うさぎはやがてゆっくり近づき、小さな口でかじり始めた。
コリ、コリ、コリ。
父と娘は床に座り込んで、その様子をじっと眺めていた。何も言わない。ただ、二人とも同じ顔で笑っていた。
「名前、決めた?」
「ゆき。白いから」
この三年間、この家には静かすぎる時間が多かった。
今、その静けさの中に、小さな音が加わっている。
慎一は何か言おうとして、やめた。
たったそれだけのことで、家というのは、こんなにも変わるものらしい。
(なお、段ボールの家はその後も増築を続け、現在は城になっている模様です)
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